海外観光客向け〈オルタナティヴ・ニッポン〉都道府県観光ガイド(第二十回)
世界の皆さんこんにちは。私はニッポン在住の旅行ライター、日比野 心労です。
結婚式の定番ソングのこの歌、海外の皆さんには馴染みのない曲だとは思いますが、ニッポンの結婚式ではこの曲が新郎新婦の友人による合唱で歌われることが多く、世代を問わず人気を博している歌です。
実はこの曲は実在の県をモデルに作詞作曲されており、今回取り上げる県がその舞台となっているのです。
連載第二十回は、とある夫婦の新婚旅行に同行したときの出来事を皆さまにご紹介して、幸せのお裾分けをしてみようかなと考えています。
第二十回「斉玉県(さいたまけん)」
観光難易度:2(やや易)
・さい玉県について:その由来
「さい玉県」。この「さい」の字の表記は公式にも非公式にも確定している文字の無い県です。ときに「彩」で表記される事もあれば、「祭」で書き記される時代もありました。過去に廃藩置県が制定されたときは「歳玉藩」→「才玉県」として固定しようという運動も起きましたがいつのまにか下火になり、再び表記は流動化しています。
しかし、歴史を通して最も多く使われてきた「さい」の字は、「斉」(およびその数十のバリエーション)であり、公文書に記載する場合は「斉」を使用することが慣例となっています。
では何故この漢字が支持され採用されているのでしょうか?その答えは、さい玉県は歴史上、ニッポンの少数民族である「スクナビ人」という小人が生活する町のある唯一の県であり、その一族の苗字は全て「斉藤」(斉の字は氏族の種類によって異なる)であるからなのです。
・斉藤の国、斉玉県
斉玉県は本京都から在来線でも数十分で行けるアクセスの良さを誇り、本京都とは間接的直接的に交流の多い県です。定住者は都外に出ることはできない本京都でありますが、仕事上の都合により都外に出なくてはいけない本京都勤務の労働者のために、ここ斉玉県はベッドタウンとしての発展を遂げてきました。
もともと豊かな自然に囲まれた県ですので、開発に際しては先住の少数民族スクナビ人との軋轢も予想されましたが、スクナビ人は開発を快く受け入れ、今ではニッポン人との共生を大いに満喫しているそうです。
スクナビ人は元来陽気な小人としてニッポンの歴史にたびたび書き記されており、スクナビ文化はニッポンの歌舞音曲に大きな影響を与え、またニッポンの工芸や職人技術はスクナビ人の経済的発展に多大な貢献をしてきました。
なかでも近代工業の発展以降、その身体的有利さを活かして精密機械工業が隆盛し、スクナビ人の作る機械時計はニッポンの輸出品目の中でも高い評価を得ています。
特に、斉玉県を代表する企業SAITHO(サイトー)は、自然環境と融合した生産体制を取っており、そこで組み立てられる腕時計は殆どが環境汚染ゼロの産物です。
また、ニッポンのアパレル企業最大手「さいとう」の本社もここにあります。ニッポン人とスクナビ人の共同出資により設立されたこの会社、大人向けの衣類はニッポン人が、子ども向けの衣類はスクナビ人がそれぞれ担当することでシナジーを生み出し、今やニッポンを代表するアパレルブランドとして成長を遂げました。また、斉玉県は歴代の県知事をニッポン人代表とスクナビ人代表のふたりで務める合議制の行政形態を採用しており、スクナビ人の政治権が大いに発達している世界でも稀な自治体であります。(かつてニッポン国総理大臣をスクナビ人が務めたこともあり、ニッポン人との共生は極めて良好な関係にあります。)
ただし一点、スクナビ人居住地に入る際には我々人類がどうしても守らなければならない掟があります。スクナビ人の居住環境を守るためでもあり、文化的差異を尊重するニッポン政府の方針でもありますが……
今回、皆様にご紹介する新婚旅行の様子をもって、その興味深い掟をお伝えできればと考えています。
・スクナビ人の地、誼町(よしみまち)訪問に際して
斉玉県誼町。斉玉県の中部に存在するこの町はなだらかな丘陵地帯が広がり、湖沼も多い長閑な地です。その穏やかで住み心地のいい土地にスクナビ人が居を定めたのは、今から1500年ほど前だったそうです。
ニッポン各地に存在していたスクナビ人はニッポン人および他の少数民族と共に楽しい暮らしを送っていたのですが、ある時「なんかみんなで集まるともっと楽しそうだから」という理由でこの地に集結し、葦の茎で葺いた屋根を持つ穴居式住居を多数建造し、定住生活を始めたそうです。(少彦異聞伝巻ノ一 齊藤キュパ著 より)
それ以来、ここ誼町は小人の町として知られ、近年はニッポンおよび世界各国から多くの研究者・観光客が訪れることになったのですが、押し寄せる人間に対して困惑したスクナビ人はそこにひとつ条件を付けることで来訪の許可としました。曰く、
「自分らと同じ大きさだったら来てもいいよ」と。
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「日比野さん、今日から数日間宜しくお願いします!」
明朗快活、そんな言葉がよく似合うこの声は、私の息子、真道の友人、斎藤玲音くんです。彼は学生時代からお付き合いしていた女性、斉藤真希さんとこのたび晴れてゴールインし、甘い新婚生活を始めたそうです。息子の共通の友人であるふたりについては何度か聞き及んでいました。とても好感の持てるカップルだ、とのことだったのですが……
「マキマキー♡今から楽しみだね〜♡」
「レオたんと一緒に来れて良かったー♡いっぱい、いっぱい思い出作ろうねっ!」
私は【イチャイチャ】という副詞が人体から音として発せられるのを今日初めて聞きました。暑い。4月も頭だというのに暑い。二人の近くにいると体感温度が5℃ほど上昇しそうです。私は苦笑いを浮かべると先に誼町の駅舎を出て、スクナビビジターセンター「誼百穴」へ向かって歩き始めました。
誼町への人間の訪問者は全てこのビジターセンターで受付をし、スクナビ人の土地に入るための一泊順応をおこないます。ビジターセンターは宿泊機能も備えており、訪問者は一人ずつカプセルホテルのような順応室へと通されます。受付は人間側が業務に就いており、スクナビ側の土地へ出るにはここ誼百穴を通る事でしか道はありません。ですので……
「いやだ!マキマキと離れるなんて辛いよお!」
玲音くんは順応室へ入ることを泣いて拒んでいます。
「レオたん、わたしだって辛いけど……ふたりの夢を叶えるためだもん!わたし……頑張るからレオたんも一緒に頑張ろ?」
スンスンと鼻を啜る玲音くんの頭をなでなでしながら真希さんはそう言い聞かせています。なんだこの光景。
それでもなお渋る玲音くんを私はなんとか引き剥がし、受付を済ませて人ひとりがやっと横になれるカプセルポッドへと二人を横たえます。持ち込みできない荷物を滞在中のクロークへと預けると、私もポッドに潜り込み、これまで何度かおこなった「順応」の深い眠りに身を委ねるのでした。
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「順応」というのは一種の身体改変技術で、人類の身体全てを原子レベルまで分解したあと再構築することで、体の大きさをスクナビ人レベル(身長約40〜60cm)まで縮小化するという技術です。サイズダウンした分の残りの原子(身体の約2/3)は脳部分だけが再構築され、それらは滞在中、ここ誼百穴でスクナビ人の町を離れるまで安全のもとプールされます。ここで再構築された脳はサイズダウンし再構築されたスクナビ側の本体脳とネットを通じてリンクされ、身体情報や記憶処理に活用されます。つまり、小型化した自分をリモートで操作しているという感覚がいちばん理解が早いかと思われます。
これはかつて世界中に存在したスクナビ人が人類を自らの国に招き入れる際に使用していた魔法のようなものを、TSUSHIMA経済特区と元京都の技術協力で一般運用できるようにしたものです。(余談ですが、その技術の一部はTSUSHIMA経済特区で身体のデータ化技術に応用がされています。) 世界各地に存在する「小人の国訪問伝説」は、スクナビ人のあいだでは歴史的事実として記録されているのも、この技術の成り立ちを考えるとうなずけるところです。
さて、順応を終えて衣類もろとも身長約60cmの大きさに縮小された私の姿ですが、スクナビ人の容姿に合わせてこのように頭身が変化しています。(下図参照)
これはマンガ的誇張でも何でもなく、実際のスクナビ人の骨格、目鼻立ちなどの顔の造形がこのようになっているための処置です。そう、皆さんがアニメやマンガなどでよく見る2〜4頭身のキャラクターそのものの造形が、スクナビ人の容姿だと思っていただければ想像に易いかと思われますので、以後の人物描写はこのような雰囲気を思い浮かべながら読み進めてください。
では、順応を終えて出発を控えた我々一行の様子に戻りましょう。
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「ご一行さま、ごあんな〜いっス!」(ドンドンパフパフ)
ビジターセンター「誼百穴」をスクナビ人側受付から出た我々は、スクナビ人の賑やかな出発の見送りを背に街へと繰り出します。そこには漆喰なまこ壁の建物や草葺き屋根の庵、丸太(といっても人間世界で言う木の枝くらいの太さですが)組みの小屋などが立ち並ぶ、ニッポン各地からの原風景を寄せ集めたような風景が広がっています。行き交う人影は皆2〜4頭身くらいの小人(我々も似たような姿形ですが)で、顔かたちからしてまるでマンガやアニメの世界に入り込んでしまったような印象を我々に与えます。
さて、我らがアツアツのカップルはというと……
「マキマキ、やっと……やっと来れたね。」
「レオたん、いよいよだね。『ポケくえ』、スクナビの人たちにも人気だといいなぁ。」
ん?メイクを変えているからかも知れませんが、心なしか二人の雰囲気が違うような……。真顔というか、真剣さが増しているというか……。
我々一行は街の観光もそこそこに、ポニーが曳く乗合馬者に乗り込んでスクナビ人が運営する結婚式場へと行き先を定めます。斎藤夫妻が苦労して大きなキャリーケースを荷台に引き上げると、馬車はゆっくりと進み始めました。見ると、ふたりは沢山のスクナビ人に囲まれて、何やら楽しそうに質問攻めにあっています。『ポケくえ』について何やら会話しているようですが……ニッポン中でヒットを飛ばしたゲーム『ポケットクエスト』はスクナビ人にも大人気なようで、話に花が咲いています。
「若い子たちは元気でいいっスねぇ!見てるとコッチも幸せになってくるっスよ!」
ポニーを操る馭者の男性、齋藤ミュスカはそう言ってカラカラ笑いました。見た目は若いですが、聞くと彼は二百歳をゆうに超える年齢です。スクナビ人は皆長命で、正に妖精の眷属であることが実感できます。
「最近はこっちの式場で結婚式を挙げる人間のカップルも多いんですか?」
「そうっスねぇ。今は『カワイイ』がブームなんスよね?近ごろはいろんなカワイイ格好で式を挙げるニッポン人も外国人も増えて来たっスよ。自分らもいろんな人間が見れて楽しいっス。祭りみたいに賑やかになるっスからね〜」
そういうものなのか、と納得した私ですが、それにしても二人はスクナビ人に大人気です。まてよ?私も小人になったこの二人をどこかのメディアで見て知っているような気が……髪型、メイク、目鼻立ち。うーん……どこかで……。
そんなことを考えながら、馬車は結婚式場へと到着しました。
・フォトウエディング式場「斉藤ウエディング」にて
ここ斉藤ウエディングは、様々なロケーションが人気のフォトウエディング専用式場であり、世界各国の有名スポットのミニチュア版が多数あるだけでなく、ファンタジーやSF的な世界観を模したオリジナルな街並み、景観も利用できる広大な空間です。元来旅好きのスクナビ人は様々な土地で独自の結婚式を挙げるケースが多く、みなさんも世界中の色々な場所で小人のカップルが思い思いの装いで写真撮影に興じているのを見かけたことがあるかと思います。
近年は外国人にもその存在が知られてきたこのフォトウエディング式場ですが、専属のカメラマンの腕も良く、クチコミで静かなブームを巻き起こしている観光スポットのひとつです。
関係者控え室で私と握手を交わしたカメラマン、リペック・サイトー氏は感慨深く語りました。「いやー、ボクの若い頃は、斉玉県が『ダサイタマ』なんて言われてたのが嘘みたいっスね〜。今じゃニッポン人以外にも、日本人や海外からのお客さんも増えたのがまだ信じられなくてね〜。」
「最近は、スクナビ人の見た目にそっくりなアニメやマンガも市民権を得てますからね。日本、フランス、アメリカ、亜Jモンあたりでも皆さんのような外見に憧れるクリエイターは多いですよ。」
「ボクらの人気が高まるのは良いことっスね(笑)近ごろはいろんな趣味嗜好の人がいるって事も知れたのは……」
ドカン!リペック氏の言葉を遮るような爆発音?が響きました。一瞬遅れて振動が我々を揺さぶります。
「な!?何ですか!?」
「始まったみたいっスね……日比野さん行きましょう!遅れたらあのふたりに悪いっス!」
「え!?始まった?何が??ちょ……待ってください!」
ゴツいレンズの付いた一眼レフカメラ(これも斉玉県製品です)を抱えながらリペック氏は控え室から駆け出していきます。私は慌てて彼の後を追うのでした。
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「みんな!早く逃げるっス!」
小さなチャペルが設えられた屋外の撮影所は大混乱でした。参列者(スクナビ人の見物人)が右往左往と走り回り、石畳の地面に穿たれたいくつもの穴を避けて逃げ惑っています。黒雲立ち込める野外の式場には異形の羽根を持った蝙蝠のような怪物が何体も飛び回り、口から青白い稲妻を吐き出しながら参列者を追い回しています。
「りりりリペックさんこれは一体!?」
見るとリペック氏はカメラを構え、逃げ惑う群衆と怪物に向けてパシャパシャとシャッターを切っています。
「リペックさん!早く逃げましょう!ここは危険です!」
私はリペック氏のカメラマンジャケットを引っ掴み、引きずるような格好でその場から逃れようとしますが……
「しっ!これからイイところっス!しばらくそのまま!」
「リペックさん!?」
固まった我々ふたりの眼前に黒い煙が立ち昇ります。併せて、荘厳ですがどこかおどろおどろしいパイプオルガンの音色が響きました。一瞬の閃光!大音響の爆発音!思わず目を覆った私が次に見たのは、身の丈が我々の4倍はあろうかという禍々しい色の甲冑に身を包んだ巨人でした!
「ふははは!我は世界を統べる暴力と破滅の運び手『昏き死のモンドーリ』!斉玉県の民よ!地獄から復活した我の最初の生贄は諸君らだ!さあ!その身と魂を我に捧げよ!!」
そう叫んだ巨人は忌々しい笑い声をあげると、手に持った大剣を頭上に掲げ、黒雲から得体の知れない影を引き下ろそうと力を込めたように見えました……
「終わる……世界は終わってしまうっスね……」
私たちの隣で、青ざめた顔をしながらスクナビ人の女性が膝から崩れ落ちます。何だコレ。聞いてないぞこんな地獄みたいな結婚式……!
「さあ喰らうがいい!黒暗滅転龍障波!!!」
ん?どこかでこの名前、聞いたことがあるような……と思った刹那、いつの間にか私たちの目の前に颯爽とひと組の男女が現れました。
「させない!光式降魔術奥義!百花繚乱ッッ!!」
魔法使いの格好をした女性が杖を突き出し呪文を唱えると、無数の色の花びらと共に光り輝く五芒星が目の前に浮かび上がり、巨人から飛び出した黒い龍を覆って押さえつけました。あれ……このビジュアルどこかで……
「その程度で我を抑えようとは片腹痛いわ!むん!」
巨人が力を込めると龍は五芒星の光を引きちぎり、女性に向かって襲い掛かります!アブナイ!
「ハルナ!」ずば!剣士の格好をした男性が剣で黒龍を一刀両断にしました。「大丈夫か!」
……やっぱりこの展開どこかで見たことがあります。何だったっけ……つい最近もこんな光景を見たことがあるような……。
「ここで負の連鎖を断ち切る!ハルナ、あの魔法を俺にくれ!」
「マコト!わかったよ!……輝く軌跡、明けの明星……闇を切り裂く愛の刃……術式展開!奥義発動!愛染明星
断光魔!」
女性の杖から光の奔流が溢れ、剣士の剣を覆います!
「いくぞ!「究極奥義!『『天闘無死乃斬刃』』!!」
光を纏った剣士が猛スピードで跳躍し、巨人の身体を光の剣が貫きます!それはそうと今何て言ったの!?てんとうむしのサンb……
「うぎゃァァぁぁア!!!」ズドーン!巨人は倒れ爆発四散しました!やった!勝った!思い出した!これ、「ポケくえ」のラスボスのくだりだ!!!
巨人を倒したふたりは、奥義を放ってもまだ残る無数の花びらが舞い散る中、手に手を取って私たちの方に向きなおりました。キメのポーズ、抱き合うふたり、手を繋ぎ合うバックショット……それら全てのポーズをリペック氏はカメラでバシバシ撮影しています。思えば、戦闘中も彼は二人を撮ってばかりだった……ひょっとしてコレは……
「日比野さん!ご協力頂きありがとうございました!おかげさまで良い写真も動画も撮れました!」
「ねーレオたん♡スクナビのみんなもノリノリで楽しかったよね〜!ね、今度は『オセどら』のオリオンとアルテミスのコスプレやろーよ♫」
「イイっスねぇ!是非是非見たいっス!(見たいみたいみたい!とスクナビ人の参列者から湧き上がる歓声)」
私は今やっと思い出しました。数年前、ふたりの事を某雑誌で取り上げていた記事を読んだことを……そして、つい先日、『ポケくえ』をクリアしたことも……。
「というわけで、コスプレイヤー夫婦『神崎レオン・神崎マキ』のウエディング撮影会にご協力ありがとうございました〜!以降はフリー撮影になりますので、皆さんカメラをご用意の上順番にお並びくださいね〜♫」
・おわりに
「いや〜良かったです日比野さん!ステキな観光地を案内してくれてありがとうございました!」
メイクを落とし、コスプレ衣装を脱いだ斎藤玲音くん(注:コスプレネーム「神崎レオン」)は、式場のカフェラウンジで誼町名産の大イチゴを使ったパフェを前にキラキラした笑顔でそう言いました。隣ではこぶし大ほどもあるイチゴにかぶりつきながら、妻の真希さん(注:コスプレネーム「神崎マキ」)も幸せそうな笑顔を浮かべています。
「そうか。『ポケくえ』の主人公、マコトとハルナの頭身をリアルに再現しようと思ったら、普通にコスプレするだけじゃ納得いかなかったんですね。」
「そうなんです。『ポケくえ』に限らず、マンガ、アニメ、ゲームの2〜4頭身キャラをコスプレする場合って、人間の身長と体格じゃ不可能なんですよ。かと言って着ぐるみじゃアクションやポーズも限られてくるし。そもそも設定の身長とは違いますからね。」
「そこへ、スクナビ人の皆さんが3DAR技術を駆使したアトラクション式場を展開し始めたって聞いて、レオたんと『行くしかない!』って決めたんですよね。」
ここで私は全てを理解しました。あの爆発も怪物も必殺奥義も、小人化した我々の4倍はある巨人の悪役俳優……つまり通常の人間サイズの巨人も、全ては結婚式の余興だったのだと。そして、この夫婦はそれをコスプレのアイデアとして撮影に取り入れたのだと。
「普通の結婚式は地元で挙げちゃったんで、今回は二人だけのフォトウエディングだったんですけど、スクナビの人たちに相談すれば、参列者全員がこうしたアトラクションを楽しめるサービスもやってるみたいですよ。日比野さんも、お知り合いで漫画アニメやゲーム好きのカップルがいたら、結婚式は是非ここをおススメしてみたらどうですか?」
そう締めると、二人はお互いに大イチゴの載ったパフェを「あーん♡」し合う二人だけの世界に没入していきました。アツい。また周囲の気温がが5度上がってしまった。私は、自分の分が溶けないうちに、生クリームたっぷりのいちごパフェをかきこむのでした。
※ この取材のすぐ後で、スクナビビジターセンター「誼百穴」はリニューアル工事に入りました。その名も「誼千穴」。一度の順応人数を最大一千人にまで増やしてスクナビ人の街へ訪問できる画期的な施設です。結婚式に限らず、大規模コスプレイベント会場、アニメ作品のファンの集い等、様々な利用方法が提案できるとのこと。スクナビ人のスタッフも、明るく親切賑やかに、皆さんの訪問をお待ちしているそうです。
幼い頃、あのアニメ・ゲームのキャラになりたかった夢を、皆さんも誼町で叶えてみませんか?
(第二十回 おわり)
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