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【ごはんづくりスタッフインタビュー#1】多世代が関わるシングルマザーシェアハウス @世田谷区


地域開放型シングルマザー下宿・MANAHOUSE上用賀で、平日の夜ごはんづくりスタッフを約4年間続けてくれている、大活躍のシニアスタッフ、シゲさん(77歳)に大学生のS.Sさんがインタビューしました!

撮影日:2022年8月

~目次~
・この仕事を始めるきっかけや内容
・シングルマザーとお子さんへの関わり方
・日本の制度や仕組み、これからについて思うこと


――いつからこの仕事をされていますか?
 

シゲさん:4年位前からかな。

――なぜこの仕事をしようと思ったのですか?

シゲさん:たまたま世田谷の居場所サミットがあって、そこに参加したときにシングルマザーシェアハウスを運営しているシングルズキッズ株式会社 代表の真奈ちゃんとは出会いました。

その前から、大田区にある子供食堂『だんだん』を手伝っていました。そこは日本で最初にこども食堂を始めたところで、日本全国からこども食堂をやっている人が勉強をしにきている所なんです。そこで真奈ちゃんが若いのにシングルマザーの子どもたちの面倒を見ているのを知ってお手伝できればと思って始めました。


――もともとご飯を作る仕事をされていたんですよね。

シゲさん:カフェレストランをやっていたのもあって食事を作るのが割と好きでした。食事を作ると、みんながご飯を美味しく食べてなごやかになる、そんな時間を作ることができます。そう言う時間は大切だと思います。

それから、決められた材料で何を作るかを考えること、指先を使って料理をすることは、認知症の防止にもなるしね。

この日は野菜の肉巻き
子どもたちがリビングでテレビを見ている横で盛り付け


――居場所を作ることやまちづくりに興味があったのでしょうか?

 シゲさん:そうですね。夫婦2人で暮らしているけど積極的に自分から出ていかないと子どもたちや若い人とコミュニケーションとる場所がない。こども食堂ずっと手伝っていたこともあって、そのような活動に参加したいなと。

それと、世田谷には、空き家になってしまった家が割と多い。それを再利用するには部屋がいっぱいあるから、元気な一人暮らしの高齢者の方が集まって住むシェアハウスにする。そこに、田舎から出てきた、学生さんに安い家賃で住んでもらう。東京は家賃も高いし、ひとりで暮らすのは大変だから。
そこでは学生さんと高齢者の方とのコミュニケーションがあって、学生さんは学校から帰ってくるとおばちゃんたちがご飯を作ってくれている、逆におばあちゃんやおじいちゃん達が困っていたら学生さんが手伝ってあげる、そんな理想が実現できたらいいな。

――このシェアハウスのお母さんたちとはどんなふうに関わっていますか?

シゲさん:仕事から帰ってきてから食事を作らなくて済むから、ほっとした気持ちで食事をして、そこでみんなと会話をしたり、お酒を飲んだりして楽しい時間を過ごせていると思います。そんな時にお母さんたちの仕事の話をしたり、愚痴を聞いたりしています。

 

―― 先日、私がこのシェアハウスに来た時、子どもたちの喧嘩が始まって、どんな言葉をかけていいのかわからず戸惑ってしまって。でも、誰がどのお子さんのお母さんかわからないくらい、同じように注意したり話をしたりしていて、その様子がとても印象的でした。

 シゲさん:昔は、今よりもご近所付き合いがあって、隣のお家にたくさん作ったおかずをおすそ分けする時代だった。だから隣近所の子供がどこの子供でも、悪いことをしたり喧嘩していたりすると近所の人が叱っていた。

でも今の若い夫婦の中には、自分の子どもが知らない他人に叱られるとムッときたり怒ったりする人もいるんじゃないかと思います。でも昔はよく子どもにしつけてくれた、よく怒ってくれたと感謝する時代だった。そういう時代が戻ってくるといいかなぁと。地域の子どもと言うように、みんなで子どもを育てられたら。

ママはまだお仕事から帰っていないけれど、みんなで「いただきます」


―― 私が以前にお会いした他のご飯作りスタッフの方も、子どもたちに対してお母さんのように接していました。子どもにとって親のように話を聞いてくれたり、見守ってくれたりする存在がたくさんいる環境がすごくいいですよね。

 シゲさん:お母さんがいないときには、そこにいる他の人が危ないことをしないか見守ってくれるから安心ですよね。


―― 子どもたちとどんなふうに関わっていますか?

 シゲさん:ここはシングルマザーのシェアハウスなので、男の人があまりいません。だからみんなのお父さんやおじいちゃん代わりとして接しています。叱るところは叱り、特に男の子は体を使って遊ばないと満足しないので、肩車したりぐるぐる回したりお相撲取ったりしてあげられたらなと。

―― 男の子は子どもでも力が強いし体力が有り余っている気がします。女の子たちとはどのように接しているんですか?

シゲさん:女の子ともいろんな遊びをしたりお絵かきをしたり勉強を見てあげたりしているかな。

男の子たちに囲まれ、かじられているシゲさん
大きなスクリーンで映画鑑賞。女の子はシゲさんのお膝がお気に入り


―― 先日も女の子に他のスタッフの方がご飯の献立のボードを一緒に書きながら文字を教えてあげていていました。一生懸命書いている姿が可愛らしかったです。

シゲさん:子どもたちの勉強を教えてあげながらこっちも勉強できて、それが楽しい。学校での出来事とか空手やサッカー、スポーツの話をするしテレビ番組のことも話すかな。子供にテレビ番組の内容を教わるのは楽しいね。


―― 子どもたちの間で流行っている遊びを教わったりもするんでしょうか?

シゲさん:教わりますよ。何が流行っているかわからないから面白いね。

食事をしながら子ども達とおしゃべり


―― 得意料理はなんですか?

 シゲさん:これと言うものは無いけど家庭料理かな。子どもたちは、唐揚げとかカレー、ハンバーグが好きかな。

―― お料理はいつ頃からするようになったんですか?

 シゲさん:小さい頃から好きだった。あと、学生の頃にキャンプをしたり山岳部で山に行ったりして、それで自分たちで作るのに慣れていきました。きっかけはやっぱり、自分がおいしいもの食べたいなって。

―― この仕事のやりがいについて教えてください。

 シゲさん:やっぱりお母さんたちや子どもたちが喜んでくれるのが一番ありがたいと思います。

それと、フランスでは国策としてスマートageというのがある。年金だけで生活するのではなく、元気な高齢者はどんどん働いてもらう。それで社会の役に立ってもらうというもの。日本にも高齢者がここまで増えているので元気に働いてもらう方がいいんじゃないかな。

―― もし、日本でそのようなものが浸透するためにはどんな仕組みや工夫、制度が必要だと思いますか?

 シゲさん:年金生活者の中には、それなりに生活できるかもしくは足りない人が大半。そういう人がある程度働くと課税されて年金を減らされてしまう。そういうことも労働意欲をそいでいると思います。

働いても年金が減らない制度があれば、より社会や経済の役に立つのではないかな。ある程度年金を貰えていれば時給にそこまで拘らずにいられるとも思います。地方自治体や国で、高齢者が活躍できるような方法をもう少し考えられる余地はあるんじゃないかな。
それに、高齢者には若い人のように行動力や体力はないけれど、経験と知恵がある。両者を分けるのではなく、うまくミックスしていけばお互いにいいと思う。

―― 私は人見知りで、知らない人が大勢いる環境に馴染むのが苦手なんですが、どのように新しいコミュニティーの中に入っていってるのか知りたいです。

シゲさん:僕も元は引っ込み思案で内向的な性格だった。でもある時から自分の知らない世界や自分にはできないことをできる人と出会うことが楽しくなりました。よく知っている、安心できる仲間や環境に囲まれているより、仕事でも趣味でも新しいことに挑戦した方が、知らなかったことの楽しさに気付けるようになったんです。そうすると、自分の人生の枠が広がっていくように感じました。


―― いつ頃から知らない人と話せるようになったんですか?

 シゲさん:学生時代に山岳部で山に行くようになってからですかね。山登りでは仲間とも話すけど、同じ山を登る知らない人とも親しくなっていくんです。それがきっかけだと思います。二十代のうちに海外に出ないと、と思って27歳の時に安く買えた切符で着いたところがパリだった。

フランス語も話せなかったけど、そこで2年くらい住んだかな。それで、カタコトだけど生活できるぐらいには話せるようになって、それで世界中どこに行っても、アマゾンの奥地でも、自分は暮らせるなと自信がつきました。やっぱり歳をとると若い頃ほど新しいことに挑戦する気持ちが少なくなってしまうから、若いとき、特に学生のうちに色々やってみた方がいい。

―― これからも挑戦してみたい事はありますか?

シゲさん:野菜とかも全部自分で育てて自給自足の田舎暮らしみたいなものをしてみたい。でも、奄美大島に移住しようかなぁって言ったら奥さんには嫌がられてしまいましたね(笑)。



~インタビュー後記~

今年で77歳になるとは思えないくらい若々しい印象をお持ちでした。常に新しい人と出会ったり、色々な活動に参加したりしているからではないかと感じました。

 また、ここのシェアハウスでは内側の人だけで生活が完結していないところが良さなのかもしれないと感じました。もちろん同じような境遇の人がいることで悩みを相談でき、安心感があると思います。でも、シェアハウスというハコの外側から別の人が来てくれることでできることもある気がします。

例えば、仕事から帰ってきてホッとして子どもと食事ができる時間を作れたり、お母さんたちの仕事の愚痴を聞いてあげたり、子どもと身体を使った遊びができたり、というようなことなのかなと思います。私自身、学校の課題や授業が大変な時、友達も同じように大変だとわかっているからこそ気を遣って話せないこともあります。それに関して言えば、元気な高齢者と学生がシェアハウスで暮らすというのも面白いです。

現在、日本は少子高齢化が進み、従来の制度やサービスでは成り立たなくなることがたくさん出てきています。また、家族の形、価値観、暮らし方が昔より多様になっています。あれはダメでこれは良いとはっきり分けることも難しく感じます。やはり、シゲさんが仰っていたお互いの良さをミックスすることが、とても重要になってくるのかなと思いました。


〇インタビューアー S.S さんについて
 芝浦工業大学 建築学部4年生

大学では建築について学んでいます。特に、歴史遺産の保存や活躍、デジタルアーカイブについて学んでいます。女性や子どもの貧困問題や自分の人生について考えていく中でシングルマザー世帯のためのシェアハウスを知りまなさんと出会いました。


▽入居者募集・MANAHOUSE上用賀の賃貸情報

https://singleskids.jp/property_information/manahouse_kamiyoga/

▽視察やお食事体験についてはこちら

https://singleskids.jp/inspection/

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