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作品No100.「歴史的現実」


現実に即して考える

皆様は普段、現実に即して物事を考えていますか?いつの間にか空論の世界に潜りこんだりしていませんか?さて今回は「現実に即して考える」をテーマにかいた作品です。

田辺元著『歴史的現実』

まずは一冊の本を紹介するところから始めましょう。皆様は『歴史的現実』という本をご存知でしょうか?おそらく99%の人は知らないでしょう。逆に知っている人の方が変わり者です。仮に名前だけは聞いたことがあったとしても、内容まで知っているか?となるとほぼ皆無だと思います。今回はそんな貴重な本からインスピレーションを受けてかいた作品です。

いわくつきの講演?

さてこの本は一体どのような本なのか? この本は田辺元さんという方のある講演を記録したものです。実はこの講演はいわくつきの講演でして、「特攻隊を賛美している」とか「この講演のせいで多くの若者が特攻隊を志願した!」という人もいるくらい。

ただ先ほども申しましたように、この本を実際に読んだことのある人なんてほぼ皆無。噂だけが独り歩きしている感も否めません。たしかに自分の国を守るためには自分の命を犠牲にすることもやむなし、という旨の表現は見受けられます。「この講演が特攻隊の覚悟を決める後押しになった」そういう面もあるかも知れません。しかしこれだけは言っておきたいのは、田辺は決して国のために喜んで死になさいなんて論調ではないということです。たとえば「種族と個人とは両立してそれぞれ自己を維持しているので、一方を滅すれば他方も自滅してしまう。」とかいているように、国家と個人を対等な存在と考えています。その上で戦時下においては、個人が国家の犠牲になってしまうこともまた事実。国が他国に占領されてしまったら元も子もありませんから。

これ以上踏み込むと、どんどん話がそれていってしまいますのでここまでにしますが、要するに伝えたいことは、この本は特攻隊を賛美している本ではないということ。戦時下を生きた田辺だからこそ、戦争に関する発言をせざるを得なかった、自身の哲学に戦争・国家論を組み込まなければならなかった。悪くいえば時代に流されたともいえますが、同時に現実に即して物事を考えた。むしろ戦時下にも関わらず、戦争について一切語らず、人生とは…みたいなことを論じられても、それは机上の空論にしかなりませんから。田辺哲学の特徴の一つは現実に即して考えることなのです。 そしてこの絵に込めたメッセージも、一言でいうならそれにつきます。

哲学とは何か?

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