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コードネーム「月隠シ」、詩的爆発は終わらない

はじめに

さ夜更けば 出で来む月を 高山の 嶺の白雲 隠すらむかも
さよふけば いでこむつきを たかやまの みねのしらくも かくすらむかも

この万葉歌について、例えば、「月」を天体としての月から解放して、「高山」を多次元的な高山として捉え直し、「白雲」を液状化して、「隠す」を再起動させるなどして、以下のような「脱万葉歌」に。


静寂、引き裂かれ、
サヨ、と、フケ、が、反響する。

タカヤマ。

それは山ではない。
概念の地殻変動、
意識のエベレスト、
魂が到達を夢見る、光の尖塔。

シラクモ。

それは雲ではない。
流動する思考の海、
潜在意識の波紋、
形を持たぬ時間の、柔らかな包容力。

月。

月の牢獄は、破壊された。
白銀の円盤は、砕け散り、
無限の可能性を孕んだ、アメーバ状の光塊へ。

隠す。

見えなくするのではない。
隠すことで、初めて現れる何か。
光を飲み込む闇の奥底で、
新しい宇宙が、胎動を始める。

カオス。

それは美の原点。
言語は融解し、
意味は脱ぎ捨てられ、
純粋な感覚だけが、残響する。

ゼリー状の焦燥感、
オーロラめく期待感、
蠢(うごめ)き、変容する不安感、
言葉に出来ぬ圧倒的な…「あれ」。

(静かに、月が、沈む。)

(…いや、違う。)

(月は、生まれ変わる。)

(隠され、解き放たれる。)

(幾千もの、月の残骸が、降り注ぐ。)

(夢見るように。)

(無限ループ記号を思わせる…)


あとがき

万葉歌は単なる「古い歌」ではありません。解体され、再構築され、無限の可能性へと爆発する、宇宙的エネルギー体のひとつかもしれません。夢想が広がります!

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