モンブラン失言
「モンブラン2つでいい?」
今日のデートはここまで完璧だ。2人で映画を観て、人気のレストランのコース料理も堪能したし、あとはデザートを食べ終えたら、スマートに部屋に誘うだけだ。「うん、モンブラン好き!」という返事を聞いて、これはもう勝ったな、と内心ほくそ笑む。
モンブランが運れてきた瞬間、彼女が真顔で尋ねてきた。
「私、太ったと思う?」
僕はスプーンを握ったまま硬直する。確かに彼女はぽっちゃり系だ。でも、そこが可愛いと思っている。正直に伝えるか?でも、罠かもしれない。どっちが正解だ?
「いや、そんな……」
「正直に言って」
「むしろ、モンブランみたいに丸くてかわいいよ」
彼女の眉がピクリと動く。
「モンブランみたい?」
「違う違う!その、柔らかそうだし……栗みたいに美味しそうだなって?」
「栗みたいに美味しそう?」
彼女の顔が険しくなった。気まずい沈黙。彼女はモンブランに視線を落とし、一言。
「あなたのセンスも甘く見てたわね……」
その後、モンブランは2つとも僕が食べた。