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Photo by
masumiyutaka
復習Tシャツ
神社の境内にTシャツの屋台が出ていた。
浮世絵、アニメ、四字熟語。外国人観光客のお土産需要を当て込んだような微妙なデザインのTシャツが並ぶ中、他のTシャツとは趣の違うものが1枚混じっていた。色褪せた黒い生地の胸に「復習」の2文字がホログラムで浮かび上がっている。眺めていると屋台のおっさんが声をかけてきた。
「それを着ると昔の自分と話せるんだ。最後の1枚だよ」
うそ臭っ……。でも、俺は何かに操られるように財布からなけなしの3000円をおっさんに手渡していた。
家に帰って確認すると、ただの変なTシャツだ。3000円損したと思いながらも着てみるとホログラムが閃光を放つ。妖しい光の中に現れたのは大学時代の俺だった。若い俺が口を開く。
「おっさん、誰?」
本当に昔の自分と話せるのか?なら、言わなければ。
「俺は調子に乗って投稿した動画が炎上したせいで就職もできず、30過ぎてもプータローだ。お前もこんなおっさんになりたくないだろ。未来を変えてくれ!」
俺の話にびびったのか、昔の俺は固い表情で頷いた。
これで未来が変わる。この惨めな人生ともおさらばだ。
そう思った瞬間、自分の体が足から消え始めた。
過去を変えたから、今の俺が消滅するのか⁉
後悔先に立たず。
俺は、大学時代の経験から何も学んでいなかったようだ……