救急車。
このお話は、
できれば墓場まで、持っていきたい話。
でも、もう残りわずかな人生、
惜しげもなく記事にしてしまおう。
私は、救急車に10回以上乗っている。
そのうち4回ぐらいは、交通事故である。
おこしたのが1回で、もらったのが、3回。
その度に、生かされてるのだと感じ、
ご先祖様に、助けられてるのだと実感する。
ある時は、恋人に包丁で刺され、
自力で、公衆電話で救急車を呼んで、
頑なに、自殺が失敗したと言い張った。
ある時は、私の部屋で、
親友が首吊って死んでるのを、
目の前にして、慌てて救急車を呼んだけど、
後々、来たのは警察の方々だった。
そして、かあちゃんの最期も、
救急車を呼んで、運んでもらった。
後は、だいたい持病の病気が悪化して、
周りの人に、呼んでもらって運ばれている。
その節は、ありがとうございます。
その中で、初めて乗った救急車。
それは、小学校4年生の時である。
友達の家で遊んでいた時。
急に腹痛でジタバタと、のたうち回った。
脂汗が出で、息をするのも苦しくて辛く、
子ども心からしたら、もう重い病気だと、
思い込んで悲観していた。
友達の親が救急車を呼んだ。
そのまま担架に乗せられて、救急車に乗る。
お腹が痛くて、泣きながら、病院に向かう。
そして、運ばれて、病院の先生に診てもらう。
…便秘ですね。
浣腸しましょう。
えっ!やだ!恥ずかしい!
そう言えば…しばらくでてなかった…。
こんな、大げさに、友達家族を巻き込んで、
救急車まで、呼んでもらって、運ばれて、
結果…便秘だなんて…。
オイラ…学校行きたくない…。
看護師さんが、何の迷いもなく、
浣腸をぶっ刺してきた。
しばらく辛いかもしれないけど、待ってね。
そう軽く言って、いなくなった。
うおー!腹が痛いよー!もう…漏らしそう。
落ち着け、落ち着け…ぬぉー待てないよ…。
って、トイレどこだよ!知らねーよ!
漏らしちゃうよ…これはもう地獄だ…。
絶対に漏らしてたまるか!くそー!
お尻の筋肉を力いっぱい集中して、しめる。
歩けない…歩くと…わぁーヤバい…。
トイレ…トイレ…トイレはどこですか…。
なんとか、トイレに入り、
お尻の筋肉をゆっくりほぐすと、
すっきり!これでもかってぐらい!
お腹がぐわんぐわんと動くのがわかる。
トイレ…詰まったらどうしよう…。
恐る恐る、流すと勢いよく流れてった。
はぁ…助かった。
やっと自由になれた…。
やれやれ、便秘って怖いな…。
こんな痛い思いしなきゃいけないなんて…。
そんな事考えてると、かあちゃんが来た。
しかも、事情も知らない様子で焦っている。
私は、慌ててる、かあちゃんに、
オイラ…ただの便秘だった…。
心配かけて…ごめんなさい。
さっき、トイレで出してきた。
だから、もう大丈夫だよ。
かあちゃんは、安心したかと思えば、
ゲンコツをくらわす。
お前!どれだけ迷惑かけたと思ってんだ!
その友達の両親が家に来て、なんか慌てて、
救急車で運ばれたって、伝えてきたんだよ!
そんな便秘ぐらいで、救急車なんて、
気軽に乗るもんじゃないんだよ!
かあちゃんは、恥ずかしいよ!もう!
と、何度も殴ってくる。
頭のかたちが、ボコボコになった。
ごめんなさい…。
オイラ…本当に辛かったんだもん。
でも、友達家族に迷惑かけちゃった…。
こんなの、初めてで便秘って怖いよ…。
そんな、私の落ち込み具合を見て、
かあちゃんは、腹を抱えて、大笑い。
ヒーヒー言いながら、吹き出して笑う。
なんだよ!かあちゃん!
オイラだって、恥ずかしいんだ!
そんなに、笑う事ないじゃないか!
かあちゃんは、
お前、大変だったね、あー良かった。
かあちゃんお前の元気な顔見れて、
本当に安心したよ…でも便秘だなんて…。
ごめんよ…ぷっ!あはははは!
あー面白いね…良かった、良かった。
かあちゃんの安心した顔をみて、
大笑いして涙ぐむ姿に、助けられた。
さぁ、帰ろうか!
あっ!オイラ…靴がない…。
友達の家に置いてきた…。
やってしまった…はぁ…。
すると、かあちゃんは、しゃがんで、
ほら、おんぶしてやるよ!
もぉ…嫌だ…まだ恥ずかしい事が待ってた…。
かあちゃんにおんぶしてもらうなんて…
どんだけ恥ずかしいんだよ…。
でも、仕方ない…受け入れるしかない。
もう、これ以上の恥はない。
かあちゃんにおんぶされて、帰った。
家に着くと、
かあちゃんは、嬉しそうに、
お前を、おんぶするなんて、何年振りだ?
お前、ずいぶん重たくなったもんだねー!
いつの間に、
こんなに大きくなって…。
かあちゃん…なんだか…わかんないけど…
嬉しいやら寂しいやらなんか…複雑だよ…。
そう言うと、
今日は本当に疲れたよ…お前のせいだ!
お腹空いたから、なんか作っておくれ!
あれだよ!便秘にならない様にしなよ!
あれ…食物繊維?あれ!とりなよ!
私は、
わかってるよ!もうこりごりだよ!
オイラも気をつけて料理するから、
かあちゃん、わがまま言わないでよ!
かあちゃんは、野菜嫌いだけど、
これからは、たくさん野菜入れるよ!
そう言うと、野菜炒めを作った。
かあちゃんは、こっそり人参を、
私の皿に移している…。
かあちゃん!ダメだよ!
人参だって、体にいいんだから!
オイラみたいに、救急車で運ばれるよ!
かあちゃんは、
なんだい!人参くらいなくても死なないよ!
かあちゃんは、人参だけは、嫌いなんだ!
お前が、食べないとダメなんだよ!
ほら、人参たくさん食べな!
都合よく、人参食べようとしない。
ズルい、かあちゃん…無理矢理すぎる。
かあちゃんには、負けるよ…。
はいはい…人参たくさん食べます。
次の日、友達が来て靴を持ってきてくれた。
心配そうに、大丈夫か?と聞いてきたので、
おう!ただの便秘だった!悪いな!
迷惑かけちまったな!笑ってもいいぞ!
もう、恥ずかしい通り越したわ!
と、友達と大笑いした。
菓子折りを持って、改めて友達の家に行った。
ご両親に、ご迷惑をおかけしてすみません…。
救急車を呼んで頂き、母にも伝えていただき、
本当に、ありがとうございました。
無事にお腹に詰まってたモノを出せました。
これ、
つまらないモノですが、受け取ってください。
お騒がせしてしまい、恥ずかしい限りです。
ご両親は、友達から事情は聞いていた様だ。
もぉーホント!便秘だって?
良かったじゃない!
大きな病気かと思ったわよ!
ねぇ…あなた。
おー!まぁ…大変だったな!
恥じる事じゃないし、良かったじゃないか!
安心したよ!うちの子もすごく心配して、
お前の靴、握ってたんだぞ!
また、遊びにこい!
トイレも自由に使ってくれ!
はい…その時はトイレお借りします…。
そう言うと、ご両親とも大笑いして、
晴れ晴れした気分で、帰った。
救急車の人達…こんなくだらない理由で、
大切な救急車を利用してしまい、すみません。
あの時は、本当に死ぬかと思いました。
まさか…便秘だなんて…お恥ずかしい。
いつも、迅速な対応をしていただき、
とても感謝してます。
ありがとうございました!
あー。
こんな恥ずかしい出来事…晒してしまった。