夜からの手紙
目覚めると、妻が手紙を読んでいた。
「また、クミからかい?」
「ええ」
妻は、そこに娘の痕跡を探すように、何度も手紙を読み返していた。私は、そっと寝室を後にする。
半年前、クミが横断歩道を渡っていたところ、信号無視で突っ込んできた車に撥ねられた。運転手の男は朝まで酒を飲んだ帰りで、居眠り運転だった。
葬儀を終えた翌日から、毎朝1通の手紙が妻の枕元に届くようになった。娘の筆跡そっくりのその文字はいつも涙で滲んでいるが、私は気付かないフリをしている。
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