その歌に、わたしの脳漿はぶち抜かれた
仲村宗悟さんをご存知だろうか。
ご存知ないなら、今すぐわたしの過去記事を読んで頂きたい。
この先は読んて頂いたていで話をするが、ぶっちゃけ読まなくても「ああ、椎瑠さんはまたいいトチ狂いっぷりをしているなあ」という目で眺めて頂けたらそれだけで十分である。
とにかく、わたしの話を聞いてくれ。エモーショナルという言葉を骨の髄まで浴びせられた、わたしの話を。
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2020年10月30日。
仲村宗悟さんはアーティストデビュー1周年を迎える運びとなった。
(どこぞの移動王国みたく2周目という訳ではないので安心して欲しい)
なんてめでたい事だろう。年明け2月には3rdシングル「JUMP」の発売が決定しており、まさに順風満帆。いちファンとしては嬉しい限りである。
その記念すべき日に配信ライブがあったのだけれど。
前々から「重大発表があります!」と聞かされていたので、わたしはうずうずしながらiPadの前に正座していた。
ライブも終盤に差し掛かった頃。曲が終わった勢いのまま、マイクを握る宗悟さんはさらりと言ってのけたのだ。
「3rdシングルの他に、新しく曲を書きました!今からその曲を歌いたいと思います!」
頭の中をはてなマークで埋める隙もなかった。
MC終わりから息もつかせぬまま、画面越しに響き渡ったのはブラスサウンドで。
ブラス隊と戦うように鳴り響くドラムと支えるベース、静かに動くギター。
何より宗悟さんの歌声から放たれる人間臭さ100%の激しい歌詞に、脳漿をぶち抜かれてしまったことは言うまでもなく。
ライブ配信を終えた後に残ったのは、「今起こったことをありのままに話すぜ……!」と言語化する事も叶わず、iPadの前で生きる屍と化したひとりのオタクの姿であった。
(ライブ配信の様子は公式サイトのレポを是非どうぞ)
わたしの頭をぶち抜き、11月18日に配信限定でリリースされたこの新曲。
名を『Oh No!!』という。
激しさの中に見え隠れする理想との乖離。ファンキーかつパンクでかっこよさが過ぎるサウンドの上に、心の奥底に燻るぐちゃぐちゃな感情を体現した歌詞がずらりと並ぶ。
それまでリリースされた、人の背中をそっと押す真っ直ぐで太陽のような楽曲たちとは真逆の新譜。
こんな曲も書けるのかこの人は?どんな才能をお持ちなんだ??天才か???
……と、自分の中に渦巻き全身を満たした感情を整理するまで時間を要したことは、言うまでもなかった。
歌詞もサウンドもそれまでとは真逆。しかし伝えんとしているメッセージは一貫していて。
聞いた誰かの背中を押すし、どん底にいる誰かの頭上を晴天にしてしまうそのエネルギーは、何ひとつ衰えていなかった。
1stシングル『Here comes The SUN』も2ndシングル『カラフル』も、そのCP曲も、曇天の空に一筋の光が差し込んできて、段々雲が晴れてきて青空が広がっていく……みたいなイメージを勝手に抱いていたのだけれど。
『Oh No!!』は何か違う。めちゃくちゃでかい団扇かめちゃくちゃでかい扇風機で世界中のすべての雲を吹き飛ばしている。(※あくまでイメージです※)
『imitation』(2ndシングルCP曲)に近い路線を感じたけれど、それ以上のパンチの強さと別方面のかっこいいバックバンドの音がそこにあった。
衰えているどころか加速しているし、メーター振り切ってはいないかこれは。
一体どんな経緯で生まれたというのかこの曲は。
その疑問は、リリース直後のインタビュー記事ですぐに晴れた。
この時期は、誰もがどこかでストレスを抱えているし、我慢しなくちゃいけないことがめちゃくちゃあって、それを強いられる状況もある。でも、我慢しなくてもいいこともある。好きなものは好きだと発信する、個人個人の発信の場は存在していると思うんですね。やり方を間違えなければ。すべてを右へならえでハイハイって聞くんじゃなくて、自分の好きなものは好きだと発信していいんじゃない?という思いを爆発させる気持ちで書きました。
(11月18日公開のBARKSインタビュー記事より)
このご時世だからこそ生み出された、きっと誰しもが抱えているであろう「好きなことを我慢すること」への言いようのない不満。
わたしだって、こんな世の中になってから数え切れないほど感じてきたこと。
我慢すれば平穏風な暮らしは演出できるだろう
「僕もそう思ってた」って言うだけの簡単なロジック
頭は縦にだけ振れりゃいいんですよ
Oh No!!待ってよそれじゃ意味がないね
迎合してへつらって本心を隠して
もっと僕らは自由なはずだよ
戦って夢見て負けるなら本望じゃん
「全部が全部そうじゃなくていい」と、この曲は語るのだ。こんな我慢ばかりの世の中で、自分の『好き』や『夢』までも諦める必要などどこにもないと。
ああ、なんてエモーショナル!!!
こんな世の中で、いつも通りにいかなくなった世界で、こんな形のサプライズをもたらして、聞いた誰かの中にある何かしらの壁を、こんなにも粉々にぶち壊してしまうとは。
そして宗悟さんは、上記のインタビューでこう語る。
やっぱり武道館って、音楽を目指す人にとっての聖地なので。武道館に単独で立つ人はかっこいいですよ。俺もかっこよくなりたいです。まずはそこが目標で、ほかにやりたいこともいっぱい頭の中にあるので、一個一個できたら最高だと思いますね。
(中略)
一人一人が仕事をしている中で、僕が表に立ってできることはいっぱいあるから、その部分を前面に出して、みんなで武道館に立ちたいですね。
やはりこの人はとんでもないアーティストだ。『みんなで』武道館に立ちたいと仰るのだから。ひとりじゃない。みんなで。
ああ、この人の行く末を追いかけたい。これからも、この先も。その歌が紡ぐ物語を辿って生きていきたい。
そしていつか、日の丸がてっぺんに浮かんだあのどでかいステージに立つ宗悟さんの、思い出の背景のひとりになりたいと思うのだ。