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線維筋痛症を始めて知った
2010年。私が教えていた鍼灸の勉強会の生徒の中にドクターがいました。そのドクター(T先生)は東洋医学に興味があり、クリニックの隣に鍼灸院を併設したいと考えていました。
私はT先生と意気投合し鍼灸院の立ち上げを手伝うこととなりました。
T先生はクリニックを開業する前、大学病院で神経内科に勤めていました。開業後も大学病院で診ていた患者さんがT先生を追いかけるようにクリニックに通院されていました。
そのせいか、普通に鍼灸院をやっていては出会えないような様々な症状を抱えた患者さんが大勢いました。
T先生は患者さんに鍼灸治療を積極的に勧めてくれました。
鍼灸院が軌道に乗るまでの間、私が最前線に立ちT先生の紹介する難しい患者さんを担当していました。
ある日、病院で線維筋痛症と言われたという患者さんを紹介されました。
私はこの時初めて『線維筋痛症』という病名を耳にしました。どんな病気なんだろう?と不思議に思いながら、あまり深く考えもせず、いつも通り治療を施しました。
結果、患者さんは「痛みが取れた」と大いに喜んでくれました。
また
「こんなに丁寧に痛いところを触って調べてもらったのは初めて、お医者さんは触りもしない。私のことを汚いとでも思ってるのかしら」と言っていました。
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私は苦笑いしながら「そんなことないですよ」と説明しつつ、触りもしないんだ……と不思議に思いました。
この線維筋痛症の患者さんに対する成功体験が
、すぐさま私を大きく勘違いさせることとなります。
その日の夜、ネットで線維筋痛症につい調べてみました。
・原因不明の強い痛み
・治療方法が無い
・長期的になり、酷いと車椅子、寝たきり
調べて出てきた線維筋痛症の情報に驚くも
治療した経験から
(線維筋痛症なんて大袈裟に言っているだけで西洋医学では対応出来ないだけじゃないか)
と思いました。
加えて、
これはかなりの数の患者さんが治る病気を西洋医学的に治らないとレッテル貼りされてるだけなのでは?と思い、治療院のホームページに『線維筋痛症の治療できます』と記載しました。
ほどなくして、線維筋痛症の患者さん(Mさん、男性)から往診依頼の電話がありました。
私は意気揚々と鍼灸道具を鞄に詰めて、Mさんのご自宅へ伺いました。
Mさんは線維筋痛症と診断され13年、交通事故を何度も繰り返し、車椅子生活、病院に行く以外はほとんどベッドで寝ているような生活をしていました。
私は問診を済ませ、脈診をしようとしました。
[鍼灸の診察では手首の脈を触って患者さんの体質を調べる方法があります]
脈を診るために患者さんの手首に触れた瞬間
「痛い!」と言われ手を引っ込めらてしまいました。
(え?)
私は再度、脈を診ようと手首にそっと触れました。かなりソフトに触ったにも関わらずMさんは痛がってしまいました。
無理に脈を診ることを諦め腹診をしようとお腹に触れると
「痛い!」と言われ、腹筋がギュッと緊張していく様が見て取れました。
鍼灸治療ではお腹を触って五臓六腑の疲れを確認しますが、Mさんの場合どこもかしくも軽く触るだけで痛がってしまい腹診から得られる情報がありませんでした。
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この時点で私の頭の中は大混乱してしまいました。
鍼灸師にとって触診から得られる情報は膨大です。この情報が得られないというのは、知らない土地をカーナビも地図も無い状態で運転するようなものなのです。
そんな右も左も分からない状態での治療ですから当然効果を出せるわけもなく、Mさんにとってはただ苦痛な時間となってしまいました。
私は自分の情けなさと患者さんに対する申し訳なさで打ちひしがれながら
家に帰りました。しばらく落ちこんだ後にホームページに載せた「
線維筋痛症の治療できます」の文字を消去しました。
そして一から勉強しよう!と固く決心し
ホームページをこう書き直しました。
「線維筋痛症と診断を受けた方を募集しています。治療の効果の判定にご協力ください。治療費は500円程度で、治療時間は60分です」
つづく