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ついてきて 人生を変えてあげる

君に人生を変えられたいかと問われれば、それにはきっと頷けないんだろう。

人生が変わるときって、誰かと出会っただとか宝くじが当たっただとか外的要因が少なからず作用するけれど、それはあくまできっかけに過ぎなくて、そのあと自分が何を選び取るかが重要だと思っている。というか、そう思っていないと悪い方向で人生が変わってしまった時にどうしようもない。「〇〇のおかげで」は簡単に「〇〇のせいで」にひっくり返る。人生の主導権を他者に渡さないことは、20数年生きてきて得た、心身の健康を保つのに有効な保険だった。ただ、そうやって自己防衛をしていると、一方で、破茶滅茶な何かに一瞬ですべてを壊されたいという欲求が自律の裏側で蠱惑的に囁いてくるのも事実だ。今まで積み上げてきた経験則とか、培ってきた価値観とかを、嵐の一夜のように一瞬でめちゃくちゃにぶっ壊されてみたい。予定調和なんて単語をフッと一息で吹き飛ばしてほしい。上も下も右も左も、1が小さくて100が大きいも、全部忘れてしまえるような何か。

だから、今年の春に発表されたSexyZoneのアルバムのリード曲『RIGHT NEXT TO YOU』で聡くんがあの一節を歌ったときは胸を鷲掴みにされたような心地がした。

"Girl come with me bout’ to change your life"         〈ついてきて、人生を変えてあげる〉

アイドルが使える世界一素敵な魔法。その魔法を信じ切って全てを明け渡すには、やっぱり無鉄砲になりきれず分別がつきすぎる歳になっていたけれど、その魔法に期待して胸を高鳴らせてしまうくらいにはまだ若かった。ドキドキした。高揚した。誰でもなくわたしが好きな君にこの歌詞が当てられていることが誇らしかったし、やっぱり君はアイドルで、アイドルの神様から愛されているんだと確信めいたものを持った。金髪を揺らしてウインクし、手招きしながら歌う聡くんに、すとんと身体全ての力が抜けてしばらくテレビの前から動けなかったことを今でも覚えています。



それから数ヶ月後、聡くんの『赤シャツ』舞台出演のお知らせがあった。正直言って、最初は喜びと同じくらい不安があった。舞台は毎回が一発勝負で精神的に負荷が大きいし、ましてや聡くんは舞台に上がること自体が初めてだ。去年8月に復帰したばかりだし、もっとゆっくりしたペースで仕事をしてもいいんじゃないか。今これをやる必要があるのか。何よりも聡くんが健康でいること以上に大切なことなんてないのだから。各種雑誌のインタビューで緊張を窺わせる聡くんに、「がんばれ、大丈夫、きっとうまくいくから」と半ば自分に言い聞かせるように心の中で祈ることしかできないのがもどかしかった。苛烈な戦いの末に手にしたチケットを、そんな不安とともにぎゅうと握りしめて向かった池袋のブリリアホール。だけどわたしの心配なんて杞憂に過ぎなかったことを、聡くんは、よく通る生き生きとした声で、遠くからでもわかる煌めきに満ちた目で、初舞台とはまるで思えないほど自然なアドリブとそれをこなす胆力で、知らしめてくれた。武右衛門というキャラクターを愛させてくれた。死ぬ気でもぎ取ったチケットは手元に4枚あって、ほぼ週一で会場へ通っていたけれど、見るたび毎回、一番好きな武右衛門くんが更新されていった。2度目に観にいったときは最初観た時より段違いに滑舌が良くなっていたし、3度目はアドリブのキレが増していて会場中に笑いを咲かせていた。そこにいたのは聡くんではなくて、紛れもなく武右衛門くんだった。

ちょうど3度目の観劇を終えて数日後、東京千秋楽を終えた君が更新してくれたブログが忘れられない。

「こんな気持ちになれたのは初めてかもしれません。僕はお芝居が好きなんだと思う…演じることが大好きなんだと思う!!!」

きっと、もともと自己肯定感が高い方ではなくて、「なんでも頑張りたい」と言いつつも、ふんわりとした自分の答えに、君はいつも引け目を持っているように見えた。わたしはそんなところも人間らしくて好きだったけれど、このブログを読んだときは、泣きたくなるほど嬉しくて、帰宅した格好のまま、しばらく部屋の隅でスマホに表示された聡くんの文章を何度も何度も読み直した。聡くんが新しい自分を発見した瞬間に立ち会えたことももちろん嬉しかった。だけどそれ以上に、救われた気がしたのだ。自分自身、好きな仕事に就いたにも関わらず、ずっと不安と焦りでいっぱいの毎日だったから。思い描いていた未来には程遠くて、「わたし何が好きなんだったっけ」と考え込むことが多くなっていた中で、あの自信なさげだった聡くんが、自分の成長を実感して、認めて、楽しんでいることは、勇気に他ならなくて、それはなんだか曇り空から覗いた晴間のような、透き通った光に似ていた。あの日から、9月21日のあのブログはわたしのお守りになった。


4度目の観劇は、大阪で行われた大千穐楽。この回の武右衛門くんは、今までの兄に対する反発心が強い武右衛門くんよりも、もっと兄への尊敬や情念を捨てきれない弱くて柔らかい少年に見えて、最後の最後まで、役への解釈が深まったことに心底驚いた。最初わたしが抱いていた心配なんて軽やかに飛び越えて、聡くんは舞台を心の底から楽しみ役に真摯に向き合う1人の役者だった。カーテンコールで挨拶を振られ、堪えきれずに涙でいっぱいに濡れた頬でしゃがみ込んでしまった聡くんに、舞台出演が発表されたときから今日までのこと、そして活動復帰のお知らせから聡くんが見せてくれたいろんな表情や声が走馬灯のように駆け巡って、わたしも同じように泣いてしまった。最後列の端の席から、この世の誰よりも君が、愛おしい君が、両腕から溢れるほどの幸せを手にしてくれることをびしゃびしゃのマスクの中で願った。


人生を変えるのはいつだって自分の選択によるものだと変わらず思うけど、君の背中が、君の言葉が、君の愛が、きらきらと光る粒子となってわたしの選択を、人生を、より温かなものにしてくれていると断言できます。1人の他者として、23歳の君が大好きでした。そして、24歳の君もきっと大好きです。松島聡くん、24歳の誕生日おめでとう。心穏やかに、君が願うことがひとつでも多く叶う歳になりますように。

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