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女性狙撃手とともに戦場をリアル体験 逢坂冬馬著「同志少女よ、敵を撃て」を読んで

毎年、本屋大賞ノミネート作品を読むことを、自分の年間行事にしています。

きっと、面白い作品に出会える確率は高いはず。

それから、好きになれそうな作家さんを見つけることも目的です。

最近は、自ら戦争を舞台とした作品を手に取ることはないのですが、今回ノミネートされた作品に、恐る恐る手を出すことにしました。

そして、大正解でした。

次回の作品を、心待ちにする作家さんに、出会うことができました。

https://www.amazon.co.jp/dp/4152100648/

舞台は、第二次世界大戦下のソ連とドイツの戦い。

ドイツ軍によって、住んでいた村と母親を奪われた少女が、復讐のためソ連軍に従軍。

女狙撃手になるための厳しい訓練を受けた後、参戦したという女性のストーリーです。

ソ連では、多くの女性が兵士として、投入されていたことを今回初めて知りました。

表紙のように可憐で美しい少女が、男性と同じように生きるか死ぬかの戦場で、戦わなければならなかったという事実に胸が痛みます。

戦争を背景に描かれた作品なので、当然、敵を殺したり、見方が殺されたり。

ハラハラ、ドキドキの連続で臨場感が半端ないです。

~敵を確認。スコープを通して、敵に照準を合わせる。発射。命中。

敵に居場所が知れる。状態を隠す。逃げる。間一髪で敵の球が顔をかすめる。~

必死に逃げている自分が物語の中にいます。

まるで、こんな地獄絵を目にしているようです。

~撃った球が敵の頭部を吹き飛ばす。

砲弾を浴びて、建物の中にいたものすべてを吹き飛ばす。~

戦場ではこんなことが当たり前で、何万何千という普通の人間が、祖国を守るために、家族を守るためという口実のもとに鬼と化す。

嫌だ。嫌だ。人類は戦争のたびにこんなことを繰り返していた。

戦争を舞台にすると人間の生と死という根源を扱うので、確かに胸を突く物語には事欠かない。けれど、こんなん読むのつらい。

これが空想ごとであるならよかったけど、実際にあったこと、事実なのです。

この気持ちのやり場がなくなる。

やっぱり戦争ものを読むのは、しんどかった。

そんななかで、育まれる友情愛や家族愛に似た感情。

そんな触れ合いを心のやすらぎに感じたのもつかの間で、彼らは敵兵の銃や砲弾にのまれてしまう。

これが、戦争というもの。悲しすぎる。

ソ連の人名に馴染みがなかったりして、読みづらい面も少しはあったけれど、全体としては、立ち止まることなく、一気に読むことができました。

作者の文のうまさが一気に読ませてくれたのだと思います。

年とともに、穏やかな心癒される作品を読むことが多くなっていました。
それこそが、お金と時間をかけて提供される読書の効用だと思っていました。

今回は、久しぶりに刺激が強すぎて、頭がびっくりしました。

やっぱり、ノミネート作品や評判の書を読む価値はあります。

日常のゆるやかな読書から、違う感情を体験することができました。

そして、今後この作者の作品を是非読んでみたいと思っています。
次回作が楽しみです。

著者初の作品ということで、驚きました。

以前にも小作品があったり、あるいは、編集者や新聞記者などのそういうお仕事をされていたりするのか。

又、日本人でありながら、独ソ戦という馴染みのないものを、描かれているのも気になります。

この作者に関して情報を検索してみたのですが、1985年生の明治学院大学国際学部国際科を卒業されたということしか分かりませんでした。

今まで、わたしのお気に入りの作家さんの一人に、山崎豊子さんがおられます。

又、今思い出される中では、日航機墜落事故を題材にした「スライマーズハイ」の著者横山秀夫さんの作品も印象に残っています。元新聞記者でその綿密な取材と業界ならではの経験で書かれた作品でした。

地道な取材と膨大な資料をもとに書かれたであろう作品が好きで、今回のこの作品にも同じ匂いを感じています。

今後の作品に注目しています。

とは言え、やはり戦争ものは、しんどいので違う背景の作品がいいのですが。

いい作品に出会えました。

ありがとうございました。




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