恵方巻
「今年の恵方は 南南東 です」 と書かれた紙を、どこのスーパーや コンビニでも見かけるようになった。
私の子供の頃には、なかった風習だ。ここ20年くらいの習慣だろうか。
我が家でも、10年くらい前から、家族の行事として定着している。
10年・・・今書いてびっくりした。息子が4,5歳くらいの時に始めたので、12、3年にもなるのか…。
はじめは、やはり 子どもが喜ぶだろう、という親心はあった。それに加えて、私が、「海苔巻き」を作ったことがなかった、というのも、ある。
物珍しいことは大好きで、やったことが無い事はたいてい一度は挑戦してみるのが習いだったのに、「海苔巻き」はやったことが無かった。
その事に思い至って、ならば、せめて一年に一度くらいは、海苔巻きを作る機会を設けよう、と思ったのだ。
はじめの頃は、だいぶ難しくて、海苔が閉じなかったり、具が寄ってしまったり、一通りの失敗を経験した。出来るようになるまでは、一年に一度と言わず、普段に練習すればいいものを、それはやらないから、「まあ、こんなものかな…」と思えるようになるのに、何年もかかった。今でも、自信をもって人様に振舞おう、と言う気にはなれない。
ただ家族の内輪で、具材を変えてみたりしながら、恵方を向いて、「笑っちゃだめだから!」とか「でかすぎ!」とかワイワイ言いながら、一年一度のイベントとして楽しんでいる。
恵方、というのは その年の歳神様がいらっしゃる方向で、その方角を向いて、言葉を発せず願いを念じて、切れていない巻きずしを食べるのが作法と言う事だ。
作法通りにやってみて、感じたことは、「願い事をする時間が、長い!」と言う事だ。流れ星への願掛けは、ほんの一瞬しかないので、たいてい「あ…」で終わってしまうが、恵方巻の場合、食べ始めから食べ終わりまで10分弱、願い事を 吟味したり、精査したり、自由自在だ。願い事はひとつ、と言う決まりもないから、際限なく欲張る、と言う事も出来てしまう。
私は今年、3つのお願いごとをした。何を願ったかと言うと…書いてしまったら叶わない、気がするので、書かない事にする。
年中行事、というのは良いものだ。目に見えないものに想いを馳せたり、普段見慣れたものから再発見をしたり、来年の事を思い描いたり、昨年の事を思い出したり、変化に気付きおどろいたり、変わらないものに感謝したり・・・。定点観測の観測点のような働きを持っている。
11月から2月までは、月毎にに 家族の年中行事があるのだが、3月から10月までは、何もない。「今年は、春と夏に新しい我が家の年中行事を作ってみようか…」
おなかいっぱい海苔巻きを食べて、そんな話で 節分の夜は更けていく。