再来。
ずっと、ずっと、避けてたんです。
会う事が出来ずに、怯えていて、
なかった事にしよう…。
次に進もうと、いずれは来る別れだと、
思い込んで、暗示をかけていたのです。
病院に、
通院とリハビリ、カウンセリングを、
受けてヘトヘトになって歩いていた。
まさか、あの子とまた再来するなんて。
目が合った瞬間、長い時間の様に、
見つめ合い、目を逸らす事が出来ずに、
何も考えずに、私は笑顔になっていました。
すると、あの子は気まずそうに、
ペコリと軽くおじきをして目を逸らした。
あーやっぱり、そうだよな…。
なんだ、オレバカみたいに期待して。
私の知っている、あの子はもういない。
悲しみよりも、大人になっていく、
あの子を見れて、良かったと思えた。
だが、意外にも、あの子が話しかけてきた。
あ…なんだか、げっそりしてんね。
うーんと…こんな所にいてどっか行くの?
まだぎこちなく、よそよそしく感じた。
おー!今病院に行ってきた所だ。
まぁ…あまりかんばしくないがな…。
ちょうど、これから、家に帰る所さ。
そう返事すると、ふーんと興味なさげに、
答えてしばらく沈黙が続いていた。
何を、話せばいいのか、頭が働かない。
話したい事は、たくさんあるはずなのに。
あの子が、ボソッと何か言った。
ん?なんだ?なんか喋ったか?
そう聞いたら、
またボソッとだが、話し声は聞こえた。
ずっと、じいちゃんと、ばあちゃんが、
しつこいんだよ…。
…何が?将来の事か?
あんたの事だよ…しつこく聞いてくる…。
もう…うんざりなんだよ!
…そうか…すまんな…ごめん。
あのさ!すんげー面倒だからさ、
これからうちに来てくんねーか!
頼むから、じいちゃんとばあちゃんに、
変な心配かけんなよ!
こっちだって、忙しいんだよ!
あんたに…あんたなんかに、
付き合ってるヒマなんてねーんだわ!
だから、今すぐうちに来て会ってやれよ!
…いや、いいのか?
あの子は、イラだって声を荒げ、
あーもう!どっち?くるの?こないの?
早くしてくれよ!迷惑なんだよ!
…はい…会いに行きます…。
あの子は、祖父母と一緒に住んでいる。
母親は癌で亡くなり、父親は犯罪者である。
母親は、私の元同僚であの子が産まれて、
すぐに癌がみつかり一年後には亡くなった。
それから、ずっと定期的にあの子に、
会いに行っては、たくさん遊んだり、
たくさん話したり、何年もずっと続いていた。
だが、私の持病の影響で、
あの子と会えずにいたのだ。
死に損ない…そう言われてずいぶんと経つ。
それっきり、あの子とは疎遠になっていた。
あの子の家まで、ずっと沈黙である。
と、言うよりあの子が早足で先に歩くのを、
私は必死について行くので、やっとだった。
後遺症のせいで、
歩くのが困難になって、
ゆっくりじゃないと歩けないのだ。
それでも、
あの子が遠くに行ってしまう、
そんな焦りが、私を突き動かし、
足が勝手に、前へ、前へと、
無意識に急かしている事に、驚く。
どんな、リハビリよりも、効果的に、
足は勢いよく、動かされていたのだ。
息は、ぜーぜーと呼吸困難になっていたが…。
あの子に会えたからか、歩いたせいなのか、
胸の鼓動が激しく、私を苦しめまくる。
懐かしい景色が見えてきた。
あの子の家が近くなっていくのを教えてくれる。
とうとう、あの子の家に、着いてしまった…。
恐る恐る、玄関の前まで行くと、深呼吸する。
とてつもなく、緊張している自分がいる。
大丈夫、大丈夫、いつも通りにすれば、
いいんだから…落ち着けオレ…と念じる。
あの子が、祖父母を呼ぶ声が響く。
久しぶりに会う、あの子の祖父母は、
とても嬉しそうに、私を抱きしめてくれた。
何も言わなくても、うん、うん、と、
感慨深くうなずき、あの子の所へと誘導した。
いつぐらいぶりだろうか、
あの子の部屋に入るのは…。
もうずいぶんと前であり、
あの子の部屋は想像してたより、
大人っぽい雰囲気の落ち着いた部屋で、
あの子の成長の早さに感動を覚えたのだ。
あの子がいない。
異空間の中、私は色んな思い出に浸ってた。
とある場所で、衝撃的な物と再来する。
あの子のいないうちに、写真に収めた。
何してんだよ!
あんた、盗撮してんじゃねーよ!
ついに、頭もおかしくなったのかよ!
…すまん…これは…違うんだ。
ただ、どうしてもこれをお守りとして、
残したかったんだ…だって、お前の部屋、
ずっと前に入った以来で、嬉しくて…。
どうしても、忘れたくなかったんだよ…。
ふーん。ま、別に撮られてマズイもんないし、
好きなだけ、撮ればいいんじゃない?
ほら、初詣で買ったんだ、やるよ。
そこには、健康御守と書いてあるお守り。
お前…これオレの為に買ったの?
いや、じいちゃん達のついでだし。
別に、深い意味なんてねーよ!
こいつ…照れてんな。
正直になれない所が、お前らしい…。
帰ったら、多分泣くな…オレ。
…ありがとよ、ついででも嬉しいさ。
お前…大きくなったな…ニキビっつらも、
だいぶ落ち着いてきたし、顔つきが…、
お前のかあちゃんそっくりになってきたな。
そうしみじみと独り言の様に呟いた。
あの子は、
なんだよ、それ。
いつまでも、子どもな訳ねーじゃん。
しけた話すんじゃねーよ!
とりあえず、用事は済んだし、帰って。
言ったろ?忙しいんだわ!
…そうだったな!悪いな!おいとまするわ。
お守りありがとな、そんじゃ…。
またな!とか、また来るわ!とか、
言いたかったが、言えずにそのまま帰った。
家に帰るとすぐに布団で寝込んだ。
それほど、私には刺激が強すぎたのだ。
祈る気持ちで貰ったお守りを握りしめて、
私は、泣きながら寝入っていた。
あと一枚の盗撮した写真。
あの子の部屋で見つけた衝撃的なモノである。
まさか、あの天使が?
急に鳥肌が立った。
この日は天使の命日だ…。
あれから、もう一年になるんだな…。
もしかしたら、天使が会いに来てくれた?
あの可愛らしい笑顔を思い出した。
キラキラして、まばゆい天使そのもの。
天使よ…ありがとうな。
それは突然にキラキラと現れて、
写真と同じあの、ポケモン図鑑と、
自由帳を渡されて、なぜか、わざとか、
難しいポケモンを私に描けと命じたんだ。
なんとなく、そう天使は私に使命を与えた。
今こうして、文字にすると、命じるとか、
使命とか、命日とか漢字が「命」なんだな…。
生きるこの命を、大切にしていきたいな。
私の中で、
天使は、ひらひら舞い降りる、
可愛らしい、雪の妖精になったのだ。
大寒波だったけど、あれ天使の仕業か?
相変わらず、私を振り回してくるとは…。
ポケモン図鑑、
懐かしくて、忘れたくなくて、
思わずこっそりと写真撮ってしまったよ。
見つかって、盗撮になってしまったが…。
これも、私のお守りにしとく事にしよう。
天使よ…もしかして…あのポケモン図鑑、
次、あの子に会う機会として、私の視線を、
そこに仕向けたのか?
それとも…またポケモンを、書けと言う、
またもや試練を、私に伝えたかったのか?
また、なんとなく私の前に現れたのか?
不思議だな、あの子も天使も。
運命的な、再来にこんな繋がりを感じて、
巡りめぐって、こんな事が起こり得るなんて。
感謝しかない…ありがとう。
本当に、ありがとう…泣けてくるよ。
私は…なんて幸せ者なんだろうか…。
ん?写真よく見たら…
ユーチューバー教室って…。
あの子はやけに、
忙しいって言ってだけど…。
もしや?いったい何を目指してるんだ?
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