幸せのありか
モモの木は、「どうして桜の方が人気があるのでしょう。桜並木はあるのに、モモ並木はありません、どうしてなの」と、そばを歩く野良犬に尋ねました。
野良犬はしっぽを軽く噛みながら言いました。
「モモの木さん僕はね、君には人気者でいて欲しくはないんだ。人気者過ぎるとどんどん遠くに行っちゃう気がしてね。だからこうやって、独り占めできる。」
いつのまにか野良犬はしっぽを噛むのをやめ、モモの木の根本に付いていた樹液をペロリと舐めました。それを見てモモの木はホッと撫で下ろし、優しく野良犬の肩に、モモの花びらを散らせてあげるのでした。
タンポポは飛んでいるスズメに嘆くように言いました。「私の仲間は色んなところに咲いていて、まるで大切なもの扱いされていないわ。私、たった1つの花になってみたい。」
スズメは地面に降り立って、首を傾げながら言いました。「大切なものって本当に近くにある時、気が付かないんだ。僕だって、スズメ達が沢山いるところに居座ってしまうと、いつの間にかタンポポの姿を見たいと思っているんだよ。」
優しく居座るスズメに、タンポポは涙を流し葉っぱをふわりと揺らしました。
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