「生きてるなら燃えてやれ」――夜鷹が心を燃やした日
【10/1追記】加筆修正を行い再掲しました。
※愛すべきフォロワー、さっちゃんことアサツキサキさんの最高に昂る企画に参加させていただきました!!
好きを語りすぎて5000字近くあります。お付き合いください。←加筆したら7000字くらいになりました。笑ってください(10/1追記)。
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『いずれ滅びゆく星の煌めき』
お決まりの言葉遊びで世に放たれた、とあるシングル。
そのたった1枚に囚われたひとりのオタクが、ここにいる。
スキもいらない、コメントもいらない。ただ、この心の中で煮えたぎった行き場のない愛を聞いてほしい。
SoundHorizonとわたし
Sound Horizon(以下サンホラ)。
サウンドクリエイター Revoが主宰する幻想楽団。
『物語音楽』と称される独特な世界観と、どう足掻いてもそのまま読めない歌詞。「演奏している人はとんでもない技巧の持ち主だ……」と素人でも分かる、複雑かつ耳に残る音楽性。
わたしがその魅力に虜になったのは、遡ること10数年前。中学の同級生にCDを借りたのがきっかけだった。
難しそうなパッセージが折り重なった音楽、『見えざるルビ』と呼ばれる歌詞(※例えば上記の曲では、「Arkと呼ばれたもの」と書いて「ナイフ」と読んだりする)、突然入ってくる台詞の掛け合い、ものすごく小さく聞こえるSE等々。
パケのデザインや特典内容、数多の考察や解釈に至るまで、わたしはいちローラン(※ファンの愛称)としてめちゃめちゃに楽しんでいた。
隠しトラックが聞けるURLを探し出すためにCDケースを解体したことあります?ローランはあります。
とはいえ。
7thStoryCD『Märchen』発売以降、わたしはサンホラから距離を置いていた。
別に嫌いになったとかそういう理由ではない。
大学特有のパリピ達に囲まれた結果オタクから足を洗いかけたり、無事出戻ったものの別ジャンルの同人活動に目覚め、創作と、勉学と、サークル活動に励んでいた結果、自然と足が遠のいてしまったのである。
ベストアルバム『Chronology [2005-2010]』を手にした後、本当にサンホラの続報を追うこと自体をしなくなっていた。
そうこうしているうちにメジャーデビュー10周年が過ぎ、いくつかのマキシと、9thStoryCD『Nein』の発売があったりしたのだけれど。
上記の通りパリピとオタクの2足のわらじみたいな事をしていたわたしは、『新作出たんだ!そのうち聞こ〜』くらいのノリで見送ってしまっていた。
そしてわたしは、過去の自分をぶん殴りたくなるレベルでこの行いを後悔することになる。
その理由は後述するとして。
そうこうしているうちに、わたしは大学を卒業して、社会人になった。
出勤時のテンションを上げるためたま〜に『StarDust』を聞き、
「(仕事なのは)なぜ…なぜなの…?なぜなのよおおおおおおお!!!」
と心の中で叫びながら出勤するような、そんな社会人になっていた。
(字面にするとめちゃくちゃ楽しそうな出勤タイムである。実際めちゃくちゃ楽しかった)
そう、わたしはただのローランだった。
言ってしまえば、好きなアーティストの曲を聞いて気持ちを上げ、生活を潤し、「人生で一度くらいはコンサートに言ってみたいなあ」と夢見る程度の。
どこにでもいる普通の音楽ファンだった。
その立ち位置が180度…いや540度ひっくり返るような出来事が起きた。
去年のことである。
わたしは『Mirrativ』というアプリで配信活動をしている。とある日の歌枠配信で、数年ぶりにサンホラを歌う機会があった。
その時歌ったのがこれ。わたしの中でも5本の指に入るくらいに好きな曲。そのこともあり、めちゃくちゃ歌うのが楽しかったのだ。
久しぶりにサンホラの魅力に触れて、わたしのテンションは爆上がりした。……と同時に、わたしのサンホラの知識は大学入学前から止まっていることも思い出した。
そういえばメジャーデビュー10周年だかなんだか言っていたような…ぼんやりした記憶を辿って、公式サイトを検索してみる。
10周年どころか15周年になっていた。
配信数日後に15周年記念サイトが立ち上がったのを見た時は、流石に「タイミングが良すぎる……!!」と戦慄したものである。
話を戻そう。
時代はもはや15周年。かつて『Rinne』と銘打たれた8thStory CDも、Near Futureには……と囁かれている(何を言っているか分からないと思いますがローラン用語です。気にしないでください)。
追いつかなくては、と思った。置いていかれた5年間の月日を、取り戻さなくてはならない。
そう思うと同時にネットレンタルへ走っていた。
そして無事に『Märchen』以降の作品を入手することに成功した。
わたしが未だ知り得なかった、聞けていなかった作品は3つ。
Story Maxi 『ハロウィンと夜の物語』
Anniversary Maxi『 いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』
9thStoryCD『Nein』
『Nein』より先にシングルが届いたので、聞くことにした。
ちなみに『ハロウィンと夜の物語』は、アメリカを舞台にしたハロウィンと家族の物語。異なる曲調の3曲で、ひとつの物語が完成されている。
(これだけ聞くとめちゃくちゃハッピーになれるのだけれど、前後と隠しトラックまで聞くとそんな悠長なことも言ってられなくなるのがサンホラマジックである。是非1曲目から聞いて頂きたい)
「あ〜相変わらずめちゃくちゃ良〜!!(オタク特有の語彙力のなさ)」と、歌詞を見ながら拍手喝采。ネットの海で考察を読んでは赤べこのごとく頷いたり。ネットレンタルでCD本体しかないので、ケース解体はできなかった。
これ、これだよ。こういう楽しみ方ができるのがサンホラだった。
出会ってしまった、『よだかの星』
久しぶりの高揚感に顔も心も綻ばせながら、わたしはもう1枚のシングルを再生した。
その瞬間、わたしの世界はひっくり返った。
何を言っているのか分からないと思うが、とにかくひっくり返った。そして、心を燃やされた。
何はともあれ、聞いてみて欲しい。
開始1秒のギターで、全部持っていかれた。
なんだこれは。これは本当にサンホラの曲なのか?わたしは別のアーティストを再生したのではないか??
だが、再生画面にはちゃんと『Sound Horizon』と明記されている。間違いなくサンホラだ。
じゃあなんだ、このわたしの心を掴みしかしないバチバチのロックサウンドは。ロックサウンドが入り混じる曲は今までもあったけれど、ここまでロックに振り切る曲が、サンホラにあっただろうか。
某青い針鼠のおかげで好きな音楽の根底がロックやバンドサウンドなので、余りにも痺れてしまった。
なんだ、この心の奥底に訴えかけてくる歌声と歌詞は。聞いた人の胸の奥にある熱いものを、拳ひとつで引っ張り出すような、この歌は何なんだ。
更になんだ2曲目は。なぜこんなに熱いロックサウンドの中でひっきりなしにMotherと叫んでいるんだ。……えっ『Roman』(過去作)に収録予定だった?えっちょっと何を言っているのか分からないです。
3曲目は「あ〜サンホラっぽさが出てきたなあ……」と最初は思ったけれど、出るわ出るわノエルとやらの衝撃の半生。コサックダンスのノリで虐待された話を語るな。最後の最後にリアルイベントの告知を出すな。
よくよく見たらこのシングルはAnniversary Maxiだ。
『ハロウィンと夜の物語』はStory Maxiと銘打たれていた。
『Märchen』の前に発売されたシングル『イドへ至る森へ至るイド』も、Prologue Maxiという名前だった。
ということは、そもそもこれは物語とか、そういう路線のシングルではないということか……?
色んな疑問や考察が頭の中を駆け巡る。だがわたしの手元にあるのはCD1枚だけ。特典はおろか、ケースも歌詞カードもない。ネットの歌詞を読むだけでは何も分からない。
なぜパケごと借りなかったのか。ネットレンタルに甘んじた自分を恥じた。
とにかく、ヴァニシング・スターライトという世界を知らなくてはならない。
そう思って、わたしは公式サイトを駆けずり回った。
10年という月日をかけて「物語音楽」というジャンルを創り上げてきたRevoが放つ新作は、これまでのSound Horizonで描くことのなかった“現代日本”が舞台。パラレルワールドに存在する新生バンド「VANISHING STARLIGHT」のメジャーデビューを描く。
(Sound Horizon 10th Anniversary Special Siteより)
「VANISHING STARLIGHT」(以下ヴァニスタ)のボーカル Noël(以下ノエル)はRevoが直々に別世界に渡ってプロデュースしたボーカリストで、ノエルはRevoに渡された宮沢賢治著『よだかの星』に感銘を受け、楽曲『よだかの星』を作成した。
「バンドでデビューしたい」というノエルの意向を叶えるべく、Revo自らバンドメンバーを集めヴァニスタが結成。『よだかの星』で鮮烈なデビューを果たす。
……みたいなことをパラレルワールドでやってきたから、こっちの世界にも曲持ってきたよ!みんな聞いてね〜!(by Revo)
……ということ、である。Revo陛下がそう言うのなら、そうなのである。
おまけにノエル以外のヴァニスタメンバーは、わたし達の住む世界に本当に実在するバンドマンである。
Revoが超絶技巧の持ち主たる方々をノエルの元に連れてきて引き合わせた結果、とんでもない音楽ととんでもないバンドが生まれてしまった(ただしパラレルワールドで)……と、いうことである。Revo陛下がそう言うのだからそうなのである。
サンホラの数ある地平線の中でも、トップクラスで現実と虚構がいい意味でごちゃ混ぜである。だがその躊躇なんてぶっ飛ばすくらいの熱い曲がそこにある。
だから、わたしの頭は即座にこの世界に順応した。
その日、わたしは『ただのローラン』ではなくなった。
ヴァニシング・スターライトというバンドに心を燃やされた、ノエル贔屓ヴァニスタ過激派オタクと化したのである。
飢えたオタクはのたうち回る
ヴァニスタがわたしに与えた影響はただならぬものだった。
ただ、わたしがヴァニスタに出会う時期は少しだけ――いや、だいぶ遅かった。
『 いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』が発売したのは2014年。わたしがヴァニスタを知ったのが2019年。
もう5年の月日が流れていたのである。
ヴァニスタの展開はそれはもう、恐ろしいもので。通常盤と初回限定盤、その他に予約限定スペシャル盤なるものが発売されていた。
その特典内容がMV映像収録のブルーレイだとか、『よだかの星』バンドスコアだとか、メモリアルイシュー(Revoとノエルの対談記事が含まれる)だとか、ちょっとよく分からないてんこ盛りぶりで。
ヴァニスタを、ノエルのことを、もっと知りたい。わたしはその一心で、
中古通販を血眼で駆けずりまわり入手していた。
そしてデビュー10周年イベントにヴァニスタが出演していたと聞いて咽び泣いたし、『Nein』にもノエルがメンバーとして参加していたと聞いて夢中で『Nein』を聞いた。
参加どころか、むしろメインで曲をもらっているではないか、ノエルよ。
ということはもちろん、『Nein』のコンサートに出演していないわけがないのだ。
(4:40〜がノエル担当曲、最果てのL)
「過去の自分をぶん殴りたくなるレベルで後悔した」のは、このため。
遅すぎた。彼らを知るのが。10周年の時にヴァニスタをちゃんと知っていたなら予約限定スペシャル盤を定価で購入してお金を落とすべきところへ落とせたし、ファンクラブに入って10周年イベントは何がなんでも行ったし、 Neinコンサートも血眼で行った。
形はどうあれ、彼らがライブしている姿をこの目に焼き付けることができたかもしれなかった。
だが、今となっては後の祭り。
泣いても喚いてもわたしが放置した5年間は帰ってこない。パリピにかまけたわたしの負けだ。これは自業自得なのだった。
とはいえ、飢えたオタクとは恐ろしいもので。ある限りの供給を自らの手に収めようとしてしまう生き物なので。
通常盤に初回限定盤、10周年イベント映像収録のNein限定盤、コミカライズやノベライズ……ありとあらゆる公式からのヴァニスタ関連商品を、己の財力が許す限り買い集めた。
ノエルが使っているギターも商品化されているのだが、
260万するのでさすがに諦めた。
ギターストラップくらいは……と思ったが、それも6万した。諦めた。
ノエルのMCが全収録されているNeinコンサートの限定BD(ミニ箪笥付き)も買おうと思ったが、10万くらいした。やっぱり諦めた。
15周年記念でリマスター復刻されるので、FC限定セットとヴァニスタ単体で予約した。我が家にはあと2枚ヴァニスタが積まれることになるらしい。
そんな感じでヴァニスタに狂ったオタクをしていた、ある日。ふとカラオケに行ったわたしは感動と絶望の入り混じった感情に犯された。
ついにカラオケでヴァニスタを歌うことができた。ただし、『よだかの星』ショートVer(MVつき)のみ。
サンホラの曲は、そのほとんどがカラオケに実装されている。だが、ヴァニスタだけは全く入っていないのだ。
ショートVerだけでも歌えることには変わりがないので、3〜4回くらい入れてひとりで歌ってめちゃくちゃに楽しかったのだが、飢えたオタクは欲が出る。
やっぱりフルで歌いたいのだわたしは。「生きてるなら燃えてやれ!」と、心の底から叫びたいのだ。だが非情にも、カラオケは中途半端なアウトロと落下するノエルの映像で止まってしまう。
……ないなら、作るしかないんじゃない?
そして2020年10月1日。ヴァニシング・スターライト発売から6周年。
構想1年、製作期間2ヶ月、幾度かの挫折を経て、ついにカバー動画を出してしまった。
スペシャル盤特典のバンドスコアと打ち込みアプリを睨めっこしつつ、譜面のえげつなさに白目を剥きつつ、録音した己の声にも白目を剥きつつ、紆余曲折しながらなんとか世に躍り出た。
コピバンするならまだしも、特典のスコアをこんな自己満な使い方をしている人は、もうわたししかいないかもしれない。
ちなみに、よだかの星の譜面はまじで意味が分からない。3連符×3は9連符じゃなくて3連符なんだってさ……(何を言っているのか分からないと思うので無視していただいて結構です)
わたしは今日も、夜鷹を追っている
ローランとしてのわたしの立ち位置をものの見事にひっくり返してくれた、『いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』。
ノエルは今日も、ここではない別の世界で命を燃やして、歌い続けているのだろうか。向こうの世界では、もうワンマンでドーム公演とかやっちゃってるのかもしれないな〜……なんて。
あっわたしはまだヴァニスタワンマンツアーを諦めてないですからね。いつかアリーナで最前とるんだ。物販のマフラータオルぶん回して「ノエル〜〜〜〜!!!!!」って叫ぶんだ。そしたらノエルと目が合うんですよ。ええ当然でしょう。
もちろんすべて妄言である。それらを頭の中でぐるぐるさせながら、わたしは今日も『よだかの星』を口ずさむのだ。
『生きてるなら燃えてやれ!』と。
美味しい肉を食べます