映像を喚起する力、情景を描写する力 くるり×クラウド・ルー(盧廣仲)
NHK-FM くるり電波 2017年8月29日(火)放送分ラジオ書き起こし
第3回「くるりの世界音楽家図鑑」※ゲストコーナーのみ書き起こし
ゲスト:クラウド・ルー(盧廣仲)
岸田(以下・岸):続いてはこちらのコーナーです。
~Jingle~
岸:はい、このコーナーはですね、くるりがその時々に気になったり、ふと思い出したり、あらためてじっくり聴いてみたい、そんなアーティストを一組選びまして、曲を紹介しつつですね、その音楽家についてじっくり語るコーナーでございます。題して、「くるりの世界音楽家図鑑」。
佐藤(以下・マ):なるほど。
岸:いままで二回ありましたけれど、前回は佐藤くんがイギリスのバンド「RIDE」を持ってきてくれたんですけれど、3回目の今月はですね、ファンファンが選んでくれました。
ファンファン(以下・FF):はい、選びました。二ヶ月前くらいにこの番組でも一度紹介させてもらったんですけど、台湾のシンガーソングライターのクラウド・ルーさん。
岸:クラウド・ルーさん。
FF:はい。
岸:が、ですね、なぜかですね、
FF:おお!?
岸:このスタジオにですね、来てくれております。
(台湾語で挨拶しながらクラウド・ルー氏登場)
一同:ようこそー!!(拍手)
マ:くるり電波史上初めてのゲスト!
岸:そうなんです。
一同:よろしくお願いします!
岸:ちなみにですね、クラウド・ルーさんのプロフィールの方をちょっと紹介したいと思うんですけれども、1985年台南生まれ。大学一年の時に交通事故にあって入院中に独学でギターを始められた、と。退院の翌年、大学の音楽コンテストで優勝したことを皮切りに、2009年台湾のグラミー賞とも言われる「第20回金曲奨」というグランプリがありまして、その最優秀新人賞および最優秀作曲賞を受賞。日々の生活からふと感じたことを純粋かつシンプルに表現する音楽スタイルで、台湾や日本をはじめ、アジア各国で人気を誇るシンガーソングライターです。
そんなクラウド・ルーさんの5枚目の新しいアルバムが出たということで、この『What a Folk!!!!!!』というアルバムからですね、ファンファンが好きな曲を。
FF:はい、クラウド・ルーさんで『一坪半』。
~『一坪半~4.95m² Dream~』(5thアルバム『What a Folk!!!!!!』より)~
岸:台湾の出身のシンガーソングライター、クラウド・ルーさんの『一坪半』という曲をお送りいたしました。今日はですねそのクラウド・ルーさんにゲストで来ていただいております。あのちょっといくつか質問してもいいですか。せっかく来ていただいたのに、なんか初対面で質問攻めにするっていうのも・・・。(一同笑)
マ:けど、ラジオってそういうもんですよね。(笑)
岸:そう、ラジオってそういうもんなんで。(笑) お願いします。
クラウド・ルー(以下・盧):全然問題ないです。
岸田:二十歳くらいからギターを始められたということなんですが。
盧:18歳です。一回大きな事故に遭いまして、その時に足を怪我しまして、そのときに中古のギターをネットから購入して、その時に動けないので病院で弾きながら(始めました)。
マ:上半身は全然問題なく動かせた?
盧:そうです。
岸:あの、音楽はもともと好きだったんですか?
盧:小さい時から音楽がすごい好きなんですけど、まさか歌手になれるとは小さいときにまったく思ってなかったです。
岸:聴くのが好きで、自分で曲を作ったりとかってことはなかったんでしょうか。
盧:小さい時から音楽は好きですけれども、一切作曲をしようという考えはまったくなかったです。
岸:ギターを持って弾くようになってから、その自分が曲を作れるんじゃないかってことに気付いた感じですか?
盧:そのときに、友達の何人かは結構もう自分で曲を作ってたりしている友人がいたので、そのときにあんまりにもギターを一生懸命勉強してずっと弾き続けていたから、「じゃあもう少し自分のライフスタイルを表すようなものを自分で書いてみたら」っていう風にアドバイスされて書いてみることに。
岸:じゃあ、ギターを弾き始めて、ギターがすごく好きになって、結構さっきの曲とかもいい音してましたけれども、ギターが大好きなんですか?
盧:本当にすっごいギターが大好きなんですけども、一番最初にギターを手にしてコードをポロンと弾いた瞬間に、自分でも驚くぐらい、地震が起きたんじゃないかっていうくらい、自分の中では大きな驚きがあったんですよ。
岸:一緒。一緒。(笑)
マ:最初からそのアコースティックギターだったんですか?
盧:一番最初はもうアコギでした。
マ:なるほど。
岸:いまの曲をね、この『一坪半』という曲を聴かせていただいて、ちょっといま訳された歌詞を読みながら聴いて、もちろんその言葉は訳された言葉ですから訳されたものとして入って来ますけれど、まず僕の中に入って来たのは、僕が台湾に数回行ったことが、台北じゃないんですけど、その台北(台湾)の、僕が歩いたときの、ちょっとした目に焼き付いている、写真のように焼き付いているですね、情景だとか、温度感、湿度っていうのがバッと伝わってきたんですよね。特段、その音楽的にとても台湾の人が作った、すごく台湾っぽい音楽かっていうとそうでもない。
いろんな、どんな音楽から影響を受けたかとかは後で聞こうと思っているんですけれども、その音楽を作るときにとても素直に表現されていると思うんですけど、何を一番大切に、その曲を作るとき、表現するときに、していらっしゃるのかなっていうのを(聞きたいです)。
盧:毎回曲を作曲するときに、まず自分に対して、自分の感覚が感動するかどうか、というのをとても大事にしていて。時には書きながら、歌いながら、自分で涙を流してしまうぐらいのときもあるんですね。
マ:曲と歌詞っていうのは同時進行で書かれたりするんですか?
盧:もともと小さい時から音楽は好きなんですけれども、よくよく気付いたら歌詞ってそんなに聴いてなかったっていうのが自分でも思っていて、なので作曲に関しても、やっぱりメロディが先行して、メロディから先に作るっていうのが(多いです)。
岸田:一緒(笑)
マ:やたらと共感しているところ多いみたいですね(笑)
岸:一緒、一緒。そうなんですね。僕が言いたかったのは、まずこの『一坪半』という曲を聴いてまず映像を感じるというんですかね。映像を喚起する力とか、情景を描写する力。というのがもう全体の音楽の雰囲気、音だったり、歌の感じだったりとかそういうもので(表現されていて)、すごく描いているものが素敵だな、と思いました。
盧:自分自身はですね、歌が下手だと思ってるんですね。上手ではないと思っているんですけれども、だからこそ、歌っている時の感情とか、口調とか発音に関してはすごく勉強して、研究はしているので、いま岸田さんに言っていただいたようにそういう風に描写とかを見ていただけるってことは、少しでも自分の勉強が役に立っているかな、成功したかなという風に思います。
マ:今回のアルバムのタイトルが『What a Folk!!!!!!』っていうことで、わりとその全体アルバムを通してやっぱりアコースティックな響きであったりとか、アコースティックギターをメインに他のバンドの音数も少なめで、やっぱり歌を前面に押し出した作品やと思うんですけど、そういう作品を作りたいという意図っていうのはあったんですか?
盧:もう、まさにその通りで、やっぱりアコースティックギターを全面的に出したいというのは(自分の意図です)。自分からして見れば、僕からしてみれば、音楽というのは複雑なものは一切いらなくて、ただ音楽と歌、歌詞があれば(それでいい)。だから、それこそアコースティックギターを使いながら、自分が語りたい物語をいかに簡単に皆さんにお伝えできればと思ってこのアルバムを作りました。
マ:以前、数か月前にファンファンがかけてくれた音楽、違うアルバムの曲やと思うんですけれど、それを聴いたときに全然もっと違う感覚っていうんですかね、違う音楽をやりたいアーティストなのかなって思ってたのが、今回のアルバムを聴いて、(クラウド・ルーさんが)「本当に歌を歌いたい人」なんだという風に(イメージが)変わりました。
盧:謝々。
マ:謝々。
岸:いっぱい聞きたいことはあるんですけど、もう一曲とりあえず曲を聴いてもらいたいと思うんですけども、クラウド・ルーさんの方からちょっと曲紹介をしていただきたいと思います。台湾の言葉で曲紹介をしてください。
盧:今からお送りする曲は、『今日はここで眠ろう』という曲になるんですけれども、この曲を作ったときは、まだ兵役に入っているときで、駅とかでホームレスがいっぱいいたときに、それを見て感じたものを曲にしたんですね。それは何かというと、やっぱりみんな誰もが例えば何かに迷ったとき方向性を間違ってしまって迷っているときには、心の中では家のないような、ホームレスのような状態になる、そういうようなことを歌った曲です。
~『今日はここで眠ろう』(5thアルバム『What a Folk!!!!!!』より)~
岸:お送りしたのは、台湾のシンガーソングライター、クラウド・ルーさんの『What a Folk!!!!!!』というアルバムの中から、『今日はここで眠ろう』という曲でございました。かっこいいね。
マ:ご機嫌でございますね。
岸:かっこいいね。バンドのサウンドもかっこいいですし、ミキシングもすごくモダンで、素敵だと思います。ちなみに、ファンファンは彼の音楽をはじめに聴いたときに、どういうところが好きになりましたか?
FF:私がやっぱり一番好きなのは、歌声ですね。もう一緒に、本人と一緒に曲を聴けてすっごい嬉しいです。なんかもう、こんなことすごいことだなって。(しみじみと)嬉しい~~!!
マ:台湾ではアリーナでライブをされてる方ですからね、本当に。
岸:やっぱり僕らもミュージシャンですけど、誰かのファンでもあるわけなんですよね。で、その人と一緒にヘッドフォンつけて聴いてるってなかなか面白いですね。
(一同笑)
盧:面白いですね。
FF:嬉しいです!
岸:あのちょっと音楽の話をいくつか聞きたいのですけども、もともとどういう音楽を聴いてバックグラウンドが形成されたのかということと、あと最近ハマっている音楽というか、すごく好きで聴いてる音楽について教えてください。
盧:小さい時は母とよく、母がよくラジオを聴いていたので、でそのラジオではいつも洋楽ばっかりを聴かされていたんですよ。かと言って、祖母とも一緒に住んでいたので、祖母は逆にテレビで、台湾語、中国語ではなくて、台湾語の番組とか音楽ばっかりをテレビで見ているので、なので小さい自分のバックグラウンドとしては、本当に生粋の台湾の音楽と、洋楽両方聴いていたんですけれども、いまはジャズとかあとはインストゥルメンタルとかそういうものを好んで聴いています。
マ:台湾で流れるラジオの洋楽っていうのは、やっぱりヨーロッパであったり、イギリス、アメリカの音楽がメインなんですかね?
盧:80年代のビルボードの・・・。
マ:ビルボード!そこには日本の音楽も流れたりすることはあるんですか?
盧:少ないです。その当時は、台湾で日本の音楽を聴くとしたら、ラジオとかではなくて、自分でレコード屋さんに行ってCDを探してこないとなかなか聴けなかったです。
岸:マニア向けのものだったということですね。
盧:そうですね。なので、聴いてる人が少ないという。
岸:ちなみにその話でちょっと聞いてみたいのは、率直に日本の音楽を聴いたときに、どういう特徴を感じられるかっていうのはあったりしますか?
盧:先ほどもお話したんですけれども、自分は歌詞ではなくてメロディが先行してくるので、なので日本の音楽を聴く時も、やっぱりメロディが先に入ってきて、日本で好きなアーティストは、坂本龍一さんなんですね。
岸:そうですか、そうですか。ちょっと似ているかもしれないですね。
なるほど。これからいっぱい彼の音楽というのを僕もまだそんなに知らな いので、いっぱい聴いていこうと思っております。ファンファンは日本で一番のクラウド・ルーファンやと僕は思っているんですが、彼に何か聞いておきたいことはありますか。
FF:あの何度か、いままで日本にライブに来られたと思うんですけれど、日本で一番美味しかった食べ物を教えてください(照)。ミーハーな質問ですみません。
(一同笑)
盧:日本料理が本当に大好きで、台湾にいるにもかかわらずおいしい日本料理屋さんを探していくんですね。寿司が大好きです。
FF:台北にもありますか?日本料理屋さん。
盧:あることはあるんですけど、やっぱり日本の方がおいしいです。
FF:へー!
岸:ちなみにこれは愚問ですけれども、日本で台湾料理屋に行くことはありますか?(笑)
盧:(爆笑)絶対ない。
(一同爆笑)
マ:長く行ってたらね、自分らも海外で日本食屋さん行ったりするんですけど、さすがに行かないですよね。(笑)
岸:あの日本でですね、ライブをやられたりとかすることとかがこれからも増えていくことを願ってですね、ぜひぜひ僕らのライブにも遊びに来たりとかしてください。
盧:ぜひぜひ!!
マ:お互い日本でね、こう対バン形式でやって、台湾で対バン形式でやるっていうのも嬉しいですよね!
盧:(日本語で)ゼヒゼヒ!!
岸:ということですね、今夜の「くるりの世界音楽家図鑑」。台湾のシンガーソングライター、クラウド・ルーさんを紹介いたしました。それでは最後にもう一曲聴いていただきたいと思うので、最後に曲紹介の方お願いいたします。
盧:今からご紹介する曲はですね、『いつも信じて』になるんですけれども、日本語バージョンを今回特別に収録しました。で、この曲は川島小鳥さんに撮っていただいたPVになるんですけれど、そのPVに関しては台北から台南まで歩いて、11日かけて自ら歩いて台南まで、
マ:43万歩とか言ってましたね。
盧:歩いてそのPVを撮ったんですけども、この曲で皆さんに伝えたいのは「勇気」でありますので、ぜひ聴いてください。
『自分を信じて』(一定要相信自己 日本語バージョン)
自分を信じて ひとりぼっちでも 自分を信じて
あなたを信じて 大丈夫だよって いつも信じて
さよなら 今日の日 少し眠ろう
目覚めれば ほら 美しい
昨日の悲しみ いつか癒えてく
嵐の中でも 僕らは進もう
歌うよ 君にこの歌を
さよなら 今日の日 少し眠ろう
目覚めれば ほら美しい
昨日の悲しみ いつか癒えてく
明日は美しい
未来は美しい
岸:お送りしたのは、台湾のシンガーソングライター、クラウド・ルーさんの『自分を信じなきゃ』という曲の日本語のバージョンで『いつも信じて』という曲でした。歌詞は川島小鳥さんが書いてらっしゃる、という感じですね。
今日はクラウド・ルーさんに来ていただきました。初ゲストです。ありがとうございました。
FF:ありがとうございました!!
盧:謝々!!
マ:また遊びに来てください。
盧:はーい!謝々。
~Jingle~
岸:はい、ということでですね。クラウド・ルーさんは夜の街へ・・・出かけたんでしょうか。
マ:笑顔の素敵な、かわいらしい方でしたね。お寿司が好きで。(笑)
FF:嬉しかった、会えて。
岸:日本では台湾料理は食べない、と。
FF:(笑)
マ:そら、日本で小籠包食べないですよね(笑)
岸:そうですよね(笑)。僕らも、例えばイタリア行ってね、牛丼とか食べないですよね、たぶん。
マ:一月いたら食べたくなってくるんですけどね。
ちなみにジャケットとかにも載ってる特徴的なメガネは、日本で購入され たものらしいです。
FF:あっ、そうなんですか。
マ:日本でハンドメイドのものを購入されたみたいなんで、興味がある方はぜひ調べてみてください(笑)。