【MTF トランス女性の薬】黄体ホルモン薬は飲むべき?
トランス女性の患者さんから、このご相談は、よくあります
リスクを説明の上、処方有無について患者さんと相談して決めています。
黄体ホルモンの中でも、体の中でつくられる天然型を「プロゲステロン」、人工的につくられたものを「プロゲスチン」と呼んでいます。
確かに、子宮・卵巣があるシス女性の女性ホルモンは、
エストロゲンとプロゲステロンがこのように(↑)変化し、月に1回月経(生理)がおきますね。
フラホル(自己購入)で黄体ホルモン薬を飲んでいる方から、このような(↑)感想をよく聞きます。
黄体ホルモン薬にも種類があります。
例:
◆メドロキシプロゲステロン(MPA)
【商品名】ヒスロン、プロベラ、マレフェ(プロベラ ジェネリック)
◆天然型(微粒子化)プロゲステロン
【商品名】エフメノ
黄体ホルモン薬の副作用には、体重増加、うつ病、脂質の変化があげられ、特に、プレマリン(結合型エストロゲン)+メドロキシプロゲステロン(MPA)の組み合わせは、乳がんや心疾患リスクが高くなると言われています。
MPAは、エストロゲンとともに使用することで、血栓症リスクが上昇すると記載された論文もあります。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1530891X22006000
一方で。
黄体ホルモン薬はトランス女性にとって重要だ!と述べる論文もあります。
◆エストロゲン+抗アンドロゲン薬(スピロノラクトン、酢酸シプロテロン)+微粒子化プロゲステロン(エフメノ)で、男性化作用がより抑えられるため、女性化が早く進む。
◆黄体ホルモン薬は抗アンドロゲン効果を助け、女性の生理的な乳房の成熟を促進する可能性がある。
◆睡眠障害を助け、不安を軽減する可能性がある。
◆精神面にとってよい効果をもたらす。
いずれにせよ、
トランス女性に対する黄体ホルモン薬投与の可否は研究段階になります。
報告がさまざまで、難しい判断にはなりますが、乳がんのリスクなどの副作用とメリットを考えると。
現時点では、色んな論文を読む中で、
個人的にはトランス女性の黄体ホルモン薬使用は推奨していません。
イギリスのNHS(国民保健サービス)発行の
トランス女性に対する黄体ホルモン薬の記載がわかりやすく感じました。
ポイントはココです。
そして最初のページのココ
乳がんリスクや循環器系疾患の増加、血栓症についての論文を目にすると
患者さんの希望があっても処方することは難しいな…
と思います。
患者さんの希望があっても、
希望通り、その通りに処方する、本当にそれがいい医師なのか……
私にとっては疑問です。
できるだけ患者さんが望む形に近づけられるように、診療をおこなっていきたい…といつも考えてはいますが、リスクを考えた上で、処方の選択をしたいです。
女性ホルモンは経皮投与(ジェル、パッチ)が一番。
血栓予防の記事はこちら
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