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ネットストーカーの話(実話)

 今回は創作ではなく、私・しんたが実際に体験したお話です。
 中高生、それから若い方などがネットで犯罪やストーカーなどの被害にあった、という話をテレビで観たり、新聞やネットニュースで読んだりする度、自分の体験を思い出したので「それならばいっそ、文章化してみてはどうか」と考えて書く事にしました。
 ネット上には常識が通じない人間が大勢います。
 どうか、これを読んだ人たちが一人でも多くネット上のトラブルを避けられますように。

 一、出会い

 LINEのオープンチャットを始めたのは2022年の春頃、メンタルが限界だった時でした。
 あの時携帯を構っていてLINEのオープンチャット、という表示を見た時、なんだこれ、と思いつつ始めてみました。始めてみて、なるほど、と思ったのは、

・チャット形式なのでTwitterなんかと違ってリアルタイムで会話をしているように見える。
・部屋(個々のチャットの事をオープンチャット上ではこう言う)のメンバーによっては雰囲気が明るすぎたり、暗すぎたり、騒がしすぎたり、色々と違う。

 こういった事がTwitter勢の自分には新鮮に見えました。
 あの頃、義父の介護(というより監視)のためちょうど家にこもり続けていた自分にとっては程よい息抜きでした。
 そんなある日、オープンチャット上にも推理小説のチャットがあるのではないか、と考えて探したところ何件かヒットしました。そこで早速、賑わっているところに入ってみました。
 過疎が進んでいるチャットだと一日数件書き込みがあればいい方ですが、賑わっているところは一日百件近い書き込みがありました。
 その中で自分は「はじめまして」と挨拶をしたところ、あるユーザーが話しかけてきました。
「アイコン、パンテラですよね」
 推理小説のチャットでしたがそのユーザーは(仮にBさんとします)自分のアイコンがメタルバンド・パンテラだと気づいてくれたのです。
 Bさんとは色々と話をしました。最初はいい人だなあ、程度でした。
 ちなみにこのチャットを自分は一ヶ月ほどで退会しています。ホラーの話で三時間ほど盛り上がったところ、他のメンバーから「そういうのはホラー同好会とかでやってください」と言われて、「じゃあ皆さんの延々続く雑談はいいんですか? 黙ってましたけど、いい加減うるさいですよ」と言った事でバッチバチに炎上、「あははめんどくせ」となったからです。件のチャットは現在も運営中です。興味のある方は覗いてみるといいでしょう。私は嫌です。やかましいので。

 二、チャット運営

 様々なチャットを渡り歩きましたが、どうにも自分の身の丈にフィットするところがないな……と思っていたある日、思いつきました。
「自分でチャット作ってみればいいんじゃね?」
 調べてみると意外と簡単に作れました。
 ですがこの初めて作ったチャットは一ヶ月ほどで閉鎖します。メンバー間でもめ事が起きて話し合いの場を設けたのですが、解決せず「あははめんどくせ」となって削除ボタンをポチッとしたからです。
 この数ヶ月後、2022年の夏、私は「暇だしやってみっか」と新たなチャットを開始します。
 この時、初めてやってきたメンバーがBさんでした。
 その人はしばらくして自分があの時推理小説のチャットで出会ったパンテラアイコンである事に気づいて、自分もあの時のユーザーさんだと知りました。
 楽しくチャットをしよう、と思っていたところメンバーはみるみる増えていきました。とは言っても百人、二百人といった数ではなく二十人ちょいという数字でした。でも、それぐらいでよかったんです。無駄に数が多いとネタバレなどろくでもない事に繋がるので。あとやかましいので。
 Bさんも自分のオープンチャットを開設し、私の作ったチャットを「本部」と呼ぶようになりました。
 この時ちょうど、複数のチャットに書き込みをしていて、自分にとってのいわゆるオープンチャット全盛期でした。今思えばあの時引き返しておけばよかったのです。
 ちょうどこの時、私はBさんから相談を持ちかけられました。Bさんはプライベートスペースと称して複数のチャットを所持し、そこに僕も招待されました。ですが考えてみてください。広大な宇宙空間にたった二人の男しか入れない部屋があるのです。今でもあの時の事を考えると吐き気がします。一ヶ月ぐらい良く耐えた、当時の自分を自分で褒めてあげたいです。
 相談というのはあるミステリー小説のチャットで絡まれた、という話でした。この絡んで来た人をQさんとします。割愛するとQさんはネット上では女性を名乗りながら実は男、といういわばネカマだったのです。
 紆余曲折を経て、このQさんが私に絡んできました。発端は「××という作家の本を読んだ事がないのだけれど、読んだ事ある方いますか?」という書き込みに対し、「人の感想は個人のものでしかないので、あなたがまず本を手にとってそのまま読んでみればいいじゃないですか?」と言った事がきっかけでした。プライドを傷つけられたように感じたQさんは「私への無礼、謝りなさい」と突然言ってきました。

 私は「あー、ごめんなさいね~」ととりあえず謝りました。一度目は返信がなかったので、二度謝りました。するとBさんが、
「謝りすぎだ。しんたさんは俺のダチなので黙ってられないですね」と言ってきたのです。

 え? でした。
 私はこの人の事を友人と一度も思った事がなかったからです。

 ドン引きする私を尻目にBさんとQさんのレスバが始まりました。レスバ、というと高度な知性と磨かれたスキル、ウィットに富んだ論争……というものを連想する方は多いかもしれませんが、ここで行われたのは完全に子供でもやらない感情のぶつけ合い(大体、ネット上でのレスバは大体これです)。三十分から一時間ほど行われたと記憶しています。
 その後、Bさんは私と他のメンバーから説得されてそのチャットも退会しました。

 三、混沌
 この日を境に、私はBさんと距離を置こうと画策するようになりました。あの時のレスバにしろ、「ダチ」発言にしろ、関わってはいけない人間に関わってしまった、という後悔が大きかったのです。
 当時、Twitterのアカウントまで補足され、(同じ短評を載せていたので補足するのは簡単でした)彼は自分の事は一切発信せず、私のアカウントにだけリプライを送ってくるゼロ距離マザーファッカーでした。
 そしてある日、私の運営するチャットで回転寿司の話になりました。
 ある若いメンバーが、
「某回転寿司、マズイ」
 と言ったところ、他のメンバーが、
「え? 美味しいよ」「安さ重視の寿司屋なんだからしょうがない。でも、そんなにまずいかな」と言ったのです。
 若いメンバーはすぐに、
「こんなに某回転寿司のファンがいるとは知りませんでした。すみませんでした」
 とお詫びしてくれました。
 ここまではよかったのです。
 ですが、このあとBさんのチャットで、
「しんたさんの作ったチャットにいる人たちは繊細ですよね」
 と書き込み、これにBさんが反応し、
「真実突き付けても反発してくる」
 ここで流石に堪忍袋の緒が切れました。私ならともかく、なんでメンバーの事を悪く言われなきゃならないのか。
 私は自分のチャットからこの二名を強制退会、さらに彼の作った部屋からは退会、Twitterでも彼をブロックしたのです。
 チャットのメンバーたちには事情を説明し、「こういう事情で強制退会にした」と伝えて納得してもらいました。
 それから一ヶ月ほど経過したある日、22時頃、新参加のメンバーがやって来ました。アイコンはチェンソーマンのポチタ(だった気がする)でした。
 その日は挨拶だけにして、私は寝ました。
 ですが翌朝、チャットに書き込まれた文字を見て、頭を抱えました。
 そこにはこう書かれていました。

 自分は一ヶ月ほど前に強制退会になったBである。皆さんは推理小説がどうして好きですか? 私はフェアプレイの精神に溢れているからです(中略)。
 この部屋の運営者であるしんたはある事ない事書いて皆を騙している。(中略)こんな事許せますか。ちなみにこの部屋には自分のスパイがいて、お前のやりとりは筒抜けである。私は仕事の関係上(不動産、学習塾運営)、携帯電話を六つ持っている。これをブロックしてもあと五回は入れるので無駄である。

 彼はすでに退会したあとでしたが、私は念の為に再度退会処置を行いました。
 この時、私は思いました。
 あー、やっちまったよ。関わってはいけない人間に関わってしまった。ちなみに彼の書いた文章を読んだ知人はこう言いました。
「しんたの部屋で見られると困るようなやりとりやってるか? ないよね。小説と映画の話しかしてない。ちょっとアレな人なんじゃないだろうか」
 後日、私はスパイがいる、という彼の言葉を信じて「お二人に迷惑かけてごめんなさいね」という旨の書き込みをしました。二人がこれを読んだかどうかはわかりません。大体スパイだって、本当にいるかどうかわからない口からでまかせの可能性があるのです。
 さて、このあと私の運営するチャットは2023年の十一月まで運営しますが、この頃になると「もうよくね? 情報集めるならTwitterで事足りるし、チャット運営も大変なんだよ……」と思うようになります。

 四、地獄の釜が開く
 この当時、私はいくつかのチャットに参加して他ユーザーとやりとりを楽しんでいました。
 ですが、ある日別のチャットにこういう表示が出ました。
「タンジが入室しました」
 どっかで聞いたハンドルネームだな、と思いつつ、あとで気づきました。しんたを反対にすると「たんし」、それに濁点を加えると「タンジ」じゃないか、と。
 メンバーの写真を見に行くと頭を抱えました。
 私のノートのアイコンはご存知、アリス・イン・チェインズの二作目、『Dirt』です。そのアイコンと同じアイコンがいました。
 タンジのハンドルネームは何度か変わりました。
 ハンドルネームの変遷を記録すると、

 ①タンジ→②弥勒タンジ→③チビ!→チビ&ニート→子なしチビニート→④今夜も恐妻家(適応障害持ち)

 必死にTwitterの過去の書き込みを遡って私が嫌がりそうな言葉を選んで書いたんだろうな、というのがよくわかる苦労の結晶でした。しかもアイコンはその都度変わっていました。次行に変遷を記載。

 ①アリス・イン・チェインズ→②スレイヤー(1stアルバム)→③ダイナゼノンの南夢芽→④山本美月


ストーカーのハンドルネーム及びアイコン変遷履歴


 ①~③まではまあ、わかります。ただ④は首を捻りました。女性の髪型で一番好きなのはショートヘアというのを公言している私ですが、山本美月が好みかと言われると「いや、別に」だからです。たまたまショートヘアの女性で検索したところ山本美月さんが出て来たからこれにしとこ、という感じなんでしょうか。
 やはり友人が言うようにちょっとアレな人、なんでしょうね。私は彼に、「逐一ハンドルネーム変えて私に嫌がらせしてるみたいですけど辞めて下さい」と書いて投稿しました。それと同時に私は退会したのであとの事は知りません。
 ここに来て、私は思いました。
 もうオープンチャットに参加するのはやめよう、と。
 思い立ったが吉日、私はチャットのメンバーたちに部屋を閉じようと思う事を説明し、もし誰か代わりをやりたければやって下さい、名前を変えるなり、何なり好きにして下さい、と伝えて管理者権限を譲渡、運営方法を簡単に説明して退会しました。その日以降、オープンチャットには一つも参加していません。私が運営していたオープンチャットもどうなったのかは知りませんし、その後については好きにしろ、と言ったのでノータッチです。

 五、終わりに

 オープンチャットを一定期間やってみて思ったのはTwitterをはじめとするその他SNSに馴染めない人がオープンチャットをやるんだろうな、という印象でした。
 ここからは雑記になりますが、彼の一件を、ただ頭のおかしな人間に関わった不運な話、で済ますのは簡単です。

 ですが私にはいくつか、反省点があります。

 オープンチャットに参加している人大勢に言える事ですが、若い方、特に学生さんには次の事を伝えたいです。

 ①他の部屋の悪口を言わない、言うぐらいならさっさと抜けろ。
 ②Twitterなどの他SNSで絡まれた時、あるいはアカウントを補足された時は「あなたとはオープンチャットでの関係でいたいし、友人でも何でもない。ネット上での知人というだけ。深く関わってほしくない」というのを伝える事。それで離れて行く人はそこまでの人です。
 ③オープンチャットでレスバする暇があるならバイトしたり、部活に打ち込んだりして己を磨きましょう。
 ④「え?君、中学二年生?私も中学二年生だよ~」こういうやりとりは絶対信じるな。腹の出たキモイおっさんがおに☆に☆を握って涎を垂らしていない可能性がどこにあるのか。
 ⑤もしネット上で親しくなった人に「自分の部屋を作ったから来てほしい」と言われた時、抜ける時は必ず「チャットに参加しすぎて整理したくなったので抜けます。落ち着いたら戻ります」とでも言いましょう。嘘も方便です。

 いかがでしたでしょうか。
 Twitterにはいないちょっとアレな人はオープンチャット上であなた方を待ち構えています。
 時には同性のふりを、同い年のふりをして、手ぐすね引いて待ち構えています。
 チャットだけではなく、他SNSにもいます。
 変だな、と思ったらすぐに距離を置きましょう。
 以上、ありがとうございました。

☆ オープンチャットの開始年に誤りがあったので訂正しました。

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