勝利の女神のバッドフェイス
1. 最近読んだビジネス書の中で一番よかったのは「SHOE DOG 靴にすべてを」という本。
この本はナイキの創業者であるフィルナイトが自身の生い立ちから、はったりで神戸のシューズメーカー・オニツカ(現アシックス)のアメリカ代理店の地位を掴み、やがてナイキを創業して株式上場して世界的企業にしていくまでの軌跡を著した自伝である。
自分が小さい時、すでに有名メーカーだったナイキ。爆発的にヒットしたエアージョーダンとか、とにかく自分の中ではやたら有名選手とタイアップするかっこいいシューズメーカーというイメージが強かったので、その創業者がアシックスとか日商岩井といった日本企業とのつながりが強いというのはかなり意外だった。
彼はその当時社長だったオニツカの社長や日商岩井にいた速水前日銀総裁のことを高く評価している。
こういった優秀な経済人達がかつての日本を支えていたんだろうなあ。
そんなフィルナイトだが、彼の経営スタイルは一言で言って、とにかく泥臭く攻める。MBAを取得して公認会計士の資格をもち、大学の先生もしていた人間とはとても思えない程に。
キャッシュフローなんてなんのその。会社名にもなるかつて世界一周した際にルーブル美術館でみた勝利の女神であるサモトラケの二ケ(NIKE)のイメージがあるのか、勝つ事にこだわり、オニツカをたくさん売ったり、いい靴を開発するためにとにかく借入金をしまくり、自転車操業に苦しみながら、とにかく走る。一杯一杯の男。まさに生き様そのものがSHOE DOG(シューズ馬鹿)。
あのロゴもそんな勝利にこだわる“二ケ”のイメージに合う。
2. そんな本だが、その中で個人的に一番印象深かったのが、ナイキの経営幹部会議の「バッドフェイス」。他の普通の役員会議と違い、互いの本音をぶつけ合い、時にののしり合うほどに感情と感情がぶつかり合う会議。
これこそが前回出た欧米企業の強みであるイノベーションを生みやすくするコンフリクト・マネジメントそのものではないかと思う。
コンフリクトとは葛藤・対立・紛争という意味で、否定的なイメージばかり目がいきがちだが、組織の活性化や新しい価値の創造に貢献する事があるため、積極的に活用していくことが望ましい。
コンフリクトは①組織内の限られた資源配分について関係者間での合意が形成されない場合、②互いが自立性を求めたり、パワーを確保したりしようと意図した時③組織内で共通の目標が確立出来ず、協力関係が成立しない場合、④互いの部門が相互依存的関係にある場合⑤タスク不確実性が高い場合、に生じる。
そのマネジメントに関して①競争:自らの利得にこだわり、競い合う。②和解:自らの利得を捨て、相手に譲る。③回避:自らや相手の利得が表立つのを止める。④妥協:適当なところで折り合いをつける。⑤協力:自分の利得も相手の利得も大きくなるような方法を一緒に見つけようと働きかける。
といったマネジメントの方向性がある。
ここでポイントなのは人間関係よりも問題解決を主眼に置く事である。そしてそれを円滑に行うにはしっかりしたファシリテーターといった調整役が必要だということ。
3. 自社の隊長会議も情報共有や理念の浸透、部門間の調整等様々な利点があるが、さらにそれを意味あるものにしていくためには、各隊長がそこでより本音を言い合えるようにしていかなければならないと思う。
そのためには自分のファシリテーションスキルを向上させるとともに、もっと自分自身も自分を全面に出していく姿勢が大切なのではないかと思う。
シューズ馬鹿ならぬ、警備馬鹿を意識して攻めの警備をやっていこうと思う。自転車操業はご免だが(笑)。
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