世界を知る
「ここにいたんですね、ショウヘイくん。」
さっき喉が渇いて起きたらショウヘイくんが居ないことに気づいた。
ネルちゃんもイロハくんもいたのに。
そう思って店を出ると、店の近くの道路に置いてあるベンチに腰掛けるショウヘイくんを見つけた。
「い、イラルさん、すみません。おこしてしまいましたか、、、?」
「大丈夫です。僕は喉が乾いて起きただけです。お気遣いありがとう。、、、眠れないのですか?」
僕がそう聞くとショウヘイくんは背の高さとは比例しないどこか幼さのある顔を縦に振った。
「、、、そうですか。では1人では危ないですし、僕も目が覚めてしまったのでここにいても良いですか?」
彼はまたこくんと頷いてくれた。
「君は僕が怖いですか?」
僕は彼らの話を聞いたあと、僕らが吸血鬼だということを話していた。
小さな子にこんな話をすれば泣いて怖がるとは思ったが、嘘を伝えるわけにもいかない。
イロハくんとネルちゃんはよく分かっていない様子だった。
でも彼だけは動揺していた。
「怖くないです。だって、イラルさん達が悪い人だったら、僕らのことを寝てる間に食べてしまってるだろうし。」
「ふふふ、そうですね。それにこの世界では生きてる人間を食べることは出来ないんです。僕達はお店で人間世界から来た人の死体や血を買ってそれを定期的に食べています。なので、生きている人間さんを食べる気は無いですし、君たちとは仲良くなりたい。それに、僕は人間と吸血鬼が一緒にいきれたらいいのになと思います。」
「出来ないんですか?」
「吸血鬼の中には最近、一部の人間に仲間や家族を殺されたり奪われたりして人間を恨んでいる者もいます。彼らとの和解は、一筋縄ではいかないでしょうね。」
「おれたちは、吸血鬼は架空の生物だって教わってきました。でも、ほんとにいたんだって今驚いてます。シスターが言ってたんです。吸血鬼とはお友達になれるんだって。」
「お友達、ですか。僕も君とお友達になりたいです。」
僕がそう零すと彼は少し笑ってこういった。
「なりましょうよ。お友達。イラルさんだけじゃない、ニリンさん、ユウキさん、シュウヤさん。みんなと仲良くなりたい。」
「それは素晴らしい考えですね。是非ともよろしくね。」
「はい、イラルさん!」
僕達は微笑みあった。
「イラルさん、肩を借りていいですか?」
「ええ、構いませんよ。どうぞ。」
かれはしばらく話していたからか眠くなってきたらしい。
「イラルさん、お父ちゃんみたい。」
「お父様、ですか。ふふ、僕も少し大人になりましたかねぇ。」
「おれ、男の人の肩に寄っかかるの久しぶりだなぁ。、、、俺の家族、機関掃射で死んだんです。軍から襲撃されて。お出かけするよって言われていつもみたいに家から出たら大きな銃を持った軍人たちが沢山いていっせいに俺ら目掛けて撃ってきたんです。お父ちゃんが俺を庇ってくれて、俺だけ助かったんです。でも、お父ちゃんもお母ちゃんも姉さんもお腹の中にいた弟も、みんな死んじゃった。俺が7つの時でしたかね。それから1年くらい行くあてもなく住宅街をさまよって親の持ってた金と盗んだ食べ物で生活して、8歳になった頃にシスターと会ったんです。それから孤児院に住んでいました。俺だけじゃない。ネルやイロハ、アスカ姉、カナデ、アズキも。みーんな戦争で行く宛をなくして、シスターのところに来たんです。」
気がつくと彼の目から大粒の真珠のような綺麗な涙が溢れていた。
まだ小さい子ども達にさえも絶望を与える。
それが銃の恐ろしさだ。
聞くと今、人間の世界では本当に戦争が起こっているという。
彼らの住む日本という国は「王」と名乗るものに占領されてしまい、法もなくなり、反対する政府の人間は容赦なく殺されたという。
そして王の独裁政治のせいで大人が狂い始めたという。
彼らの目的は、世界征服というくだらない野望。
警察や自衛隊は全て軍に統括され、研究者たちは兵器の開発を余儀なくされ、戦うことが出来ない者や反抗したものは非国民収容所というところに入れられて人体実験や残酷な拷問の末殺されている。さらには物資は全て軍人優先にされてしまう為、人々は泥水をすするような思いをしている。
人間界は、そんな腐ったことになっていたのだ。
僕は疲れて眠ってしまった彼の頭を撫でながら、王に対する殺意を覚えた。