黒幕甲子園
「よし!甲子園で優勝したら、告白する」
青空の下、彼は力強く宣言した。胸の奥が小さくうづくのを感じながら、私は笑顔で頷いた。彼の視線の先には、私ではなく我が校のアイドル・南ちゃんがいる。
彼は野球部のキャプテンで、私はマネージャー。私は自分の心に蓋をした。
チームメイト1人1人に合わせた練習メニューの調整、栄養バランスの良い料理作り、相手チームの弱点を探り出すための情報収集。全てはチームを優勝させるため。チームの優勝だけが私の願いなのだから……
甲子園の決勝戦、彼は見事なホームランを打ち、チームは劇的なサヨナラ勝ち。ベンチは歓喜の渦に包まれた。私は遠くアルプススタンドから、その光景を見守っていた。
その夜、彼は皆の前で南ちゃんに告白をして、見事に撃沈した。
「え⁉優勝したら俺と付き合いたいって言っていたんじゃ……あれ?」
とまどいながら、振り返る彼。私は「ば~か」と口の形で伝える。野球しか能のない筋肉ゴリラが南ちゃんと付き合える訳ないでしょ。
全ては優勝のため。このチームを動かしてきたのは私なのよ。