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映画:『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Begining(ジークアクス ビギニング)』感想
この記事には映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』に関するネタバレがあります。未見の人は読まないでください! 読んで気分を害しても責任は一切とりません。だってネタバレあり、読むな、って言ってんだからサァ!
ネタバレをSNSで掴まないために初日朝イチの映画館へ行く。平日であっても行く。見ずしてネタバレを踏んでしまったと喚くのは弱者ムーブでしかない。自分の人生のハンドルを握れ、握れなかったら弱音を吐くな。SNSを断て。面白かったらその日のうちにもう一度観ろ。
毎回こんなことを書いていますが、観てきました『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』初日初回と初日最終回の2回。間に仕事をしてました。仕事してなかったら一日中映画館に籠もってこれを観ていた可能性がある。何度も観たい。毎回2,000円くらいかかるのは困る。ハサウェイやククルスドアンの島のときみたいにブルーレイ同時販売してくれればいいのに……(上映方式が違うのと、テレビシリーズの先行公開の意味合いあるから難しいというのは重々承知ですが)
前半部に刻の涙を観る
前半部は原作アニメ『機動戦士ガンダム』において「もしサイド7でジオン軍がガンダムとホワイトベースの鹵獲に成功していたら?」から始まる架空戦記が描かれ、後半部はその歴史の延長線上で若者とガンダム最新鋭機との出会い&初戦での勝利が描かれます。
初っぱなから「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた…」のナレーションですよ。最新の映像であの導入がリメイクされている。そりゃ「人々はみずからの行為に恐怖」するわ。こんな企画を通して映像化してしまった映画会社の行為に恐怖だわ。
原作では冒頭でサイド7にカチコミに行くはずのジーンが、本作ではザクが故障して出られなかったというのがバタフライエフェクトになっているのが本当に面白い。「シャア少佐だって戦場で手柄を立てて出世したんだ!」とジーンが武勲をあげるのに焦ってしまった故に、ガンダムに乗っちゃったアムロが無双してホワイトベースもかろうじて危機を脱したわけですからね……。歴史の転換点ってこんなところにあるんだな。
シャアたちによって綿密にV作戦のモビルスーツはぶっ潰され、ガンダムとホワイトベースが奪われたらそりゃ戦況も変わるだろうし、何よりアムロがガンダムに乗らないわ、少年少女たちがホワイトベースに乗らないわ、となるので、我々のよく知る原作ガンダムの物語はここでおしまい。
考えてみたらアムロが出ないので声優の古谷徹の出番がない。アムロの父親が出てるシーンあったけど、これひょっとして父親がアムロに「早くシェルターへ行け!」つってアムロと遣り取りしてるシーンを声優故にお蔵入りにしてたりしませんかね!?
ガンダム大地に立つ!(操縦者:シャア)のシーンも、リメイクといえばリメイクなんだけれども、やっぱカッコいい。全体的にモビルスーツのデザインはディテールが細かくてSFメカっぽい。
その形をしているのはそれなりの理由がある、というのがいいんですよね。ザクは足の付け根がエネルギータンク状になっていて「燃料が入っているところは球状」っていうのがすごくいい。ガンダムは球が露出していない(ビットやビグザムには存在する)のだけれども、だからこその連邦とジオンの設計思想の違いみたいなのも見えて面白いんですよね。
そして始まる戦闘シーン。強敵ムーブで出てくるガンキャノンのバイザー内にカメラが4つあるのがちらっと映ってエヴァ弐号機じゃん!ってなりました。ガンキャノンのビームがゴジラの放射火炎ぽいすさまじさ。
手前の戦闘で、コロニーに穴を開けないようにか、戦車は砲弾やミサイルというより、なんかワイヤーのついたアンカー状のものを飛ばしてるんですよね。その配慮を無視しての極太ビームがキャノンから出る。ヤバい。あれザクが盾で防いでなかったらコロニーがだいぶ削れてたのでは。
接近戦となり砲身の加熱で連射できないガンキャノンはタックルを仕掛けて来る。このタックルのポーズもいい。それをビームサーベルで貫いてシャアの勝利。原作ガンダムがザクをビームサーベルで貫いた構図のオマージュ(たぶんカメラが対照の位置になってる)。やっぱりガンダム映像はモビルスーツ同士が戦ってこそですからね。
コロニー外へと出て宇宙空間で01ガンダムと戦うシーンもかなりいいです。プロトタイプガンダムはぼくの中で好きなモビルスーツの二位に位置してるんですが、01ガンダムってこの世界でのプロトタイプガンダムですよね? 色も同じだし。ビームライフルを持ってないというのもいい。プロトタイプガンダムのビームライフルってアムロのガンダムが持ってるやつとはちょっと違うんですよ。ビームに使うエネルギーの運用がまだできてないからこそのプロトタイプなんだけど。だからバズーカ使うのか~って。頭部がさっき倒されたガンキャノンみたいにバイザー型なんですよね。これを操縦してたパイロット、誰だろうなぁ……。
いやぁ、連邦軍、ここでプロトタイプガンダムを倒されるともうガンダムに関する研究というかV作戦、めっちゃ遅れてしまっただろうな。どうもその後はガンキャノンとガンダムの中間くらいの「軽キャノン」が主力になったようで。
たぶんこれをやってしまったから、ジムを大量生産するところまで至らなかったんだと思う。なぜなら、原作ではアムロの乗ったガンダムに取り付けられていた学習コンピュータ(今で言うAIだと思う)があったから様々なデータがとれてジムの量産に繋がってるので……。
そして軽キャノン。ビームライフルとビームキャノンを装備しているということは中長距離がメインの機体で、ビームサーベルは同様のエネルギーを利用するとしたら非常用に近く、近距離戦を決め込んだラストの要塞戦のような戦地ではガンダムハンマーを持っていくような運用なんだと思う。MSバリエーション的には袋小路な感じするよね。
もうちょっとモビルスーツの話をすると、ガンダムに使われている技術がジオンにもたらされたことから、ゲルググがコンペで落ちて作られてないっぽいんですよ! まあ、どちらにしろギャンのほうはコンペに出すことすらされてなさそうですが……。
こんな感じで始まる架空戦記としての前半ですが、シャアが主人公となりいわゆる「一年戦争」を駆け抜けるので、シャアが原作にあった名セリフを擦り倒していく感じ、新鮮です。5倍以上のエネルギーゲインがあったら、機械工作好きのアムロだけじゃなくシャアだって感嘆するんですよ!ガンダムを赤く塗ってしまうというのは、往年のゲーム『ギレンの野望』由来ですね。シャアが塗れと言ったわけではないのがちょっと面白かったですが。
歴史の詰め方が本当に丁寧であるが故に、キャラクターの存亡もかなり変わってしまっていて、ガルマが退役して死亡回避していたり、結構いろんな人が生き延びている。「君は生き延びることができるか?」「できました!」ってノリでいろんな人が生きてるんだけど、ビグザムが量産され脅威の戦力となってるカットが挟まるわりには、原作同様にドズルが戦死していたりもする。
たぶんドズルは、セイラさんの乗る軽キャノンに討たれてるんだよね。となると、スレッガーはミライじゃなくて(ホワイトベースないからね)別の艦で出会ったセイラさんと恋の鞘当てがありつつビグザムを前にGファイターで散り、それを目撃して激昂したセイラさんにドズルが墜とされたんじゃなかろうか。
こういうキャラクターの消息への想像をかき立てるのも、世界設定の懐の広さだなぁ。
そしてフラガナン博士が出てきたあたりから、「ニュータイプ」に関して一段ギアが上がります。木星帰りかつニュータイプのシャリア・ブルとシャアとの「マヴな関係」がすごくいい。
原作のシャリアは視聴者からして名前は覚えていても、重モビルアーマー「ブラウ・ブロ」に乗ってはいたがアムロに瞬殺されてた人でしょ的な……。そこからの大抜擢ですよ。何でシャリアが!?
それに、ニュータイプという触れ込みで出てきたといっても、シャリアは単にララァ・スンの代替じゃないんですよね。
というのもシャア自身が自覚的にも正真正銘のニュータイプパイロットとして描かれていて、シャリアのほうがむしろ「勘がいいだけの男です」と謙遜している。シャアは「私"にも"見える」どころか、見えて当然のレベルになっており、シャアが原作ララァの役割を負っていくのがとんでもなく素晴らしい翻案。
我々オタクは『仮面ライダーディケイド』というリイマジネーションの白眉を知っている。物語を再構築したときにその世界に居合わせないはずキャラクターを誰に負わせ、何に当てはめていくかというのが噛み合うととても気持ちいい。シャアをちゃんとニュータイプにしてしまうと、こういうことになるのかぁ!と思わせられました。
では、ララァはどこにいるかというと、原作の時間軸であれば少し前にシャアはララァをフラガナン機関に預けていたはずなのですが、歴史が変わってしまったのでララァはいません。いや、映像に出てきていないだけで、いるかもしれない。
これは前半の終盤でキシリアが呟いた「シャロンの薔薇」というキーワード。シャアとミノフスキー粒子が呼応した際に何らかの触媒となり「ゼクノヴァ」現象を引き起こしたわけですが、あの世界でのララァ(もしかしたら概念に置き換わっているのかもしれない)は、グラナダの地下にあったという「シャロンの薔薇」なのではないか。原作でも使われたあの歌声のSE、そしてシャアが消息を絶った際の最後の通信「刻が、見える…」いずれも、ララァを描写せずにララァの持っていた役割をきっちり果たした演出というか。
いや、シャアがキラキラに包まれて「刻が、見える…」って言った瞬間、「おまえが言うんか~い!」ってちょっと笑っちゃったんですが。
そんなことを思いながらも、前半のラストシーンは、シャアで映画『インターステラー』をやったらああなった、という感じがすごくて、「あ、このガンダム、真面目にSFやってるんだな」となりました。シャアがあの場面で見たものは、この映画そのものが世界の一つの可能性であったように、原作物語の世界も、さらなるアナザーストーリーの世界も、「全て見た」のだと思います。
おそらく狂うか、概念的存在となってしまったに違いない。
しょうがないのでソロモン攻略で自身のザビ家への復讐を優先させてザクから自爆装置をもぎとった「お前今ここでそれやるの!?」っていうシャアらしいといえばシャアらしいあのムーブはチャラにします(ひどい)。
ともかく、この前半部分はここから始まる新しいガンダムの話の起点にして、きっちりSFとしての世界観や、科学とファンタジーとの距離感を、オールドファンの脳内にある知識に連結することをも期待して明確に描きだした。そういう時間だったと思います。
後半部でも異彩を放つシャリア・ブル
そしてガラッと人物たちの絵柄が変わる後半部。間をつなぐ人物としてシャリア・ブルが続投します。
前半でシャアとのマヴ(これが戦術の名前だったなんて。マブダチのことかと思ってずっと聞いてたよ)っぷりを見せつけつつ、いわゆるブロマンス的「極大感情」をシャアに抱いたまま、彼の面影と「赤いガンダム」を追う人物としての再登場。あの面構えでまだ三十代というのがすごい。このあたりの「若いのに老けている」感じは原作リスペクトなのだろうか。
赤いガンダムに乗っているのがシャアではないことを訝しみながらも、そうであって当然のような表情(あんなのシャアじゃないでしょ)をも見せる彼。後半で新型ガンダムを取り戻すためにコロニーに戦艦で乗りつけるという豪胆さも見せ、今後もガンダムを巡る部分でのキーマンなのだと思います。なんかここで思ったんだけど、場合によっちゃセイラさんが出てくるんじゃないの!?
……という「ガンダム」と「ニュータイプ」の謎を主軸に、後半は多感で哲学的な疑問を日常に抱いて暮らす女子高生のマチュ(アマテ・ユズリハ)と、身寄りが無く闇バイトで生計を立てているニャアン、そして赤いガンダムを駆りコロニー外壁に「キラキラ」のグラフィティを落書きしていたシュウジ・イトウの出会い、そして初戦での勝利が描かれます。
ざっとストーリーを説明すると、次のような感じ。
運び屋稼業でのミスから警察に追われて逃走していたニャアンは位置情報タグつきの荷物をマチュのバッグに忍び込ませ、後日そのタグを頼りにマチュを付け狙う。マチュはその一手先を読み、荷物をすり替えてニャアンに壊れたスマホの修理代を迫る。
荷物の中味は、作業用モビルスーツを戦闘用に切り替えるためのデバイスで、二人はその受取人であるクラン「ポメラニアンズ」との関わりを持ち、クラン同士の違法モビルスーツバトルに巻き込まれることに。
そこへコロニー外で交戦していたシャリア・ブル率いる隊のニュータイプ、エグザベ・オリベのジークアクスが、赤いガンダムとともに飛び込んでくる。軍警に捕まることを避け、地下空間で活動停止していたジークアクスを見つけて乗り込んだマチュは、エグザベが何度やってもできなかったオメガ・サイコミュの起動を成し遂げ、エアロックから宇宙空間に放り出されるも、キラキラ(シャアが消息を絶ったときに見た、あのキラキラです)に導かれてザクに辛勝する。
エグザベは軍警に捉えられ、マチュのジークアクスは逃げおおせる。ジークアクスはポメラニアンズの格納庫に隠される。
マチュはザクとの戦闘で感じたキラキラのことが忘れられず、それと同じグラフィティが描かれていた場所でシュウジと出会い、ニャアンとも再会。クランバトルに出場して賞金を稼ぐというマチュの案にニャアンは渋々承諾。シュウジが二人を隠れ家へ案内すると、赤いガンダムが格納されていた。
一方、エグザベは戦艦でコロニーに乗り込んできたシャリアと、対話に応じたカムランの計らいで釈放される。
そしてクランバトルの当日、マチュのジークアクスと、シュウジの赤いガンダムがマヴを組み、窮地に追い込まれたところをシュウジによってキラキラを自ら感じる術を得て、勝利を収める。
……と、前半とはうって変わって案外真っ直ぐな青春ストーリー。ガールミーツガールとでも言うべきか。観ていてすがすがしいトーンに統一されていたと思います。
これはBGMもそうで、前半は原作の劇伴がふんだんに用いられていたんだけれども、後半は米津玄師の主題歌(2回もかかる!)だったり、星街すいせいだったり、NOMELON NOLEMONだったりのオシャレソングが疾走感を纏って流れまくる。なんかゲームで言えばペルソナ3以降みたいなノリと言えばわかる?
コロニー文化のディテールもいい。前半で連邦とジオンが和解的停戦をしていつつ、原作でも中立宣言をしていたサイド6ということもあって戦争難民が押し寄せているという設定。オリエンタルで雑多な感じがかつての九龍城のようでもあり、街区(バンチ)によって風景が違いそうなのがいいですね。カムランが「17バンチの二の舞」みたいなことを言っていたと思うんだけど、そこで何があったのかはいずれ明かされるのだろうか。
ミノフスキー粒子のせいで電波はうまく通じないことが多いはずなんだけど、一応スマホがある。観客である我々と似たような使い方をしている。戦闘用デバイスの型番を検索してみたり、カーナビも現代ぽかったり、ちょっとしたデジタル表現が、原作放映時のあの頃思い描いた未来のつもりで現代的ガジェットを描いているようにも受け取れて、なんかちょっとムズ痒かった。40年前の少年少女たちに伝えるとしたら、車は空を飛んでなんかないってことだ。
シュウジの住居が原作のランチ(脱出艇)だったりするあたり、もしかしてシュウジは原作の世界線から来てたりする?
マチュのキャラクターも、最初はあんまし好みじゃないかなーって思っていたんだけれども、まさかのすしカルマ顔どアップで一気に好きになってしまった。劇場の売店でアクスタ買いました。
いやほんと、ジークアクスの主人公がすしカルマなんだよ!(錯乱 pic.twitter.com/BhrgQlkvkH
— しおにく🕹/塩肉👻 (@sionic4029) January 17, 2025
そしてトップ画像にもあるように、滅多にプラモデル作らない(年に1つくらい)んですが、ジークアクスも買ってしまいました! 平日の朝イチだから堆く積まれていた……。この金曜をオフにしておいてよかった。先週だったら行政的な堅いイベントを運営していたので難しかった。ていうか、01ガンダム作りたい!
そんなわけで、ネタバレ込みで申し訳ないですが『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Begining』の感想でした!「u」は6個だからね!
(了)
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