『なけなしのたね』が発芽する
出張用のビジネスバックをゴロゴロと引きづり、ようやく辿り着いたのは、5日ぶりに戻った自宅マンション。もう12年もこんな単身赴任生活を送っているんだなと思うと、ひとつため息が漏れる。
ポストには5日分の郵便物がしっかり溜まっている。新築マンションの広告、宅配ピザの案内、それとエレベーター点検のお知らせなどウキウキさせてくれるものはなさそう。そんな郵便物をガサっと脇に抱え、肘でエレベータのボタンを押す。
あれっ、郵便広告に混ざって何かある。
なんだこれは、大きめな封筒みたいなものが混ざっている。請求書かな。
脇に抱えた郵便物を顎で巧みに仕分けしながら確認すると、送り手はとき子さんだ。やった、キタキタキタキタ来たー!
あれっ、早くね?もう届いた!
noteクリエータのとき子さんが発刊した書籍だ。手元に届くのはまだまだずっと先だと思っていたので、早く部屋に戻って中身を確認したい。
ニンマリした顔がエレベーターのガラスに反射していることを自覚し、ハッと正気に戻る。もしもモニター越しに誰かに見られたりしたら、変質者がいる、と通報されるかもしれない。だからマフラーの内側に顔を潜らせ、隠れるようにしてエレベータを降りた。
部屋に戻ると手に持っていたバックを玄関に放り投げ、封筒だけをデスクの上に置く。後のチラシ類はゴミ箱にポイ。ごめんな、ちゃんと読んでやれなくて。
ベリリと封筒を開けると小さな書籍が顔を出した。
『なけなしのたね』というタイトルが見える。どういう意味だろう。なけなしのお金であればちょくちょく実感するのだが。と財布をチラ見する。
書籍と一緒に同封されていたのは、真心のこもった手書きのメッセージと更に小さな小封筒。そこにはゾウの印と”たね!”の文字がある。
恐る恐る小封筒を開けると、更に小さな便箋が。
粋だなぁ、素敵すぎる。
マトリョーシカ作戦、、、いや、そーではない。
書籍と一緒に”ひまわりバレンタイン”だなんて。
詳しくはネットで♪ と、端折っているところも、とき子さんらしくて。
封筒の中身をよく見ると、何やらハナクソみたいな黒い粒がある。
なるほど、これがひまわりの「たね」やね。なんか少し小さい気がするけど。僕の知っているひまわりのたねは、ツートンカラーでリスの餌。
新種なのかなぁ。
よし、これは自宅の庭先で育てよう。
きっと、ひまわりが咲くだろうし。仮に奇怪な花が咲いたとしても、それはそれで良し。とき子植物として大事に育てよう。
梱包されていた書籍は思っていたよりも少し小さめで可愛らしい。1ページ目をめくると、なんと直筆のサイン!!綺麗な字だなぁ。さすが!
NiziUばりのサイン!確かに「Make you happy」だ!
noteの街の住人として、本当に素敵な試みだと頷く。
なけなしの「たね」が繋いで素敵な街をかたどり、人と人を尊い「たね」で繋いで行く。これが新しい人の心を繋いでゆく形ですね。天塩にかけて育てた花が身を結んでやがて「たね」になる。そして、次の年にはその「たね」が花となり、誰かの庭先を彩るんだ。
今年の夏、僕の自宅の庭先にとき子花がきっと咲き誇る。
でも、既に僕の部屋には一足先に『なけなしのたね』が発芽している。記事を通じて別のnote街のお宅にも、この『なけなしのたね』の花が咲き誇って欲しいと願います。
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