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奈良県宇陀市 薬草による街づくり

地域資源である薬草による街づくりを進める奈良。
江戸時代から漢方薬の原料、生薬の産地として栄え、その多くが中国産に置き換わってしまいましたが、産業として再生しようという動きが広がっています。

日本最古の朝廷がおかれた奈良県は、古来からのくすりの原料である生薬とも深い関わりをもっています。
疫病に備え、大和を中心とする近畿地方で薬用植物が栽培されたほか、中国等の諸外国から渡来の生薬も、大和に集まりました。
また歴史的な要因だけではなく、地質的に恵まれた奈良県は、種々の生薬の栽培に適した環境にありました。
周囲を産地に囲まれ、十分な降水、夏期の暑さと冬期の寒冷、積雪の少なさなどです。
江戸時代に入って漢薬の需要は高まり、日本国内における自給自足対策として、中国産の薬用植物の種苗を輸入する一方、山野に自生する薬草、薬木の類を調査、採集し、それらを栽培化する試みが盛んにおこなわれました。
特に、八代将軍吉宗は諸国に薬草栽培を奨励しました。
そういった状況において、古くから薬用植物の栽培が行われてきた大和地方(奈良県)は、重要な一地域となりました。
そして、より日本人の体質にあった、優良な生薬の種苗が育てられ、栽培されました。
明治時代になると、他の地域で薬用植物の大規模な栽培化が行われ、生産量の面ではそれほど目立った存在でなくなりました。
しかし、伝統ある優良な種苗が維持されていることで現在でも全国的に有名です。

奈良県HP

訪れたのは、奈良県宇陀市。
奈良県北東部、大和高原の南端に位置する、四方を山に囲まれた人工約25,000人の町です。

アクセスは近鉄大阪線の榛原(はいばら)駅。大阪上本町から約1時間です。

まずは阿紀神社に参拝。
こちらは元伊勢の一つと言われ、本殿は、伊勢神宮と同じく神明造り南向きとなっています。

阿紀神社の旧社地である高天原

さて、いよいよ本題の薬草です。一体が重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に選定されている松山地区にある森野旧薬園
江戸中期の享保14年に開設した私設の薬園であり、元は500年以上も続く森野吉野葛本舗です。

敷地内にはたくさんの薬草が標本のように栽培されています。

この宇陀の地で生まれた津村重舎が立ち上げたのが、津村順天堂。
さらにこの地から藤沢薬品(現アステラス製薬)、ロート製薬など
多くの製薬会社の創始者を輩出しているといいます。

お昼は宇陀市長を囲んで、大和当帰、枸杞、棗が入った薬膳鍋を各地から集まったメンバーと一緒にいただきました。

近くには薬草である大和当帰を使った薬湯の温泉があったり、健康や美容を求めてたくさんの方が京阪神など関西一体から来るそうです。
地域資源を活かした持続可能なまちづくり、とても良い事例でした。

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