ゴーンショックに伴う外圧の民間警備業に及ぼす影響を考える
1.(1)
元日産・ルノー連合会長のカルロスゴーン氏が特別背任容疑で再逮捕された。
特捜の再勾留請求を東京地裁に却下されたことで有価証券虚偽記載という別件逮捕・勾留で本丸の特別背任の証拠固めをするというシナリオが崩壊した結果の苦渋の決断という感じだろう。
「取締役」CEOのゴーン氏が会社の金を使って専ら自分や家族のプライベートのために投資損失の穴埋めや海外に家を買ったのであれば「自己若しくは第三者の利益を図」るためと評価でき図利加害目的をもって任務に背く行為をしたといえる。その場合、特別背任罪(会社法960条1項)が成立する可能性は高いと思う。
ただ、それを立証する証拠固めのための取り調べがはかどらなければ、特捜は窮地に追い込まれ、刑事司法に関して海外メディアからのバッシングも激しくなる。
そうなれば日本の刑事捜査・裁判のあり方もひょっとしたら変わっていくのかもしれない。
この国際化時代、もはや訴追機関による制裁と温情という国内の理屈を押し通すことが難しくなってきたということだろう。
(2)
警察の監督下にある民間警備業者としては多少複雑な気持ちだが、考えようによってはいいことだと思う。
元来日本の刑事手続は遠山の金さんでも明らかなように、裁判官と検察官が一体となった奉行と白州に座らされて弁護士なしで自己弁護をする被告人との関係。
その関係は今でも続き、裁判官と検察官の判検交流があるなど公の連携は強い。
友人の弁護士曰く逆転無罪なんて例外的な専門弁護士を除いてはドラマの世界だという。
この国の刑事手続は伝統的に訴追機関優勢、被告人の人権保護が薄いということは自分が司法浪人している時からあらゆる先生によって指摘されてきたこと。
それは有罪確率も99%を超えていることからも伺われる。
これは起訴前の不起訴だとか起訴猶予といった措置があることを考えても他の国と比べても異常に高い数値といえよう。
でも今回、裁判所の再勾留請求却下はその関係が変わりつつあることが示されたのかもしれない。
(なんだかんだで体育会系の検察官とインテリの裁判官では事案によっては、評価のポイントがズレるということなんかなあ)。
2.
従来の刑事司法が以上のような性質なので、逮捕されると当然その地点で世間的には「推定有罪」の性格を帯びるようになる。
これは他の民間企業と同様、民間警備会社にとっても痛い。
例えば仮にある警備会社の従業員が逮捕されたら彼や彼の所属する会社は法律上の責任だけでなく、社会的信用にもヒビがつき仕事が来なくなる。その結果、相当強いダメージを喰らう(商売を畳むことも視野にいれる程に)。
当然それを防ぐには、権限なしの民間警備会社としてはなるべく正当防衛も含めて、なるべく犯罪者と距離をおいて、暴力を行使しないように指示せざるをえなくなり、初動対応の徹底が図りにくいという問題が生じる。
結果、警備員はいざと言う時に頼りにならないというふうに見る人が増える。そしてそれが警備員に対する社会的地位の低さに寄与している部分もある。
今回のゴーン・ショックでいままでの刑事手続の法律なり運用が変われば、犯罪者に対し積極的に対処できる可能性も高まり、業務がやりやすくなる。警備会社にとってはプラスになるかもしれない。
やはり、推定無罪、疑わしきは罰せずという刑事裁判の基本を基本通り運用されるような環境になってほしいです。
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