入学式
「ついに俺も高校生かぁ。」
俺、菊川弦弥は今日高校生になった。
私立雨宮学園高等部。
全寮制の男子校だ。
もう中学生の時みたいなことにはなりたくない。
俺は高校で、今度こそ青春してやるんだ。
教室に着いた途端、俺のコミュ障が火を吹いた。
やべえ、誰一人知らないし話しかけられない。
俺は中学卒業と同時に親の仕事の都合で都会から田舎に引っ越すことになった。つまりこの辺のことはほぼ無知に等しい。
転校したことある人とかは経験あると思うけど、周りに知らない人しかいない恐怖。
そしてこの人たちの誰かと同じ部屋で生活することになる。
この学校の寮は特殊だ。
入学式のあと、新入生交流会というものがあり、ルームメイトを探すと同時に知り合いを増やすというコミュ障にとっては無理ゲーなミッションがある。
でも、中学のときのハンデを無くしたいと思って俺はここを志望した。
親は最初反対してたけど、今は頑張れと言ってくれている。
期待に応えたい!
とりあえずえっと、隣のヤツに話しかけてみるとしよう。
えっと、クラス分け名簿に名前があるはず、、、
1年D組4番
海老沢典明(えびさわ ふみあき)
ほう、海老沢くんと言うらしい。
俺は人生で1番デカい深呼吸をして、海老沢くんに話しかけようとしたら、彼の首がグリンとこっちを向き、俺の顔をしげしげと見ている。
「、、、」
え、なに?俺の顔面に闇の炎でも写ってる?
「おまえ、いいやつやな!!おし、気に入った!!部屋一緒にしないか!?」
え、何この人。初対面の相手を表情見てで判断してそんで部屋一緒にしようって?
んー、でも悪い人には見えないし、他の奴にも話しかけることができるか分からない。ゲームオーバーが目に見える無理ゲーするくらいならいっそ彼の言う通りにしてしまう方がましだ。
「いいよ、よろしくね。俺は菊川弦弥。君は海老沢くんだよね?」
「おう!よく知っとるなぁ。あ、フミアキでええよ。好きに呼びや。あ、そやそや。この学校の寮は4人1部屋やろ?」
「あ、そっか。じゃああと2人集めないといけないのか。」
「安心しぃ。俺の友達2人と約束しとるさかいの。」
「も、もう友達できたの!?」
「いや?中学の時からの親友だ。高校がたまたま被ってさ。しかもクラスも被ってくっそワロタやで!」
「へ、へぇ。君はこの辺の人なの?」
「せやで。3駅くらい先の村から来た。村いうてもコンビニとかスーパーもあるし、人も普通におるしな。お前さんはどっから?」
「俺、中学卒業と同時に親の都合で東京からこっちに来ることになってさ、ちょうどいい機会だし志望校ここだったから親も数駅先に住んでる。」
「東京!?すっげぇ、都会やん!!なあなあビルとかデカいん!?クレープ美味いん!?服かっこええ!?モデル歩いてる!?」
この辺って、結構田舎なんだなぁ。
俺、東京産まれだから逆に田舎の方が憧れるんだけどなぁ。
「うーん、まあまあ、かな。良かったら今度案内するよ。」
「ホンマに!?おおきにな!!」
まぁ、そんなこんなで俺はフミアキと仲良くなった。