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ホテル滞在記▶︎間も無く閉館、デザインホテル「CLASKA」のおはなし。

少し前ですが、シルバーウィークの期間に、目黒にあるデザインホテル「Hotel CLASKA」へお邪魔してきました。実は、老朽化のため今年の12月20日に閉館が決まっているホテルです。

連休だし、都内でゆっくり過ごしたいなあとあらゆるホテルを検討していましたが、いろんなところで名前は耳にするものの一度も訪れたことがないCLASKAに、今こそ行かねばならないのでは?!と半ば使命感に駆られ、予約をしました。

CLASKAってどんなホテル?

今や「CLASKA Gallery & Shop “DO”」として展開してしているライフスタイルショップとしての知名度が高いのでは、と思うのですが、元々はこの目黒にあるホテルから発信されたブランド(私も、コレド室町・丸の内KITTEの店舗に何度かお世話になっています)。
1969年からあるホテルをそのまま引き継ぎ、「リノベーション・デザイナーズホテル」の先駆けとして2003年にオープン。企画・設計を、今やMUJI HOTELONSEN RYOKAN 由縁 新宿などの人気宿を手がけるまちづくりの会社UDS株式会社が担当し、目黒における文化の発信地としての役割も果たしてきたホテルです。

・・・とここまでの前情報は得ていたものの、私自身が目黒という土地に馴染みがないこともあり、一体どんなホテルなんだろう?あんまり想像がつかないな?と思いながら、ホテルへ向かいました。

目黒のランドマークホテルとしての立地

場所は、学芸大学から徒歩12分。結構、歩きます。笑。
こんなところにホテルなんてあるのかしら?と一抹の不安を覚えながら進んでいくと、「インテリアストリート」とも言われるくらいたくさんの家具屋さん・雑貨屋さんが並ぶ目黒通りに、写真でみたことのあるモザイク調の外観、現る!

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ホテルステイの始まり、はじまり

まずは、チェックイン。ちょっと早めに着きましたが、お部屋が出来ているということでご案内いただきました。私が日本橋界隈に住んでいるため、同じくUDSが企画・設計(運営も)しているHAMACHO HOTELの話でフロントの方と一盛り上がり。CLASKAのデザインについてのお話や閉館のことなど、話が弾みました。チェックインが、ただの手続きでなくなる瞬間。確認作業にとどまらず、ホテル側から一歩踏み込んできてくれることが、とっても心地よかった。

CLASKAは冒頭で書いた通り、老朽化のため、今年閉館が決まっているホテル。去年の大型台風などの影響も大きかったと、スタッフの方からも伺いました。
正直にいうと、そもそも古いホテルを受け継いでリノベーションしていることもあり、年月の経過がいたるところに感じられます。意図的な部分も一部あるかとは思いますが、特に、エレベーターと階段はなかなかの趣で。笑。仕事柄、ラグジュアリーホテルや新しく出来たホテルに足を運ぶことの方が多い私は、はじめ、少しだけ戸惑いを覚えたのでした。

空間を堪能する時間

CLASKAは全20室、それぞれデザインや作りが異なり、独自のコンセプトを持っています。今回宿泊したのは、601号室「彩色と無彩色」というお部屋。

「彩色と無彩色。真逆からアプローチされ様子の違う2部屋ですが、どちらも懐かしさを感じさせつつ今の気分を表現することをめざしました。同じ広さ、家具、機能でシンメトリーにレイアウトされていますが、601号室は杉板メインの仕上げで、素材の触感や匂いを前面に出し素朴な空気感を演出しました。置かれた家具類は鳥居の形状などをヒントにオリジナルで制作しています。」
ーCLASKA公式サイトより

デザインが素敵だなと思ったのと、ゆっくり過ごしたいという気分に合いそうだったのと、バスタブ付きがいいなと思い、こちらのお部屋を選びました。

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お部屋に入った瞬間のあたたかさよ...!かわいい。ぬくぬくする。

私は、ホテルの部屋に着くと、大抵最初の30分くらいはひたすら写真撮影をするのですが、今回も同様に。お部屋の空間や雰囲気と自分自身とを擦り合わせていくような、空間に馴染んでいくための、一種の儀式のような時間。

広さは24平米とコンパクトですが、天井・床・壁に使われている杉素材のあたたかさのせいか、圧迫感は全くなく。むしろこのこじんまり感に心地よさを感じてしまう。自分のためだけの砦に守られている、みたいな。
初めて来たホテルのお部屋なのに、昔から知っているお馴染みの場所のように思えてくるのが、なんだかとても新鮮でした。

インテリアにはパステルカラーが使われていて、可愛らしいけどポップになりすぎず、主張しすぎない淡さがちょうど良いバランス!淡いブルー、イエロー、ピンク。特に黄色好きとしては、このイエローのハンガーラックが可愛くって。

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お待ちかねの、ベッドでごろごろの時間。
一番最初にベッドに転がる瞬間って、「もうこのきれいに設えられたベッドとはおさらばだわ、整えてくださった方ごめんなさい、そしてありがとう」っていうちょっとした緊張と罪悪感を覚えて、そこからの「ダイブ!ベッド気持ちいい!シーツ気持ちいい!」のリラックスモードに入っていく流れが最高ですよね。

今回は特にこの、音楽をかけながらの読書タイム、そして次第にうとうとしていく時間が、たまらなくよかったのです。音が空間を緩めて、自分がその空間に埋れていくような感覚。お部屋の木の温もりの柔らかさに、どんどん包まれていくような、空間の持つ魔力のようなものを感じた瞬間でした。

黄昏時を屋上で過ごす

夕方には、ルーフトップのテラスにも行ってみました。秋の気持ちいい季節、やってきちゃいましたね、を感じるひととき。

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住宅街、郵便局や電波塔。ここから見えるのは、東京でありながらも私の訪れたことのない街、はじめましての街。私にはこれといった思い入れがあるわけでも、東京タワーだとかスカイツリーだとかなにかこれと言ったものが見えるわけでもない。でも目の前には確かな「暮らし」が広がっている。
ここで日々を過ごしている人たちがこの街を作っているのだなあと思うと、何故だかものすごく、ノスタルジックな気持ちを覚えてしまいました。何があるわけでもない、自分にとっては拠り所のない景色だけど、もしかしたら、この街やこのホテルに深い想いを持っている人が作り出したものに、私も知らない間に触れたり出会ってきていて、自分の「暮らし」のどこかで交わってきたのかもしれない、と思いを巡らせたりして、なんだかハッとしてしまったのでした。

ホテルのレストランでディナー、そして朝食

ディナーはホテルのレストラン「kiokuh」にて。屋上の謎の感慨を引きずっていた私は、店名にテンションが上がってしまった。記憶…!
一番乗りで着席するもあっという間に満席になり、女性の二人組からおひとりさま、ご家族利用などさまざま。小さいお子さま連れで来ている方々を見て、もしかしてここで結婚式をやった方なのかもしれない、とか勝手に想像したりして、ここに集っているゲストみんなが、閉館前のホテルの目撃者としての同志であるかのような想いを抱いていました。
しっかりと刻んでおこう!と、コースを一品ずついただく。馬肉のタルタル、スズキと牛頰肉、仔牛、美味しかったなあ…。

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夫の遅ればせながらの誕生日祝いも兼ねていたので、最後メッセージ付きプレートを用意していただいて写真を撮ったのですが、最初は背景が白い壁で「これだとCLASKAっぽさが出ないので」と仰って、わざわざぐるっと回って別アングルから撮ってくださったのも、なんだか嬉しくて。しっかりとここでのことを形に残そうとしてくださることが、またも私のセンチメンタルに触れてしまった。笑。

朝食も、同じレストランでいただきましたが、クロワッサンが美味!

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明るい時間帯だと、外の緑と内装のウッド調の雰囲気の掛け合わせがさらに良い感じ。レストランはロビーとほぼ一体型でフロントとかもしっかり見えるような空間。レストランというよりはロビーで食事しているという感じがして、レストランっぽくないといえばそうなのかも、とも思うけれど、私はその開放感が逆にホテルらしさのように感じられました。

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チェックアウト時に感じたゲストの愛

朝食からチェックアウトまでの時間って、なんであんなにあっという間に過ぎていくのでしょうか。ギリギリまで寛いでしまい、いつもバタバタとフロントに向かってしまいます、本当はもっと優雅に旅立ちたいのに。笑。

最後、フロントで隣にいたお客さまが「再来月また泊まりたいのだけど、この部屋空いてる?」と確認されているのが耳に入り、ああやはり愛されているホテルなのだな、と改めて感じる瞬間でした。宿泊したときに次の予約を取るっていうだけでも既にファン度高いけど、さらにこのお部屋、という形で選んでもらえるってとっても幸せなことだよなあ。ゲストのロイヤリティの高さを目の当たりにし、あたたかい気持ちでいっぱいでした。

まとめ

これまでのホテル体験において、そのホテルのゲストのことにまで想いが及んだのは初めてのことでした。彼らはどんな人たちなんだろう、どんな物語があったんだろう、とか。ここで育まれた文化や、暮らしの価値観があって、このホテルを愛した人たちがそれをさらに醸成させていったのだろうなあ、とか。
そうした「文化のハブ」としてのホテルの可能性を、実感してしまいました。

昨今、いわゆる「ライフスタイルホテル」という形でホテルがカテゴライズされることも多い中で、日本において先駆けてそうした「暮らしをデザインする」や「生活における価値観を大切にする」といった挑戦がされていたことに、心を動かされてしまいました。
キャッチーさや、映えるスポットということではなくて、「どう暮らすか」を掘り下げた豊かさ。懐古厨になりたいわけではないですが、たくさんの新しいホテルができる中、一歩立ち止まって今在る時間や空間を目一杯享受するときを過ごせたのは、素敵な体験でした。

コロナ禍の今だからこそ「暮らし」について考える機会も増えましたし、伴って「ホテル」の概念も変わりつつあることを感じていて。そういうタイミングで改めて「どう暮らすか」の視点に立つこのホテルで過ごせたことは、今の私にとって特別な滞在となりました。

閉館まで、残りわずか!
どうか最後まで、走り抜けてください!

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