![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/102723362/rectangle_large_type_2_48ce344a405256efd95e9b506a0932ff.jpeg?width=1200)
あなたの NFT がゴミになるかもよ?
突然ですが、皆さん NFT を持っていますか?
NFT は唯一無二、改竄も複製不可、永遠に存在すると思いますか?
ところがどっこい、「あなたのNFTは大丈夫?!某NFTが存在するのか確認してみました。」でも取り上げたとおり、NFT に関連付けられた画像データが IPFS や Web サーバなどブロックチェーン以外にあると、NFTの画像データが消えてしまう可能性があります(IPFS については後述します)。
さて、上記では YAMATO について深堀りしましたが、今回は NFT を俯瞰的に見ながら、更に深堀りをしたいと思います。
NFT とは
再掲となりますが、NFT をざっくり説明すると仮想通貨の仲間で、画像などのコンテンツと関連付けされたトークン(token)と呼ばれるデータをオンライン上で所有することで、関連付けされたコンテンツを所有することができます。トークンは、[OpenSea]のような NFT マーケットで売買可能です。
NFT のデータは主に所有者の情報とコンテンツの情報が書き込まれています。コンテンツの情報の持ち方には 2 通りの方法があります。
①ブロックチェーン上に保存する方法 = オンチェーン
②ブロックチェーン以外の外部にコンテンツ保存する方法 = オフチェーン
です。
一度ブロックチェーン上に情報を書き込むと、更新するための方法を提供していない限り、作者といえど変更・破棄することができないため、オンチェーンの場合、コンテンツが残り続けます(マイニングと呼ばれる取引検証を行う人がいなくなり、Bitcoin や Ethereum そのものが破綻した場合は除きます)。
オフチェーンの場合はコンテンツがブロックチェーンの外にあるため、コンテンツを更新・削除することができてしまいます。
例えば、Google Drive のデータを NFT が参照していた場合、Google が Google Drive の提供をやめると、NFT が参照していたデータを取得できなくなり、NFTのコンテンツを見ることができなくなります(参照先の URL は、ブロックチェーン上に残り続けます。もしくは、NFT の提供者が何らかの理由でコンテンツを削除してしまった場合、同じように関連付けがなくなります)。
これが、NFT がゴミになるというリスクです。
具体例 1
例えば「BoredApeYachtClub」を見てみましょう。
[Etherscan]でトークンが確認できます。
![](https://assets.st-note.com/img/1680724410894-AvLIT8VCBo.png?width=1200)
tokenUri の確認は、Contract の ReadContract から可能です。
![](https://assets.st-note.com/img/1681069759169-xn2b2zxzk7.png?width=1200)
20.tokenURI のtokenId に値を入れ、Query ボタンを押すと、コンテンツが参照できます。
tokenUri の raw が ipfs で始まっているのがわかると思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1681070172726-OSfbCsEA1w.png?width=1200)
tokenId は、Transfer から個別のページに移動して確認することができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1681069997009-4BHwj6C4H6.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1681070086619-OuTZ7MjAgA.png?width=1200)
これはブロックチェーンの外にコンテンツを保存しているということです。
IPFS は分散型のファイルストレージで、それぞれのコンピューターをノードとして登録し、ファイルをアップロードすることができます。アップロードしたファイルは、pin 留めという状態となり、その間データが保持され、他のノードから参照された場合、データがコピーされます。ただしノードを削除するなどして pin 留め状態でなくなった場合、利用者が少ないファイルは消えてしまうという可能性があります。代わりに pin 留めをしてくれるサービスもありますが、お金がかかってしまいます。
前述した Google Drive の例では、分散された各ノードにファイルが保存されるのではなく、Google のサーバーに保存されるという点が異なります。
具体例 2
次は「OnChain Human Of Metaverse」です。
![](https://assets.st-note.com/img/1680725105014-XE9LANWE7G.png?width=1200)
こちらは tokenUri に、base64 に encode された文字列が入っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1681071129866-KLuH0TgIwx.png?width=1200)
これを 2 回 decode すると、SVG の画像が出てきます。これはオンチェーンです。
![](https://assets.st-note.com/img/1680725054798-K28ymVmF1a.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1680725083702-SNW9K2LAZ1.png?width=1200)
具体例 3
最後に「キャプテン翼 THE BALL IS OUR FRIEND ボールはともだちプロジェクト」の [TSUBASA NFT]を見てみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1680809326633-k0cnILleNO.png?width=1200)
tokenUri や media にファイルサーバー URL が入っているので、オフチェーンとなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1681071401492-1QIqD4Dpcp.png?width=1200)
上記からダウンロードできるファイルはテキストエディターで開くことができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1681071484794-05wV2y8Mir.png?width=1200)
また、hintsubasa.worldという運営所有のドメインを使っているので、ドメインを更新しなくなるとNFTが見えなくなるリスクもあります。
ちなみに上記の NFT のコンテンツ画像は[こちら]です。
具体例 おまけ
おまけで、「Murakami.Flowers Official」も見てみました。
tokenUri にファイルサーバーの URL が入っていますが、中を確認すると更に IFPS を参照していることがわかります。
コンテンツを関連付けするために 2 つのサービスを使っているので、リスクも 1 つだけの場合より高いといえます。
こういうパターンは、今回はファイルサーバーに分類しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1681072710520-qseLHvkiDN.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1680809811884-Aiw7FzzkCe.png?width=1200)
実際のところ、オフチェーンはどれくらい存在するのか?
「いやいや、そんなに危ないならみんな買わないでしょ。自分の持ってる NFT は有名な会社が作ってるし、みんな買ってるから大丈夫」
本当ですか?
例えば、「NFTのスタートアップ (35社登録)」のように、NFT を取り扱うスタートアップ企業はたくさんあります。Very Long Animals の運営会社、MEISO合同会社も 2021 年 12 月 9 日設立です。
「小規模企業白書」によると、スタートアップ企業の 5 年後の生存率は 81.7% です。
企業がなくならなくても、サービスが終了する場合もあります。実際、Google は利用者がいるにも関わらず、多くのサービスを終了してきました。
というわけで、今回は実際に流通している NFT の中で、オフチェーンの割合はどれくらいになるのかを調べてみました。
すでに NFT を所有している人は、一度深呼吸をして、続きを読むことをおすすめします。
調査方法
対象は Ethereum を使った ERC721 の NFT とし、さらに日本時間 2023/01/09 23:53:41 の時点で、過去 24 時間以内に流通があった 7823 個の NFT になります。ERC721 とは、NFT の規格の 1 つで、このような規格に沿うことで、OpenSea のようなマーケットで売買が可能となります。他にも ERC1155 などがあります。
ERC721 では tokenURI 関数が実装されており、ここから NFT の名前などが格納された metadata を参照することができます[Metadata Standards]。Token の収集は [Etherscan]を、metadata の確認は [Alchemy]をそれぞれ用いました。
また、データの分類方法は以下のとおりです。
オンチェーン: SVG や BMPなど、データがブロックチェーン上に存在する
オフチェーン: IPFS やファイルサーバーなど、ブロックチェーン外を参照している
その他: metadata の error 項目にエラーメッセージが含まれる、もしくはデータの所在が判明しなかった
調査結果
まず、単純に数を集計したものがこちらです。
![](https://assets.st-note.com/img/1680897439829-2uew7uRLWW.png?width=1200)
次に流通量で集計してみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1680897496689-7IWZv42dxV.png?width=1200)
どちらにしても、オフチェーンが圧倒的多数を占めています。
内訳として、オフチェーンで多かったのが、IPFS とファイルサーバーです。
![](https://assets.st-note.com/img/1680897897370-ug3Vi4asln.png?width=1200)
オンチェーンは、ほとんどが SVG ですが、中にはアスキーアート(AA)のような変わり種もありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1680898075651-RjxUrt5VMm.png?width=1200)
Best 10
ちなみに、上位 10 個の NFT は、以下の通りです。ENSを含めるべきか迷いましたが・・どちらにせよ、予想通り全てオフチェーンでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1680898310064-d0YfvVJZqO.png?width=1200)
終わりに
いかがだったでしょうか?
NFT を所有している人は、一度自身の NFT がどうなっているのか確認してみると良いと思います。
それは 90% の確率でオフチェーンであり、近い将来価値がなくなってしまうリスクを孕んでいます。
あなたの NFT がゴミになるかもよ?
おまけ
シンギュラリティソサイエティでは、NFT に関する記事をいくつか公開しているので、良かったら読んでみてください。
おまけ 2
また、全ての調査結果は以下のとおりです。
トークンを含め、且つ csv 形式にしてみたので、追加調査などに活用してみてください(不備などがあれば、コメントお願いします)。
https://github.com/SingularitySociety/note_appendix/blob/main/nft_research_2023.csv