金木犀の匂いに埋め尽くされたまち
暖かいし、晴れたから薄着でマスクも忘れて、ワンコと散歩にでるために、家の前の道へ階段を10段程降りたら、金木犀の匂いがクルマのいない道路に流れていました。
坂の上から、目に見えない匂いの車列がずっと続く。
ワンコとその道路を渡って、坂道に交差する方向の道へ、金木犀の匂いから逃げるようにワンコと走り出す。
ちっちゃなワンコの走る姿を、一緒に走りながら上から見てると、なびく金色の被毛から新しく風が吹き始めているかのようで、ちっちゃなワンコの全力疾走は、僕に充分な風を当ててくれた。
一区画だけは、ワンコの走りに何とかお供して、そこからは僕の歩きにワンコがお供するように歩く。
歩き始めると、僕らの住んでる町内にはこんなにも金木犀があるのかと驚くほどに、坂の上からの道には、その匂いに溢れている。
また、ワンコは走りたそうにしているから、目指す公園がみえてきたところで、靴を履き直しアイコンタクトを交わして走りだす。
ワンコと僕達の造りだした風に冷やされたくて、まくった長袖の袖口から、金木犀の香る空気がシャツのなかに入ってくる、汗が冷やされるのが心地よい。
ワンコは公園の草地を楽しんで、僕は土の柔らかさに足を休めながら、帰宅の合図、日が落ちる前の風を待っていた。
ワンコとじゃれて草地で遊び飽きたころ、頬に風をかんじた。
山の木々の影が公園全体を覆い、まだ冷たい空気が動き始めたら、もう夜はすぐ近くで待ってるから、追い付かれない内に家に帰ろう。
吹き始めた風が、町から金木犀の匂いを吹き飛ばして空気が軽くなった道路に、こんどは煮物の甘い匂いなんかがやってきた
僕はこの匂いの方がすきだな、って思ってたら、ワンコも僕をみてた。
このアイコンタクトは
たぶん、「お腹すいたよ、とーちゃん」のサインだろうな。
金木犀の匂いは美味しそうじゃないもんなーと、考えながら帰る。
今日も楽しかったよ、アンジーくん。
大好きだよ。
クルリンとまるいシッポが
一段と強く跳ねた。
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