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もしもし人類、いま暇? じゃあ2getherを観ようよ。



血も涙もないタイトルになってしまった。


あの衝撃的なできごとを書き留めておかなければならないという切迫感にかき立てられて、キーボードを、もはや怒りを込めて今打っている。これは自分のための備忘録としての文章だ。

タイのBLドラマ『2gether』を何の気なしに見始めた1週間前は、こんなことになるなんて思ってなかった。

どっかの布教ブログに書かれていたこの言葉が、文脈は違えど今の自分の心情にピタリと当てはまる。


「ここまでされたんだぞ!!!!!」


2getherを見てから、わたしの日常は変わった。どこにいても、あの2人がいるタイを無意識に探すようになってしまった。「タイ、今何してるかな」とiPhoneの世界時計にタイの時間を追加し、「タイ、元気かな」と天気アプリにバンコクの現地予報を入れた。挙げ句の果てに「タイ、どこにいるかな」とGoogleで「東京から見たタイの方位」で検索し、世界地図を見れば一発でわかる「タイは南西にある」という事実を認識してからは、気づけば外に出るたび、太陽の位置と時刻から南西の方角を割り出すのが癖になってしまった。理科の授業を真面目に受けていてよかった。

そして、単純に不眠に陥った。もともと寝つきは良い方で、夜眠れないということもあまりなかったのだけれど、2getherを見始めてから1週間、なかなか寝付けないし寝られたとしても2〜3時間で起きてしまう。身体が興奮状態から抜け出せないのだ。寝ようと思って目を閉じても、まぶたの裏にはタイがいる。脳は気付いたらタイのことを考えている。もう、自分の力ではどうしようもできない。安眠できない体になってしまった。



……………………………。




ここまでされたんだぞ!!!!!!!!!




以下、自分のために、こうまでなってしまった経緯を書き残しておく。



3月20日

タイBLドラマ沼の布教ツイートを見かける。ちょうどコロナのせいで行くはずだった舞台が飛んだ日だったので、せめて違うことで少しでもハッピーになろうと、YouTubeで2getherと検索する。ツイートで紹介されていたドラマは4つあったが、迷わず2getherに手が伸びたのは、あのときは完全に無意識だったけど、今思えばゴリゴリの面食いを発揮した結果だった。YouTubeで1話を見始めるも、すぐやめる。理由は、全画面ではなぜか日本語訳が表示されなかったから。iPhoneでダメだったからと諦めずに、PCで再生していれば2getherをリアタイできたのに。そう激しく後悔することを、このときはまだ知らなかった。


〜約2ヶ月半の空白〜


6月5日

ジャニオタ垢で、ある人が2gether視聴実況ツイートをしていた。そいや前にチラッと見たけど諦めたんだよな、と思い出す。ツイートの熱量に当てられ、加えて金曜日だったこともあり、帰宅後、軽い気持ちで2getherを再生し始める。以前はiPhone全画面字幕の問題があったが、ちょうど1ヶ月くらい前に会社からsurfaceを支給されており、surfaceでは全画面でも字幕がしっかりと表示されたので、今度はきちんと見始めることができた。2話まで観終わった頃には、時計は0時をとっくに過ぎていた。布団をかぶりなおし、暗い天井を見上げる。



ふ〜〜〜〜〜〜んこれがタイBL……………




めっちゃ好きかもしれん。



6月6日

昼前から昨日の続きを見始める。そして知らないうちに日をまたぎ、最終話を見終わったのは午前2時くらいだった。感情の起伏が激しい1日だった。会社からsurfaceを支給されて本当に良かったと思った。iPhoneの画面の大きさではおよそわたしの感情を受け止めきれなかっただろう。ドラマを見ながら身体の中ででっかい花火が打ち上がるたび、思わずsurfaceを叩いて一時停止していたのだが、surfaceは平手打ちにちょうどいい画面の大きさだった。ドラマを見終わったあと、Googleを検索し、主演2人がインスタでしばしばイチャついているという情報を得る。静かにインスタのフォローボタンを押した。

わたしはこの日から、よく眠れなくなる。



6月7日

主演2人のインスタを舐め尽くすように見る。タイでは、ドラマで人気の2人がそのままペアで活動することが多いらしい。ジャニーズで関係性厨の土壌を豊かに耕していたわたしは、インスタ上から垣間見えるリアルな彼らの空気感にメンタルをボコボコにされて圧倒的多幸感を味わう。翻訳機能があるからだいたいどんなことを言ってるかわかるのはありがたい。だがしかしインスタ、どうしてコメント機能にまで翻訳機能をつけない。サラワットくんのコメント、きちんと訳してよ!!!しかもインスタは文章をコピペできない仕様になっている。もう、これは学ぶしかないと思った。タイ語を学ぼう。自らの意思で語学を学ぼうと思ったのは初めてだった。ついでにWikipediaで主演2人がどちらも年下だと知り、言葉通り倒れ込んだ。何かの間違いだと言ってほしかった。

その後、2getherの2週目視聴に入る。改めて見直し、2getherは伏線が張り巡らされたミステリードラマであることに気づく。この台詞はそういうことだったのね!この表情はこういう理由だったのか!

そして最も重要なことに思い当たった。


もしかしてわたし、もうこのドラマを1週目と同じ気持ちで見ることが、できない?


恐ろしいその事実から逃避するように、そっと主演2人とそれぞれの公式ファンクラブのTwitterをフォローした。



6月8日

いつも憂鬱な月曜日だけど、朝から気持ちは晴れ晴れとし、仕事に向かう足取りが軽かった。だってこの世にはタイが存在する。

「2getherを見たか?!?!」と道ゆく人の肩を揺さぶらないようにありったけの理性をかき集め生活した。



6月9日

テレワークをサボって何度目かの2getherを見る。過去ツイを遡り、なぜか公式が本人を赤ちゃん扱いしていることを知る。タイは公式がジャニオタみたいだなと思った。

そしてこのあたりから、1週目の感情で2度とドラマを見られない事実に本気で気が滅入り始める。頼む。何も知らなかった頃のわたしを返してくれ。もう一度、あのドラマを初めて見たいだけなんだ。10万円は要らないから、なんとかならないだろうか政府。お願いします。わたしはあのときの自分を返してほしいだけなんです。

この日は2時間しか眠れなかった。



6月10日

朝起きて、タイの方角を見た。時差は2時間だから、彼らはまだ寝ているだろうかと、ぼんやりした頭で考えた。寝不足のせいで仕事の能率ががくんと落ちた。




あとはだいたい6月10日の繰り返しで今に至る。

ほんとうに、なんてことをしてくれたんだろう。


ちょうど今日、2getherのYouTube配信に制限がかかってしまった。版権が企業に買われたためだ。


YouTubeを開いても、もう彼らはいない。彼らはわたしを置いてパタンといなくなってしまった。


朝目覚める度に君の抜け殻が横にいるし、消し去ろうと願う度に心が体が君を覚えている。


平井堅の柔らかな声が頭の中でガンガンに響き渡る。





瞳を閉じて君を描くだけでいいわけないだろうが。



勝手にいなくなるな。

責任とってくれ。

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