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不思議な国、インドネシア。

日本でも人気のインドネシアのシンガーソングライター、アディティア・ソフィアンが9月に二度目の来日ツアーをするそうだ。ドトールコーヒーなどのコーヒーショップで耳にすることが多いので聞き馴染みある人も多いことだろう。ジャック・ジョンソンなどに通じるアコースティックで洗練された楽曲群はインドネシアの音楽と言われなければ意識することはないだろう洒落たオーガニックな音だ。今年は同じくインドネアシアのシティポップバンド、イックバルも三度目の来日を果たしている。こちらは山下達郎、角松敏生など80年代の日本のシティポップを現在進行形の音に仕立てたバンドで、最近日本で同じくシティポップを再解釈するバンドが急増しているが後追いではなく同時発生的、もしくは先取る形で出てきた点も面白いなと思う。


耳の早い音楽好きにとってインドネシアというのは優れた音楽を輩出する国としてすでに認知されてきている。しかし韓国や台湾などならわかるものの、インドネシアというまだまだ発展途上の国でこんな上質なポップミュージックが多く出てるのは少し不思議だ。以前、福岡の音楽ラジオ番組ドリンクバー凡人会議の中で松尾宗能さんが話されていた事が面白かったので少し紹介する。ヤマハの音楽教室によると指の力が弱い子どもには重い鍵盤を弾かせるより軽いタッチのオルガンを習わせた方がよい。楽譜を読ませるよりもコードを教え好きな楽曲(ポップスなど)をすぐに弾けるようになってもらい音楽の楽しさを知ってもらうことを重点にしている。そういう中からバンドを目指す子たちが出てきて、初めて楽器を持つ子が多いミドルティーンのバンドにおいてはヤマハ出身のキーボーディストを軸にバンドサウンドを形成していく。そういう点で日本の音楽シーンはヤマハによって支えられている。インドネシアは日本に次いでヤマハ音楽教室の生徒数が多い国で子どもの頃からヤマハによりポップミュージックの基礎が築かれている。だいたいこんな内容であったと思う。またヤマハ音楽講師を通じて日本のニューミュージックが子どもの頃に刷り込まれてるのではないだろうか、とも。鋭い考察だなと思う。


最近のインドネシアの音楽の個人的お薦めはClassmate Journalとマルコマルシェだ。どちらもアディティア・ソフィアン以降の心地よいヴォーカルのアコースティックなポップミュージックでありながら、ギターはよりパーカッシヴでグルーヴ感が強い。ノルウェーの人気デュオ、キングス・オブ・コンビニエンスの影響が大きいのだろう。ボサノヴァが好きな人にもお薦めの音楽だ。マルコマルシェはさらにカーペンターズなど70年代のアメリカA&Mサウンドの影響も色濃い。メロディがシンプルで美しく、そして温かい。非常に大人の音楽で洗練されている。日本ではインドネシアのこの辺の音楽が一部で人気だが、本国ではいまいち人気が出ないらしい。おそらくだけれどもメジャーなフィールドでは日本のチャートと同じような感じなのだろう。youtubeやsoundcloudで世界に発信される時代で良かった。こうした小さいけれど良質な世界中の音楽に簡単にアクセスできるのだから。


※この文章はル・プチメックのWebサイトに連載した「片隅の音楽」をアーカイブしたものです。初出:2016年7月


マルコマルシェ「ウォーム・ハウス」(インパートメント〈日本盤〉/2015)

インドネシア・ジャカルタのAsterinaとDutaによる男女デュオ。ギターのアンサンブルが織りなすグルーヴ感と男女混声によるコーラスが暖かなメロディを奏でるアコースティックなポップミュージックが気持ちよい。日本ではインパートメントより日本盤が販売されている。

http://www.inpartmaint.com/shop/marcomarche-warm-house/

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