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タイトルイヤー

タイトル・イヤー
何か、大会で優勝をかっさらった年、みたいなタイトルですね。

作品にタイトルを付けるのがイヤな、しんはくです。こんにちは。
とは言え、作品にタイトルが無いと、かなり面倒なことになります。

例えば、
「しんはくさん、この間の『あの写真』、すごく気に入ったからもう一回見せて。」
「ああ、いいですよ。えっと、どんな写真かな?」
「ほら、あれ。山がこんな感じであって、川がその前にこんな感じに流れてるやつ。」
「ああ、その条件のやつなら、えっと該当する写真が2万枚あるけど、この中のどれかな?」

そんなわけで、嫌々ながら作品のタイトルを考えるわけです。

なぜ、イヤか分かります?

とても面白いですよ、実例をお見せしましょう。

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作品名「山」

この写真を見て、皆さんは色々な山に思いを馳せたはずです。
故郷の山、昔歩いた山、懐かしいようなそうでないような、どこの山だろう?とか。


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作品名「阿蘇山」

この写真を見ると、反応は二つに分かれます。
あ、旅行で行った山だ、あ、故郷の山だ、あ、登ったことある山だ、っていうやつと、
阿蘇山は知らない山だ、へえ、こんな山なのかぁ。ってやつです。

山という漠然とした対象に対する感動と、阿蘇山というものに対する好奇心由来の感動に分かれます。

つまりタイトルの「言葉」によって、鑑賞者の感動が違うのです。

写真という映像によって感動を生み出すために作った作品を説明するために付けた「言葉」によって、感動がコントロールされてしまうのです。
ややこしい文章ですみません。
この問題は、それくらいややこしいのです。
もちろん多くの写真家や芸術家は、むしろ積極的にタイトルをつけて感動を誘導する方法を選択していると思います。
しかし、古来からこのタイトルの問題は存在していたと思います。

「無題」

という作品を見たことがあると思います。
タイトルなんてねーよ!という作者の叫びのようです。
そりゃそうです。
私のようなタイプは、作品を作る時にタイトルなんて全く考えないし、テーマすら意識しません。ほぼ無意識に行動しています。
シャッターを切った瞬間に全てを忘れて、次の対象を追います。帰って来て撮影した写真を眺めてみると、こんな写真撮ったっけ?となって、まるで他人の写真を見ているようです。それはそれで楽しいですが。
最終的に出来上がったものをまとめてみると、テーマらしきものが見えてくるので、かっこつけて後付けでテーマを語っているだけです。
しかしそういったタイプは、必ず一定数存在するはずです。古来から。

では試してみましょう

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作品名「無題」

なんか違和感ありますよね。
作品よりも、何で無題なんだ!?とか、どんなコダワリなんだよ!とか、変な方向に意識が行ってしまって、これまた純粋な感動へと導き辛いです。

「言霊(ことだま)」という言葉がありますが、言葉の力は本当に強力で、場合によっては暴力的な力をも発揮します。

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作品名「富士山」

へえぇぇ!富士山のどこだろう?こんな富士山初めて見たーー!!すごい!行ってみたいなぁ。

そりゃそうです。これは阿蘇山なのです。

特に日本語は強力で、ありとあらゆる表現方法が存在するため、その強力な「言葉」をタイトルにつけてしまうと、作品そのものがあらぬ方向へ突っ走ってしまうかもしれないのです。
それがイヤなのです。

写真に限ってではありますが、デジタルの時代らしく私は一つの解決方法を見つけました。

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作品名「2020年10月23日11時25分の風景」

無機的で、監視カメラの映像かと思ってしまいます。

変な感じはすると思いますが、余計な意識を挟む余地が全く無い点が面白いです。

さらにこれを連ねていくと、少し変わった方向へ変化します。

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作品名「2014年1月9日9時48分の風景」


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作品名「2020年10月23日11時25分の風景」

何故なら、鑑賞者は製作者の行動に興味を持ち始めるからです。
この人はこの時、ここにいたのか。
その時、こんな風景を見たんだなあ。
6年後のこの日には、ここに行ったのか。どんな気持ちだったんだろう?
などなど、制作者そのものに興味が湧き、思いを馳せ始めるのです。

まてよ。でも、これって作品を見ていることになるのかなぁ。。
あああ、いったいどうすりゃいいんだぁ!

この問題は、根が深いのです。
結論を言いましょう。解決方法はありません。
何故なら、私たちは言葉を使う文化に生き、文字を使う文化の中にいるからです。
相手がテレパシーを使う宇宙人なら、こんな大問題にはならないでしょう。
言葉と文字の文化に私たちが存在する以上、その呪縛から開放される術はないのです。

とりあえず、タイトルを付けるのがイヤです。

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