案内犬


案内犬

瀬戸花ひめの

案内犬

語り手(ひめの)「山で遭難したこととかあるん?」


聞き手(鈴竜ちゃん)「なんで!?ないよ!?」


語り手「ひめのあるんやけどさー、小学生の子竜のときに林間学校行っとって。スタンプラリーしながら村を巡る遊びをしよったんよね。」


聞き手「そこからどう遭難に繋がると…?」


語り手「地図もろててさ、村のど真ん中にある山越えたら近道やんって友達と気づいたんよ天才やけん。」 


聞き手「バカと天才は紙一重っていうしね。」


語り手「そんで山登りを決行したんやけど遊歩道なんてない獣道で。草や枝を掻き分けながら何十分も歩いて…お腹が空いてきた頃、やっと拓けた場所に出たんよ。」


語り手「やったここでお弁当食べよ!って、なんか木材が散らばっとる日陰に行ったんやけどさ。…その木材、見覚えがあって。」


聞き手「ん?家に使われてる柱とか?」


語り手「ちがうんよ、ひいおばあちゃんのお葬式で見た。」


聞き手「は?」


語り手「散らばっとった木材、全部棺やったんよ」


語り手「周りをよく見たら焼却炉のある廃墟もあって、そこには崩れた祭壇と空の骨壺もあって。」 


聞き手「ええ…」


語り手「ここ火葬場だったんだって、それに気づいた途端、急に空が暗くなって雨が降りだしてさ。もうお腹が空いたとかいってられなくてすぐに山を下りようとしたんやけど、雨と霧で獣道が全然見えんくて。」


聞き手「子どもの足だと無理があるよね…それで?」


語り手「友達と一緒に生涯ここにいるんだって泣いてたら、どこからともなく柴犬が現れたんよ。」


聞き手「柴犬」


語り手「柴犬」


語り手「柴犬がひめのの服の裾を咥えて、登ってきたのとは反対方向の獣道に連れていこうとするけん最初は迷ったんやけど柴犬から普通じゃないオーラを感じたけんついてってみることにしたんよね。」


語り手「柴犬のあとについて友達と獣道を下っていったらだんだん空が明るくなって霧も晴れてきて…気づいたら目の前に林間学校があったんよ。」


聞き手「柴犬ー!!!!」


語り手「先生たちもびっくりして、安否確認とかされよる間に柴犬は消えてしまったんやけど。ひめのはあれは山の神様かなって思っとる。」


聞き手「迷い込んだ愚かな人間を地上に戻す使命を背負わされてるのかな…本当にその柴犬にはこれからも感謝していかないとねえ。」


語り手「うい。」


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