0地点からの習作デッサン02 / "See you" LETTER
宣戦布告を呑み込んで、
愛の唄を紡いだすべてのひとへ。
前略
あなたの声が聞きたくて、今夜、この手紙を書いています。
わたくしといったらどう足掻いても、惰眠にも飽食にも慣れ親しんだ全身全霊で。
贅肉を抱えたこの身体で、海を、漠を、渡ろうなんて。ちゃんちゃら可笑しくて、今にも泣いてしまいそうです。
掲げるべき灯の在処を。永遠から湧く水の行方を。
識っていたはずだと、憶えているのだと、
(其れはほんとうに存在すると、)
例えばこころが触れ合う度、どうしても確かに信じてしまえて、どうしようもなく恥ずかしいです。
ハリボテの海原と、突貫工事の沙漠の真ん中で。
それでもこの瞳でみてしまったから。
霧中と識りながら幾度も無為に、空をかいたあの指先と声とは、祈りと呼ぶにはあまりにも心強く。
想像力の翼は鋼よりも強靱で、遭難と不時着を繰り返しながら、星の無い夜に雲を生みます。
あらゆる瞬間が、笑いごとだとしても。
この期に及んで、
忘れるように愛することさえ厭わないことを、
どうか、認めて下さい。
お元気で。
敬具
ーーーーーー追伸。
ひとつだけ、想い出したこともあります。
いつだったか、
記号としての言葉の羅列で築かれた虚勢と傲慢の塔を倒壊させたのは、
かみさまなんかじゃなくて、ぼくら自身なのでしたね。
散らばった破片は粉々に創を作ると気づきながら、ぼくらは愚かにも後悔出来なかった。
SAYONARA
という音色が、
誰かにとって、永久の別れの意味となり、立ち向かうための祝詞となり、切実さ故の罵倒となり、誤魔化すような誓いとなり、
誰かにとって、一等の愛の科白となるということ。
其れを互いに、美しいと慕えたあの日から現世は、やり直すにはあんまりに、愛おしすぎるままですね。
贅肉を抱えたこの身体の重さすら、棄てがたく思えるほどに。
破片は今でも、この瞳に突き刺さっています。
宣戦布告を呑み込んで、
愛の唄を紡ぐすべてのきみへ。
それじゃほんとうに、
SAYONARA.
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