逃亡
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
おれたちは走っている。
恐怖から逃げるために
真っ暗な森の中を。
足が痛い
呼吸が辛い
泣き叫びたい
でも走らなきゃ。
おれたちは自由になるために逃げているのだから。
いもうとの手を引く右腕が痛い、おとうとを背負う左腕が限界を超えている。
でも逃げないと。
このイカれた世界から。
そして作り直さないと。
この壊れた世の中を。
ずっと走り続けていると湖のほとりに出た。
あいつらはいなかった。
おれといもうとはへなへなと倒れ込み、おとうとを背中からおろした。
体力の限界は既に超えていた。
そして頭をあげると複数の気配を感じた。
それも、殺気立った恐ろしい気配が何十も。
俺は立ち上がり、2人をおれのうしろにいかせた。
「貴様らのような反逆者どもは殺さなくてはな。」
茂みから軍服を着た中年が苛立ちながら出てきた。
そしてこどもであるおれたちに容赦なくピストルを向けている。
おれは反射的に2人を抱え、湖に飛び込んだ。
そこの見えない暗い水の中を追いかけては来まい。
しかし、何故だ。
目が霞む。
意識が朦朧としている。
腕の中の2人は気を失っていた。
そしておれも、2人を起こして岸に戻る前に意識が途切れた。