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車に乗った私は、もっと私に近づいた

大学を中退した後、私が、一番最初に取り組んだのは教習所通いだった。車が運転できないと、この田舎暮らしでは生活できなくなるからだ。

何コマも授業を取っている高校生を横目に、私は自分のペースで1つずつこなした。まるで、途中で妥協することにならないように、慎重に。

教習所は面倒見のいいところで、あっという間に卒業することができた。「車の才能あるんじゃない?」と喜んでいた私は、更に大きな困難に当たることになる。それが、本免試験だ。

本免試験は100問ほどある問題の9割を正解しないと合格しないため、そんなにとんとん拍子ではいかない。まるで人生のようだった。しかも、悲しいことにこれもまた、人生の一つなのだった。

普通免許取得までに、3回も試験に落ちた。4回目でようやく受かった時は、静かにその場でぴょんぴょん飛び跳ねた。そのままぴょんぴょんしながら、説明を聞くために二階へ向かった。

213番の受験番号。私の手術日と同じ数字。何だか上手くいく気がした。

それから車を購入するまで、あまり時間はかからなかった。何せ、私の祖父母の夢は「孫に車に乗せてもらう」ことだったから。お金を頂き、大切な空間を手に入れることに成功した。

現在、車を運転するようになってから1ヶ月が経つ。車を運転するとその人の性格が現れると言われているが、私もその中の1人なのであった。

・マイペースに歯車がかかり、走っている間の車との間隔を空けがち

・右折は、矢印信号が出るまでのんびりと待つ

・渋滞していても気にせず椎名林檎を歌う(夢中なため、たまに車の間隔を詰めるのを忘れる)

そうだった、私はマイペースな性格だった。幼い頃から言われていたのは「周囲は気にせずに自分のペースを大事にする」ということだ。社会の波に揉まれているうちに「人に合わせる」という脳の作用が刺激されがちだが、私は元は違った。

疲れている時に大事にしていることは「パーソナルスペースが広く確保されている場所」だ。いかに自分らしくいられるか、それが何よりも大事なのだ。

どんなことにも影響されないような「本当の私」が現れて、自分の助手席で、椎名林檎を歌っているのが見えた気がした。

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深海 もみ
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