Netscapeからシェアを奪い取ったInternet Explorerが、終焉してしまった理由
長きに渡り多くの人に使われてきたブラウザが終わりを迎えました。普段なにげなく使っていましたが、現状の環境になるには色々あったようです。実際にInternet Explorerを開発していた中島の話しを掲載します。
私が25年ほど前に開発に関わった Internet Explorer がようやくお亡くなりになりました。それについて、メルマガに書いているので、簡単に解説します。
私がIEの開発に関わったのはIE3からですが、Netscapeが掲げた「すべてはWebアプリケーションになるべき」とうビジョンが、Windowsのライセンスで稼いでいたMicrosoftにとっては死活問題だったことはご存知の通りです。
そこで会社として全力でNetscapeからブラウザーのシェアを奪うために作ったのが、IE3とIE4です。そこの細かい経緯に関しては、メルマガに書きましたが、結果としてIEのシェアは70%を越し、Netscapeは瀕死の状態になりました。
ここでMicrosoftがした最大の勘違いは「ブラウザー戦争は終わった」と勘違いしてしまったことです。私も含めた主要なメンバーは、新しい刺激を求めてMicrosoftを去ってしまったし、経営陣もIEへの積極的な投資を辞めてしまいました。
しかし、最大の失敗は、その過程でMac向けのIEの開発をストップしてしまったことです。この間違いが、Appleを「独自のSafariブラウザーを開発する」という決断に追い込んだのです。これが歴史上の大きな分岐点でした。
結果として、Appleが(Microsoftが軽視していた)ブラウザーの標準化において重要な役目を果たし、最終的にGoogle Chromeの台頭を許してしまったのです。
別の言い方をすると、今のインターネットがこれほど素晴らしいのは、MicrosoftがMac版IEの開発を辞めた結果、追い詰められたSteve Jobsが独自のブラウザーを開発するという英断をしたことによる恩恵なのです。
Adobe FlashをiPhoneから排除し、HTML5への移行を加速したのもSteve Jobsです。つまり、我々が楽しんでいるインターネット(Safari→Chrome)、スマホ(iPhone)、3Dアニメ(Pixar)は、すべてSteve Jobsの置き土産なのです。
話が長くなってしまいましたが、連投の最後には、お約束のメルマガのリンクを貼り付けさせていただきます。こんな形の宣伝に、はたして効果があるのか?という実験でもありますが、今のところはとても順調です。
ちなみに、私が担当したInternet ExploreとWindows Explorerの統合が、最終的にはMicrosoftが独禁法で訴えられ莫大な罰金を支払うことになって、この件に関しての感想を聞かれることがありますが、こんなことを言うと炎上しそうですが、特に反省とかはしていません(続く)
エンジニアとしては、「Netscapeからブラウザーのシェアを奪う」という目標を達成するための仕事をしただけであり、あえて言えば「スピードがやたらと出る車を作ってしまってせいで、スピード違反でつかまってしまった」ぐらいの感覚です。
同じことは、ガチャでユーザーの射幸心を徹底的にあおって一円でも多くの利益をあげようとしているソシャゲの開発者にも言える話です。与えられた仕事をこなすことが、社会にとってマイナスになることもあるのです。
今まさに、まったく同じようなことが、Play2Earn系のゲームでくり返されようとしています。罪のない子供達や情報弱者が、ポンジスキームに限りなく近いビジネスモデルの罠にハマりつつあるのです。
おわりに
シンギュラリティ・ソサエティでは、テクノロジーがどのように社会に影響を与えるか、様々な議論をしています。 DAOなどに代表されるブロックチェーンやスマートコントラクトのテクノロジーは、社会や経済の仕組みをコード化し、透明且つ効率に仕組みに刷新する可能性を秘めています。
現在、シンギュラリティ・ソサエティでは、DAOやDeFi、Smart Contractなどの勉強や開発、NounsDAOへのプロポーザルプロジェクトなど、Web3の活動も行っています。今後もこれらに関する記事を発信していきますのでお楽しみに!