今、ここにいるということ
1.今回は閑話。
ネタも切れてきたこともあり(笑),たまには自分のこれまでのことについて少し話そうと思う。
あまり聞きたい人はいないとは思うが悪しからず。
(1)〝声がないならリズムで勝負。リズムがないならイズムで勝負〟とラップするライムスターの「K・U・F・U」って曲はまさに凡人が強かに生きるメッセージが感じられて良い。
自分の人生もこの歌のようにいけたらと思う。
あのダサい奴が最後に勝ったという感じで。
今回は彼らのような有名人じゃないが、短い期間の間、僕の友人だった自称ラッパーのKについてまず話そうと思う。
(2)浪人時代、Kという友人がいた。
なんというか、いろんな意味でぶっとんだ人間だった。
元ヤンなのに元美術部所属でスイマーの経歴を持つラッパーの浪人生でロシア女のQ2にハマって深夜の土方仕事に勤しむお茶目なところもあった(英語ならまだしも、ロシア語だなんてどんなプレーが展開されるのか(笑))。
また不細工なのに竹中直人みたいな捉えどころのない魅力があってモテモテだった。
自分が聞いただけでも中年女性や予備校のきれいなお姉さんなど複数の女性と付き合っていたとのこと。
かなり話が盛られていたとは思うが、あながち嘘とは思えない魅力が同性からみてもあったことは事実。
そしてこの男はさすがラッパーと名乗るだけあって自分自身の言葉を持っていた(かなりの独断と偏見に彩られていたが(笑))。
そんな彼がある時、「朝、まったりと喫茶店でコーヒーを飲んでいる時、言いようのない幸せを感じた」と言っていた。
なんのことはない日常の言葉だったが、それがなぜか自分の心に響いた。
でもそれが何を意味するのか分からなかった。
(3)その後、大学に進学し、いろんな変遷を経て司法浪人生になったが夢破れ、途方にくれることとなった。
絶望感と逃避感の中、インドやニューヨークや東南アジアに放浪の旅に出た。
でもドラマのようにそこで何かが起きることもなかった。
帰国後、どうしたものかと思い、呆然とした状態でユーチューブをぼーと見続ける日々がしばらく続いた。
そのなかで観た座頭市。
勝新演じる市が言った〝上を見れば限りなく、下を見てもまた限りない。大切なのは今の自分の在り方だろう〟という旨のセリフを聞いた時、上記のかっちゃんの言葉がふと脳裏に浮かび、その後ある考えが頭をよぎった。
人生は勝ち負けの比較じゃなく、今の生活をどれだけ感じられるか。
いい人生とはそういうものじゃないかと。
そう感じた時、弁護士になった友人達に対するへんなコンプレックスがパッと消えた気がした。
そして勝新の殺陣が鮮やかになった。
Kの言葉はこういう意味だったのか。
確かにこれだけでは劣等感はなくならない。でも人は人、自分は自分。
だから今、ここで自分固有の道を歩んでいけば、比較じゃない自分固有の人生を歩める。
その歩みが結果として弁護士の友人達と本当の意味でフェアな関係につながるのではないか。
とりあえず今の自分に掴めるものを掴みにいけばいい。
じゃあ今の自分が手に入れられるものは何か?
分からない。
でも自分の実家は商売をしている。じゃあその手伝いをするところから始めればいい。
それが後継社長になるきっかけだった。
2.(1)僕が幸運だったのは、家が商売していたのはもちろんだが、アドラーのいう優越・劣等コンプレックスの泥沼から抜け出せたこと。
優越コンプレックスとは自分は他人より優れているという優越感に浸り、自分の中に隠れている劣等感を誤魔化している状態。
劣等コンプレックスとは自分が人より劣っているという劣等感を感じ、落ち込んでしまっている状態。
つまり自分から逃げて、向き合えていない状態。
僕は司法試験時代を含め劣等コンプレックスに陥っていたが、試験を諦めたことがきっかけとなり、自分の数々の失敗と向き合い、それを受け止めることができた。
そして劣等感を力に変える形で今のところ、頑張れている。
もちろんまだまだこれからだが。
(2)親父はそんな自分のわがままな夢を一生懸命応援してくれた。
今度は自分が親父に返していく番。
親父が築いたものを受け継いでそれを維持・発展していく。
偉そうに言っているが、自分もまた発展途上。
この先間違うこともあるだろう。
でもそんなときは、どれだけ人から笑われようが僻まれようが、今ここにいる自分を忘れないでおこうと思う。