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灯油と愛しい寒さ

灯油を使わない生活になって3年になる。
一人暮らしを始めてから部屋自体が狭く、温度を設定してエアコンをつけてしまえば快適に過ごせるから灯油やストーブに縁がない。実家に暮らしていた時を考えるとすごく快適だ。
実家はとても貧乏だった事もありエアコンがあるのは客間だけで、あとの部屋はずっと使ってきたであろう石油ストーブと人からもらったりした石油ファンヒーターで暖をとっていた。
日中は祖父と母しかいないので母が気温が温かい内に各部屋を回っては灯油を補充していたので夜中も給油する必要はなかったのだが、問題は休日
日中も各部屋に人がいて一日中ストーブとファンヒーターを使っている為ヘリが早い
そして大概どこかの部屋が夜になって給油サインが点滅する。そうなると点滅を始めた部屋にいた人間が各部屋を回りタンクを集め勝手口を出てすぐ横に置いてある灯油タンクに手動式ポンプを入れ寒さで震える手で取っ手を潰して圧力を加えて汲み上げながら灯油を給油して又各部屋に戻ってタンクをセットして元いた部屋に戻る。
今までぬくぬくと過ごしていた部屋から意思に反して出ないといけないモヤモヤ、かじかんだ手でポンプを潰さないといけない事や重いタンクを各部屋に運ぶ面倒くささなど嫌な気持ちは正直大きかったけれど、これでまた家族が暖かく過ごせると思うと悪い気がしなかった事を覚えている。
だからこそ今、一人で暮らしていて不自由なく暖かく過ごせている事がなんだ少し寂く感じ
当時嫌だった勝手口で過ごしたあの寒さが今は少し愛おしい。

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