エンヴィーメモリー(嫉妬の記憶)〜ピアノの音〜(1)
本題に入る前に。
この童話には
・軽度の性描写
・残酷な描写、グロ表現
・誤字
が含まれております。
苦手な方はここでやめて置いた方がよろしいでしょう。大丈夫な方はどうぞ。(3つに分けて書く予定です。)
すっかり道に迷ってしまったようだ。
私は大学生。大学の近くを探検しようと路地に入ったら、帰り道が分からなくなってしまった。
どうしよう喉が渇いた。この辺りは不自然に洋風な家が多くて、雰囲気的に自動販売機があるようなところでは無い。
困ったものだとやみくもに歩いているとどこからかピアノの音がきこえた。
その音は美しい高音で、それでいてどこか悲しくて何かを憎んでいるような音だった。
私はどうしてもその音が気になって、錆びれた中世のヨーロッパの街に迷い込んだような気分で音がする方へ歩いた。
上等な石畳を靴底をコツコツと鳴らしながらあるいて、レンガや白樺でできた可愛いおうちたちの群れを抜けると、そこには隠れ家のような雰囲気のある喫茶店があった。
白木で出来た壁にツタが絡んだラティスの柵、大きな緑の木のドア、屋根には小さな煙突、色とりどりの花が咲きほこる小さな庭。
小さいながらも、うっとりとするような素敵な喫茶店だ。
看板には「喫茶店 ローズマリー」
その喫茶店から音がしているらしく、私はベルのついた緑の木のドアを開けた。
店内にはアンティークの椅子と机、ソファが数組置いてある。
小さな暖炉には薪がくべられていて、壁には綺麗な絵が沢山飾ってある。そして奥には紅いカーペットのうえに黒塗りの立派なグランドピアノが置いてある。
私は小さい時からピアノをしていたからか、そのピアノの音が他のピアノの音と全然違うことに気づいた。
グランドピアノを弾いている女の人は、私に気づくと「いらっしゃいませ」と笑って歓迎してくれた。
「すみません、気づかずに。お席へどうぞ。」
茶色いワンピースにフリルの着いた大人しめのメイド服をきた店員さんらしき女性は、私をカウンター席に案内した。
「あの、そこのグランドピアノって、、、」
私がそう言いかけると、店員さんはにこりと微笑んで、
「ああ、彼女ですか?数年前にヨーロッパを旅行した時に中古品を扱う店で見つけて買いました。このピアノの音、なんだかほかのものと違う気がするんです。綺麗なのはもちろん、美しくてどこか悲しくて憎しみがあって、女の子がすすり泣いているようなこの音が気に入ったんです。」
彼女?、、、ピアノのことだろうか。
私はハーブティーとクッキーを注文すると、店員さんは青々とした茶葉をティーポットに注ぎ始めた。
「このお店は、私が1人でこっそりやっていまして、ほぼ常連さんだけなんです。なので、お好きにくつろいでください。ピアノもひいていただいて大丈夫ですよ。」
店員さんは私の心を読み取るようにそう言ってキッチンの奥の方へ行った。
私はカバンを足元におろし、ピアノの元へ向かい、蓋を開けた。
綺麗に手入れがされているらしく、鍵盤は艶がついて光沢を放っていた。
私は丸椅子に腰を下ろし、指を鍵盤の上に置いた。