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障害物競走…2巡目

彼をやっと部屋に入れた所で、
まだ何かをうったえてくる。
なんだ?なにがしたいんだ?
と聞くと何か叫んでる。
ん?待てよ今なんとなく聞こえた。

「ざやく」

お前もしかして座薬?コクリ。
マジがよ…。どこにあるんだ?
彼は目で場所を教えてくる。
私はその目線の先に行っては
ここか?ここ?どこ?
とかなりの時間を使い、
なんとか見つけた。

イチヂク浣腸 

なんだよ、カンチョーじゃないかよ!と
叫ぶと雄叫びの笑いが止まらなかった。
しゃーないな。待てよ。
トイレでするの?んーと口を閉める。
ここでか?ここでするのか?
ニヤァと笑いコクリとうなずく。
わかったよ。その代わり、
ゼッテー漏らすなよ!
と念を押し、浣腸をする。

笑うなよ、笑ったら漏らす。
と彼を脅して時を待つ。
彼から冷や汗がではじめた。
そろそろか?コクリ。

静かに彼をトイレに連れて行き座らせる。
終わったら呼べよ。とドアを閉めた。
しばらくすると叫び声が聞こえた。
ドアを開け、終わったか?コクリ。
よし、拭いてやるから待てよ。

行くとコロコロの物体。
拭いても何もつかない。
お前大変だな。ちょー便秘じゃん。
よだれで水分取られてるのか?そう言うと、
雄叫び笑いをし、コクリとうなずいた。

そしてまた何か叫んでる。
ん?なんだ?もう一回言って。
彼はまた何かを話してる。

…風呂か?コクリ。
風呂入りたいんだな。コクリ。

わかったよ。その代わりだ、
一緒に入ってもいいか?
ずっと風呂入ってねーんだわ。
するとテンション上げてコクリとうなずく。

久しぶりの風呂である。
まずは彼を洗い、風呂に入れる。
あらかじめ風呂のお湯は少なく入れてる。

そして、私も皮膚が剥がれるんじゃない?
ってぐらいゴシゴシと体と頭を洗った。
そして、一緒に風呂に入る。
気持ちいいな!コクリ。
ありがとな。すんげースッキリだ。コクリ。
しばらく笑い合って、風呂を楽しんだ。

それから、バスタオルで彼を包み、
自分の体を拭いてから、彼の体を拭く。
そうだ!薬だ!待てよ持ってくるから。
カバンから今日貰ってきた塗り薬を持って、
彼のいる脱衣所まで行き、
彼の下半身をまんべんなく塗る。
しかし、ひどいただれようだ…。
痒くないのか?と聞くと、
明らかにかゆいんだーと言っていた。

よし!完璧だ!着替えどこだ?
風呂に入る前に聞けば良かったと後悔。
すっぽんぽんの彼を連れて行き、
ここか?ちがうな…。ここか?どこだ!
とかなり手間取った。

なんとか着替えさせ、もう寝る時間だぞ。
と言うとまた何か叫んでる。
なんだよ。…くすり?コクリ。
あー飲み薬もあったな。待てよ。
と飲み薬とコップに水を入れて持っていく。
もう慣れた手つきで薬をのます。

布団ひくぞ。コクリ。
よしこれで完璧だ!どうだ?コクリ。
じゃぁ寝ろ!と言うと目で何か言いたげ。
どうした?そしたら何か言っている。

…お前泊まってけって言ってる?コクリ。
…いいのか?コクリ。 

お前なんでそんな事出来んだよ。
つい何時間前まで知らないヤツだぞ。
どうしてだ?わかんねーよ…。
いつの間にか泣いていた。

彼と出会い、飯に風呂にそして寝る場まで、
彼の優しさに涙が止まらなかった。
そしたら、彼が笑いながら叫ぶ。

「おたがいさま」

確かにだ、彼の為に何かしら、
助けてやったかもしれない。
だからって、こっちまで助けてもらうとは。

お前、すんげーいいヤツだな!
お前、すげーよ!ホントーにすげー。
涙を拭いて、じゃぁ隣で寝かせてもらうぞ!
と言うと、彼は押し入れに目をやる。

まさかだが…布団使えって事?コクリ。 
バカだ!お前はバカ!優し過ぎる!
そうつっこむと、雄叫び笑いが止まらない。

言葉に甘え、久しぶりの布団に入る。
なんて寝心地がいいんだー!と叫ぶ。
お前、明日は何時に起きるんだ?
そう聞いてみたが、もう寝てる…。 

コイツは本当に無防備すぎるだろ!

と言いつつ睡魔に負けて眠ってしまった。
こんなに熟睡したのはいつぶりだ?

寝起きは彼の雄叫びとダイブで起こされる。
すまん、すまん。つい寝入ってしまった。
彼は怒ってたかと思えば、笑っていた。

さぁ、朝飯食べるか?コクリ。
何食べるんだ?冷蔵庫開けるぞ。コクリ。
そこには意外にも沢山の食べ物があった。

お前、この食材どうしたんだ?
彼は構わず、何か叫んでる。
昨日一日でだいぶ、彼の言いたい事の
半分はわかってきた気がする。

…バナナだろ!コクリ。

あとは?…牛乳だ!コクリ。

やったぜ。今んところ全問クリア。
彼にバナナと牛乳を飲ませた。
彼は目でお前も食えと言っていた。
昨日腹一杯食いすぎてパスするわ。
そう言うと、雄叫び笑いをしてコクリ。

そして、しばらく色々彼と話した。
彼は、専属のヘルパーさんがいたとの事。
それは、数人いたそうだ。

だが、金盗まれたり、時間になっても、
来なかったり、知らない所に置いてかれたり、
サンドバッグのように、ずっと殴られたり、
本当にいいように使われたらしい。

だから、思い切ってヘルパーを派遣してる、 
会社に乗り込んだらしい。
そんでヘルパーを辞めさせた。

だけど、誰かに頼らないと何も出来ない。
何度か公園で私を見てたらしい。
そこで、私に白羽の矢が刺さった。
そんな話をたどたどしくだが、聞いた。

そっか、お前も大変だったな。
相当苦労しただろ…お疲れさん。
謎だったんだが、なんで声かけたんだ?
そう聞くと、

「おれとおなじだとおもったから」

なんだそれ?と言うと雄叫び笑いをして、
真顔になり、何か言っている。

「これからいっしょにたすけあおう」

そう言うではないか。
おいおい、それ本気か?いいのか?
そう聞くとテンション上げて笑ってコクリ。

お前の本気、受けてやるよ。
じゃぁ、これからよろしくな。
ニヤァと笑いコクリとうなずく。

そうとなれば…掃除するぞ!
お前はそこで寝転んでろ。
と洗濯に掃除をする。

スッキリしたな。コクリ。
どこか行くか?コクリ。
おーどこ行きたい?

「おまえのふくかう」

えっ!そんなに臭かったか?
すまんな…。でもいいのか?
なるべく安いのにするな。
彼は雄叫び笑いをずっとしている。

新品な服一式を買ってもらい。
これはかしを作ったな。
これから、このかしは返すからな。
ニヤァと笑いコクリ。

それから、彼の手となり足となり、
仲良く過ごしていた。
彼の助言で役所に行って手続きしたら、
介助料として結構なお金がもらえた。

遊園地とやらに行った事ないんだ。
とポツリともらすと、彼は、

「おれもいっことない」

じゃぁ、行ってみるか!と言うと、
ハイテンションで喜んでいた。

次の日、彼と電車に乗った。
障害者割引があるらしく半額だ。
なんと同乗者も半額になった。
まぁ、二人で一人前だもんな。と言うと、
雄叫び笑いをし、何度もコクリとうなずく。

遊園地も同じだった。二人で一人分。
まぁ、乗れる物もかぎられてるしな。
気分だけでも楽しもうぜ!
と笑い合い、すごく楽しんだ。
帰ってきても興奮がおさまらない。
遊園地ってこんなに面白いんだな!
彼も同じくハイテンションでうなずく。

海水浴だって二人とも初めて行った。
楽しく、幸せな時間だった。

それは突然訪れた。

彼は電動車椅子でフラフラ出かけた。
多分だが…あそこだろう。
また性病うつされなければいいが…。
ま、そうなればまた病院連れて行って、
帰りにあの居酒屋に行こう。

フラフラと彼は帰ってきて。
私も慣れた手つきで充電させ、
家に彼を入れて、今日の出来事を話した。

すると一人の男の人がやってきた。
それは、障害者福祉施設の人だった。
役所に報告があったらしい。
それで役所が事実確認の為、
その男を送り込んできた。

私が障害者を利用して、
たぶらかし、金をむしり取っている。
そう報告されてると言う。

彼はすごく怒っていた。

でも彼の思いは届かない。
赤の他人が障害者と一緒に住んでる。
それは、何か隠してないか?
と疑ってかかってくる。

いまいち理解出来ない。
何が悪いんだ?
名目としては、利用者と介助者だが、
彼と私はそれ以上の絆がある。
それがいけないのか?

決して彼のお金を盗んだり、
勝手に使ったりしないし、
何よりも、彼は私を助けてくれた恩人だ。
年上だから、尊敬し、尊重してきた。
彼の嫌がる事は何一つしていない。

それなのに、なんでだよ。
彼も同じ事を叫んでいる。
だが、その男には通じてはいない。

その福祉施設に入る事を勧めてくる。
彼の言葉なんて聞かずに、
勝手に決めつけて、彼を連れていこうと、
話を進めてくる。

待ってくれ!お願いだから待ってくれよ!

男は私に警察に電話するぞと脅す。

違うって!勘違いしてますよ!

何を言っても男は疑って彼をかばう。
彼は男に怒ってるのに、さも彼が
私を怒っていると解釈する。

頼む、連れて行かないでくれ…。
男は外で待っていたであろう施設職員を、
呼び彼の荷物をまとめはじめる。

何やってんだよ!やめろよ!やめろって!
と私が叫んだ所で、何も聞いてくれない。

そのまま、彼は連れていかれた…。

男がそれでは…と言うやいなや、
おいお前、名刺出せよ!
その福祉施設とやらのパンフレットよこせ!
絶対に連れ戻してやるからな!
こんなの間違ってる!

男は名刺とパンフレットを置いて行った。

あれ?部屋こんなに広かったっけ?
こんなに静かだっけ?
なんでだ…どうしてだ…涙が止まらないよ。
彼の雄叫び笑いに、
どれだけ私は助けられていたのだろう…。
彼の優しさに、
どれだけ私は甘えていたのだろう…。

ただ泣きながら、時間だけ過ぎていく…。


すみません…続きはいつか書きます。
ちょっと書いてるうちに、
思い出して、辛い気持ちになって、
当時の事、まだ消化できてないみたいです。
いつか、書ける日が来たら書きます。
本当に申し訳ありません…。

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