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痺れ時々晴れ

「あらやだ、いらっしゃーい、いつ来られたの?」
「ご無沙汰しております、今日ですよ」


大分に来る時はいつもこのお店に立ち寄る。
地元では有名なふぐ料理のお店で、かれこれ12年のお付き合いになる。



今日は地元の営業責任者と数名のマーケティングスタッフを引き連れて来店。一緒に訪れたスタッフの中には、初めてのフグ肝経験者もいる。



「えっフグ肝?これ痺れないっすか?」
「痺れるさ、その旨さにね!」

フグ肝


「カンパーイ」久々の発声!この2年間、複数名で外食した記憶がない。


他県よりも厚めに裁いたテッサをお店自慢タレに浸す。ドサッと出された塊はホンマもんのフグ肝。これをタレに溶かして薬味と一緒に口の中へ放り込む。


フグ刺し(テッサ)


「美味い!」
「旨いっす」の連呼。
不味いはずは無い。禁断の味覚と言っても過言ではないだろうから。


そりゃそうだろうよ、こんなに贅沢にフグコースを堪能できるお店なんて全国津々浦々つつうらうら探してもそうそうない。しかも値段も超格安で、しこたま飲んでも1万円も出せばお釣りがくる。都内であれば諭吉さんが3、4枚は消えてしまうだろうからね。



「フグの肝ってそもそも食べられるんですか、お客に出しちゃっても良いのでしょうか」まぁ、当然と言えば当然の質問だ。


他の県では禁止されているフグの肝。テトロドトキシンという猛毒がフグ毒の正体。その強さは青酸カリ850倍だというから恐ろしい。もしも口にしたら痺れるどころの騒ぎではない。


ところが、大分県だけは食べることができる。なぜか。それは養殖方法に秘密があるのです。一般的にテトロドトキシンを体内に持っている餌となる生物とふぐとを接触させない環境にしてしまうのです。


フグ自体はテトロドトキシンを自分で作り出すことができず、外から吸収できなければ無毒になるって寸歩。なんとなく人間社会も同じような気がします。


「テトロドトキシンを持つ餌って、、、」
「良い質問だ!貝類とかヒトデの類だ」と言い放ったものの、記憶は怪しい。


変な輩の影響を受けて悪の道に手を染める。そんな物語って身近にゴロゴロしています。だから親は子供を守るために出来るだけ悪から遠ざける。大分県のフグは箱入り娘ではなく、箱入りフグといったところでしょうか?


また、県の条例でも「食べちゃダメ」という記載がない。しかし、他の県ではしっかり規制されています。大分県は敢えて記載してしないのかもしれない。


「って、これで合ってますか、お上さん」
「だいたいね」
「この先は全く分かりませんので、どうぞ専門家に聞いてください」
こう告げると、どっと笑いが起こった。


雄弁に語りましたが、全部このお店で教わったこと。
本当のフグの味を知ったのはこのお店。都会で数万円出しても決して味わうことができなかった世界観。


宮城、埼玉、神奈川、愛知、三重、滋賀。
今日参集している同僚たちの出身県はそれぞれ違う。本当に久しぶりに再開したメンバーの話は弾み、あっという間の2時間。ひれ酒の甘さと相まって大分の夜はどっぷり深まりました。


大分での再会、フグ毒で痺れることはありませんでしたが、それぞれの熱い思いを確認することができて、今宵はしっかり痺れました。



今夜の大分は痺れ時々晴れの予報です。


最後まで読み進めて頂きありがとうございました。🌱

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