第2回開催しますの御連絡いただいたっす記念:第1回NovelJam生還記、あるいは如何にして私は心配するのをやめ(なくもなかったが、それはともかく、何だかんだ不安を抱い)て世界初の即興小説制作イベントを愉しむようになったか【注00】
【00】ちなみに以下の文章は、半分ほどは実際に生還直後にしたためたものですが、今回めでたく第2回があるとの御連絡をいただき、「あ、そういえばアレまだ書きかけだった^^;!」と慌てて完成させた文章であります……が、特に文章内容もノリも変更なく、その後の顛末については文末に第三部として加筆してあります。あと、投げ銭システムですので最後まで読めますが、気に入ったらチャリ〜ンと212円ほど放り込んでやってください^^。
第一部:接触篇
S「とゆわけで無事に生還したわけですが」
M「なにを大袈裟な。都心で二日間かけて短編小説ひとつ書いただけじゃないですか」
S「だけじゃないぞ、即興だぞ。担当編集が誰になるのか当日の御挨拶タイムまで不明なんだぞ。しかも二日目は、ほぼ出版講座&編集氏によるプレゼンなので執筆作業は初日の3時から10時まで」
「それにしたって新城さんは恵まれてるほうでしょ。参加者や審査員やスポンサーさまのなかには地方からわざわざ上京してきた方々もおられたというのに」
S「でも世界初(たぶん)のイベントだし、真冬だし、インフルエンザ警報発令中だし、朝は早いし〜」
M「最初の三つはまあ情状酌量の余地ありますが、朝早い云々は新城さんの個人的資質でしょ。東京の勤め人は毎日あれより早く目覚めて満員電車で通勤してるんですよ!」←東京の勤め人
S「(勤め人の嘆きを軽く無視して)そんなこんなで愉しめましたので関係者の皆様ありがとうございました&おつかれさまでした〜」
M「そういえば新城さん、なんでこのイベントに参加したんですか。べつに招待選手ってわけでもないですよね」
S「まさか。ちゃんと応募して参加料振り込んで早朝からJR市ヶ谷駅まで通ったぞ。(←早朝がよほど体にこたえたらしい)そもそものきっかけは……去年の年末、たまたまフェイスブックで海猫沢めろんさんがアップした記事を見かけて…『即興執筆かあ、へ〜』と思って公式サイトへのリンク踏んだのが」
M「そういえば新城さんも前に言ってましたよね、短時間で小説を書くのは面白いんじゃないかって」
S「そう。あのころ、ちょうどマンガ家さんの作業工程動画を公開したりビブリオ・バトルが流行り始めてて、だったら小説執筆もイベント化できないかなあと思って、ビブリオ・バンドてのはどうだろうと妄想してたんだ」
M「バンドってことは複数人で?」
S「うん。執筆担当、編集担当、イラスト担当、出版担当みたいな構成でバンドを組んで、あちこちで実演してみせる……みたいな」
M「今回のNovelJamみたいな複数チームの同時並行作業とか競争てのとはちょっと違うんですね」
S「でも、そういうバンドがたくさん成立すれば、そのうち大規模なフェスをやってもいいわけだし。方向性としてはかなり似てるね。当時の新城は、どっちかっていうと制作過程をライブで見せる方向性を考えてた。ただ、それにはそれで問題点というか、けっこうな労力が必要だし……今回のジャムでも各工程の記録が閲覧できるので、ほぼそれは達成されてるけど、そっちのほうが効果的・効率的かもしれない」
M「たしかに生でジ〜ッと見てるよりは、クッキング教室みたいに途中途中の半完成状態を、あとからブツとして見物できたほうが観客の負担は少ないですね」
S「まあ、濃ゆいお客さんは将棋のライブ観戦にも来るけど、一般のお客さんは棋譜でもじゅうぶん楽しめる、みたいな違いかも。で、募集要項に記入して送信して……たしか1月の上旬に当選通知が来てビックリした」
M「なんで驚くんですか」
S「いやまさか本当に当選するとは思わなくて。倍率も高そうだったし、公式サイトの雰囲気からして今回の企画はインディーズ系作家を応援したいのかなと思ってたので」
M「^^;じゃあなんでわざわざ応募を」
S「いや、面白そうだったから、つい」←新城カズマの人生哲学
M「……それで出場決定した時のお気持ちは」
S「えーとまず最初に思ったのは『ははーん、プロ作家をわざわざ当選させたからには、これはつまり[にぎやかし役]を演(や)れってこったな?』でした。なので、当日含めてけっこう積極的にツイッタで呟いたりしたのです」
M「え、賞を獲りにいったんじゃなかったんですか」
S「いや全然。そもそも海猫沢さんとは友人なので、もらえてもせいぜいプロがよくがんばりましたで賞か何かだろうなあと予想してたのよ。そしたらビックリの結末が、このあとスチャラカ作家・新城カズマを襲うのであった!以下次号!刮目して待て!」
M「……というのはまったくのデタラメで、まだしばらく第一部は続きますよ。で?出場決定したらその次は?」
S「えーと、近所のコンビニに振込に行きました。この時点で、そろそろプロ作家としての職業病が目覚めつつありまして」
M「?」
S「つまり、どうやったら今回の企画参加で新城カズマは黒字に持ち込めるか?という計算ですな」
M「げふっ(お茶を吹きこぼす)も、もうちょっと崇高な、とは言わぬまでも利他的な動機はなかったんですかっ!日本の電子書籍業界への貢献とか、のちに続く若き才能への肥やしになろうとか、己の創作意欲への刺激とか」
S「何を言う。職業的小説家たるもの、経済的利潤は大事だぞ。いいか、プロという言葉にはただ二つの定義しかない——黒字を目指す、および、〆切りを守る、それだけだ!」
M「……てことは新城さんはプロ未満てことですね。いくつ原稿お待たせしてるんですか」
S「ぎくぎくっ」
***しばらくお待ち下さい***
M「それでは気を取り直して、スチャラカ(プロ未満)作家・新城カズマさんの登場でーす」
S「は〜いそんなわけで頑張らないかんな〜思てます〜、名前だけでも憶えてってくださいね〜」
M「で出場が決まって」
S「それから真面目にルールというかイベント細則を熟読したわけですよ」
M「なんで応募前に読まないんすか。古参ゲーマーすか」
S「うむ、そのとおりだ。君の言うことはまったく正しいぞ。というわけで大事な戦訓その一……『イベント細則は事前に熟読しよう!』:で、その結果、当時の新城が何を思ったかというと:
1)「アイデア持参はOK……これは重要だ」
2)「ふむふむ2日目はDTPと授賞式……勝負を分けるのは文体と時間配分だな」
3)「担当1人に作家2人か——どういう順番で担当と打ち合わせするのか……ジャンケン?ここが完成度を左右すると見た!後手番になっても良いように戦略を組み立てよう」
4)「あれ、宿泊型じゃないんだ!(てことは移動時間と自宅での睡眠で、さらに時間が……おおお)」
5)「二日目の朝食はあるんだろうか……自宅出発時間とも関わるので、ここも重要だぞ」→この件などは事前に公式Q&Aにお尋ねしました^^;
6)「なるほどツイッタで呟いてもいいのか……ニヤリ」
M「なんか色々考えてますね。2)の「文体」てのは何なんですか」
S「これは4)とも絡むんだけど、進行表を読み込んで実質作業時間をざっくり計算したら「実働6時間」という感じになったんだ。二日間のイベント、という表看板とは裏腹に、これはかなり過酷な時間単位・分単位の耐久レースになるぞ……と判断したので、すぐに
A)ショート・ショートを書くつもりでいかねば、
B)書き慣れた「三人称+セリフ多め+神の視点でどこまで描写してもツッコんでもいい」文体を使おう、
C)てことはブラック・ユーモアかスラップ・スティックだな、
という結論を得るまでに約3分」
M「そうなると逆に使えるアイデアも限られてきませんか」
S「そこだ。問題はアイデアを絞り込む時間なんだ……なにしろ新城カズマといえば、書けもしないような珍奇なプロット案を次から次へと思いつくことで有名なスチャラカ作家だからね」
M「それで例の『事前にアイデア群をnoteに公示しておく』作戦になったわけですか」
S「そう。担当さんとの打ち合わせ順が後手番になった場合には、「このアイデア群から好きなのを選んでください、すぐ書き始めますんで」と時間短縮できる。でも、もうひとつ理由があって、イベント後に『もしかして出来レースなんじゃね?』と言われるのを防ぐためのアリバイ作りでもあったんだ。ちゃんとアイデアを(60個以上も!)先に提示して、そこから担当さんが選んだんですよ!って言うためにね。幸いなことに、担当さんが前日までにnoteに気づいて読んでてくれた【注01】んで、さらに時間短縮になったんだけど」
M「しかし、なんであんなに大量のアイデアを……」
S「や、今回のお題である『破』の文字が入ってる案をメモ帳から全文検索して探し出して、ついでに『壊』とか『滅』とか近そうな文字の入ってるのを抽出してたら、いつのまにか楽しくなっちゃって、ああいうことに」
M「…………」
S「ちなみに、まだこちらにありますんで、後半は有料ですが、よろしければどうぞ^^」
【01】これはイベント当日まで新城は知らなかったのですが、編集さんたちのほうは「自分がどの作家を担当するか事前に知らされて、準備していてくれた」そうなのです。その後参加者の皆さんの参戦記を読むにつけ、これが実にすばらしい「安全装置」であったことが判明するわけですが……いやホント、このへんの制度設計の妙が、第一回NovelJamを成功に導いた大きな要因であったと新城は感心しきりであります。
第二部:発動篇
M「で、アイデアをnoteに公開して、当日になるわけですが」
S「初日の感想は……
東京の朝は寒い
の一言でしたわい。その他にも、
「リアルタイムで蓬莱小説の読者でした♪」by担当となった賀屋さま
というサプライズやら、藤井氏の冒頭講演に我が意を得たりと首肯しまくるやら、色々あったのですが、詳細はtwilogでまだご覧になれます^^ 」
http://twilog.org/SinjowKazma/date-170204
M「これ、やっぱ主催者側が意図的に賀屋さんを新城さん担当にしたんですよね」
S「としか思えないんだけど、もしかしたらホントに偶然かも……いずれにしても、このへんのマッチメイクも主催者サイドの手腕が光るところだよね」
M「twilogを眺めてると、いろいろ戦訓やら個人的勝利条件やらを呟いてますね……『執筆は体力だ!』とか『感染症をうつされないのが勝利条件』とか」
S「いやホントまじでインフルなどには気をつけねばいかんぞ。足かけ2日のイベントで風邪ひいたりなんて洒落にならん」
M「とゆわけで、えーと昼の12時57分前後に担当さんとの打ち合わせが始まって、アイデアを絞り込み終わったのが13時半くらい……ここからが執筆ですか」
S「いや、アイデアからいったんプロット&キャラを作りこむ作業が先だ。ショートショートのつもりなのでキャラは最大3人として設計を始めて、当初は「作家」vs「担当編集」で考えてたが、賀屋さんから
『なんかラブの要素入れられませんか』
『泣かせの要素も欲しいですね』
という無茶振りがあったので、
α)男性作家と男性編集のBLにするか、
β)男性作家&恋人&担当編集の三角関係か、
で結局後者を選んだ」
M「作家は男性固定なんですか」
S「執筆時間が短いので、自分にいちばん近いキャラ設定にしたんだ。数週間ぐらいの時間があれば、どんな人物類型でも主人公にできるけど、さすがに数十分となると」
M「けっきょくプロットは14時53分に完了して送付、と……一発OKだったんですか」
S「いや、微修正が一個入って、けっきょく15時半に完成した。で、執筆に入る」
M「twilogを見てると、このあと18時まで極端に呟きが減ってますね」
S「ものすごい集中してたからね。ほとんど書き直し無しで、冒頭の一行からダダダダ〜ッと」
M「新城さんにしては珍しいですね。いつもは、エンディングとかクライマックスから書き始めるんじゃなかったでしたっけ」
S「うん、長篇の時とか、短篇でも〆切が数ヶ月先ならね。これは僕の個人的特質なのかもしれないんだけど、体力と気力がいちばん充実してる最初の段階で、いちばん盛り上げたい最終場面を先に書いておくほうが後々なにかと楽なんだ。小説執筆は体力で、プロット設計は記憶力だよ」
M「きおく?」
S「これまでの人生で出会った、あらゆる情報や体験や妄想や悔恨や感動を憶えておくことが、〈おはなし〉というシチューを作る素敵な具材になってくれるんだよ。少なくとも新城カズマの場合はね」
M「ふーむ。で、18時37分にお弁当を食べる、と。この時点でほど初稿は完成してたんですか」
S「クライマックスくらいまでは書いてた頃かな……で、カツサンドを頬張りながら【注01.5】書き終えて、出だしから読み直して誤字脱字を修正して……完成が20時04分。でも一息ついてるうちに「うーむあのオチはもうちょっと何とかすべきかな」と考え始めて、修正を申し出て、1.5稿(当日は2.5と呟いてるけど厳密には1.5だよね、これは…)の提出が20時38分。ちなみに初稿のオチは、NovelJam公式ページでまだ読めるはずです」
【01.5】記憶ではカツサンドだったはずなんですが……もしかしら2日目の朝食と混同してるかも……
M「初稿と1.5稿のオチの違いよりも、最終プロットと初稿のほうが異同が大きくありませんか。特に恋人の女性キャラの動きとか」
S「そう、そこは書いてて自分でも驚いたところでね。プロット段階では比較的古典的手法で主役二人の対立と和解を追ってるんだけど、いざ書き始めてみると装飾に相当するドタバタ場面のほうが面白くなっちゃって、どんどんと小ネタの応酬が」
M「なんか独りでコンビ漫才をやってるみたいですね」
S「む、たしかに。あの時は、かなりハイになってたしね……冒頭の会話を書き始めた時点では作家&恋人の名前も決まってなくて、前者はイベント所在地の市ヶ谷から適当に借りたりしたんだけど、恋人の名前からいろんな空想が書きながら膨らんで、あっというまに西モルダヴィア共和国の詳細が思いついちゃった。あの国は、またいつか別の作品で使いたいなあ……それくらい美しい土地なんだよ(←だんだんと現実と空想の区別が曖昧になってきている)」
M「この国って、モルドヴァ地方(現・共和国)がモデルなんですか。たしかあのへんで沿ドニエストル地域の独立紛争が起きてたような気が」
S「名前と独立運動のゴタゴタはその通りで、でもお城とかの風景はチェコのプラハ城がモデルになってるよ。数年前、うちの奥さんと一緒にプラハに旅行したことがあって、その時の鮮烈な印象があったんだな」
M「ひえ〜!まさかこの****なスチャラカ短篇が、作者の実体験に基づいていようとは……」
S「小説なんてそんなもんだよ^^」
M「さて2日目ですが」
S「まあ原稿はすでに完成してたんで、気楽なもんですよ。それにしても「連日の通勤カンヅメ」なんて、いったい何年ぶりだろう……通いカンヅメを前回やったのは、たしか集英社さまで……『15x24(イチゴー・ニイヨン)』を書いてた頃だから、6〜7年ぶりか。時の経つのは速いもんだ」
M「twilogのほうも余裕というか物見遊山的な匂いがしますね」
S「ここでも自分なりに戦訓をまとめてるね。第2回の参加者というか戦士たちに、少しでもお役に立てれば良いのですが」
M「そんなこんなで修正をしてから、いよいよ電子書籍化に」
S「いやーこのへんになるとほとんど記憶がなくて^^;……後、前日にすごい集中して(=猫背で)執筆してたら肩こりがひどくて……当時の写真記録とか中の人が残してないかしらん:ひどい姿勢でしたよホント。とゆわけで戦訓その二……良い執筆は良い姿勢から!」
M「そういえば知り合いのマンガ家さんも口々に『椅子にはどれだけお金をかけても、かけすぎることはない』て言ってましたね」
S「twilog見てみると、ちゃんと呟いてるけど、ほとんど記憶にないなあ……あ、「学園祭当日状態」て呟いてる:でもホントそんな感じで、なんか不思議な多幸感しか憶えてないなあ」
M「そんで各作品のプレゼンby担当各氏、があって……いよいよあの衝撃の授賞式が」
S「や、同じく賀屋さんが担当だった同チームの松永さんが最初に受賞したんで、「あ〜これはさすがに新城には賞はないなあ……まあいいや、楽しかったしな:あとは電子書籍化でどれだけ売れて元が取れるかだ」しか考えてなくて、最優秀賞の発表はマジで度肝を抜かれました」
M「ていうか「元を取る」って、あんだけタダ飯食らって電力消費してWi-fi使ってツイッタで呟き遊んでて、まだそんなこと考えてたんですかっ!」
S「ふっふっふ、スチャラカ作家あらため、大人気ない(©藤井大洋氏)スチャラカ作家!見よ、天下御免の向こう傷じゃなかった賞状と副賞品!人呼んで新城カズマ!かっはっはっは!(→高笑いしながら舞台の上手[かみて]へと去ってゆく)」
第三部:戦後復興篇
M「というわけで新城さんが上手にハケたので、以下はボクのほうから……新城氏は、どうやらイベントで感染症をうつされずに済んだらしいです:よかったよかった」
X「ふふふ、しかし第二回でも無事に済むかな……」
M「おお、あなたは柳川房彦さん!ていうか第二回やるんですか!」
X「そらそうだろ。前回が大成功だったし。しかも今度は宿泊型らしいからな。移動時間は削減できるが、休息のタイミングを間違えると、かえって体力消耗の激戦になるぞ。天候不順も考えたほうがいい。なにしろ開催地は八王子だ。雪で電車が止まって籠城戦も考えられる。だが、苦難の彼方にこそ星は輝くのだ!さあ、そこで目を見開いた君、そう、君だ!まだ参加のチャンスはあるぞ!しかも今回は作家・編集に加えて、デザイナーも募集してるのだ!腕に覚えのある諸君、電子書籍の未来に身を投じるならば今が好機だ!」
M「(主催者からのメールを受信しながら)あ、作家枠への応募はもう定員を超えちゃったみたいですよ」
X「……作家枠は只今絶賛選考中だが、編集とデザイナーもまだまだ募集してるのだ!腕に覚えのある諸君、電子書籍の未来に身を投じるならば今が好機だ!」
M「ちなみに……まさか新城さん@大人気ないは、また参加するんですかね」
X「うむ、あのバ●ならばやりかねん……かったろうが、さすが主催者サイドもその危険を察知したらしく、未然に防ぐ策を打ってきてる。詳しくは公式サイトを見てくれ!」
M「そんなこんなで第2回NovelJamもよろしく〜」
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