美味しいものが好き
それは素材を活かしたものより人工的なものに偏っている。
かためでぽそぽそしていて甘さ控えめで、でも添加物一切入ってない手間暇かけた手作りのお菓子です、というものより、口に入れた瞬間に強烈な甘みを感じて、舌の上でクリームとスポンジがもったり絡み合うような中毒性のあるものに、より美味しさを感じてしまう。
学生の頃、仲良しの友達に「甘いものが苦手なんだ」と言われたとき、どうして?甘いものが苦手ってどういうこと?と、まったくピンとこなかった。男の子なら分かるけれど、とも思った。
「子供の頃から食べなかったから」
彼女は事も無げに言った。私は、へえ、としか言えなかった。やっぱりピンとこなかった。
上京し、ひとり暮らしを始めると私の主食は大好きな菓子パンになった。そんな生活が続いて数年後、体調を崩した。実家へ戻り母の手料理を食べ続けたら、元に戻った。
食って、すごいな。
身をもって知った。――だけど、私は今も美味しいものを食べ続けている。
一応、表示は眺めるけれど、どうしてもそれを食べたいときは、見なかったことにする。なんなら、これを作っている会社の人たち全員が、万が一にも食べる人の健康を損なうものを作って売るはずがない!とか自分に言い聞かせたりもする。(やれやれ、)
若い頃は、大人になったら菓子パンもケーキもスナック菓子も食べなくなるんだろなあ、と思っていたんだけどな。ほんと、なんの根拠だったのだろう。