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青山やまと(静岡・伊東温泉)宿泊記*2017年3月
細かいおもてなしの連続に身も心も癒される宿
海を背にして伊東市街地を山の方へ向かうと、小高い丘の上にこちらの宿があります。車寄せに到着すると、すでにスタッフの方が表に立っており、素早く出迎えてくださいました。こちらはバレーパーキングとなっており、車はキーを預けて駐車場へ回していただきます。
エントランスを入ると、広い下足場とフロントがありますが、チェックインは奥のラウンジでゆったり柚子茶をいただきながら行います。
ラウンジの一角に色浴衣と帯が置いてあり、女性は好きな色柄の浴衣をこちらで選びます(男性用浴衣は1種類のみで客室にあらかじめ用意されています)。
[客室]市街地とその向こうの海まで見渡せる眺望が自慢
案内されたのは一番コンパクトな10畳+広縁の和室でした。
和室と広縁を障子で仕切らない造りのため、解放的で広く感じる居心地の良いお部屋です。
窓からは伊東市街地が一望でき、その向こうに海が広がっていて、天気が良かったので遠くの初島まできれいに見えました。
[温泉]豊富な湯量の源泉掛け流しを楽しめます
大浴場は「月の湯(内湯)/星の湯(露天)」と「花の湯(内湯)/風の湯(半露天)」の2つがあり、14時から午前3時までと、午前4時から翌朝10時半までの時間帯で男女入替となります。
「月の湯/星の湯」の内湯は洗練された内装ながら壁や天井に木のぬくもりを感じ、41℃と少しキリッとした熱めのお湯で、露天の方は39℃でややぬるめに設定されていました。ぬるめのお湯は消化促進と心地よい眠りを誘うとの効能書きの立て札が浴槽の脇にあったので、食後からおやすみ前の時間に入ると良さそうです。
「花の湯/風の湯」は、早朝に入った際、大きな窓から朝日が上ってくるのを見ることができ、非常に良い目覚めとなりました。また、半露天の「風の湯」には、蘭の花弁が浮かべてあり、ちょっとした演出ですが、朝から気分が上がりました。
すべてのお風呂が、加温も加水も濾過もしていない100%源泉かけ流しで、湯温の違う2つの源泉をブレンドすることで温度調節をしているそうです。無色無臭でクセが無く、サッパリとした肌ざわりの良いお湯でした。
[食事]メニューを選べる懐石フルコースを堪能
食事は、夕朝食ともお部屋でいただきました。こちらの夕食はプリフィックスの和懐石料理で、食前酒と鮑料理、デザートをそれぞれ3種類から選びます。
鮑はお造り、踊り焼き、薬膳スープ煮の中から薬膳スープ煮を選びましたが、これが今回一番印象に残ったメニューでした。烏骨鶏のだしをベースにクコの実や白キクラゲ、朝鮮人参などを煮込んだ滋味深いスープがとても美味しく、最後の1滴まで飲み干してしまいました。
また、鮮魚のお造りのときに用意されていたワサビを、最後にご飯に乗せてワサビ丼にしたのですが、この時に、ワサビ丼のために特製で作られたというふりかけといっしょに混ぜると、ワサビの香りがより爽やかに広がり、とても良い〆となりました。
鮑もワサビも、伊豆界隈の旅館ではよくある食材ですが、こうした食べ方をしたのは初めてでした。それに我々の担当の仲居さんが、食材の説明や美味しい食べ方を的確に教えてくださったので、調理場の創意工夫や料理にかける思いがきちんと伝わってきて、大満足の夕食でした。
[施設]週末の夜はラウンジで音楽会が
夕食が終わると、ラウンジで音楽会があるとのことで観に行ってみました。
毎週土曜20:20から約30分間、地元で活動している音楽家たちによるミニコンサートが開かれており、この日はピアノとフルートの演奏を聴くことができ、満腹でほろ酔い気分にぴったりの、優雅なひとときを堪能しました。
朝食は、和食と洋食から選択でき、夫は和食、私は洋食をいただきました。和食はもちろん、洋食もすべてが丁寧に作られていて、チーズがたっぷり入ったスペイン風オムレツや、ジュレがかかったテリーヌなど、朝から凝った料理をいただきました。
唯一難点を挙げるならば、部屋に備え付けのグラスについて、お風呂へ行くたびに冷水やビールを飲み、その都度下げていただいたのは良かったのですが、その分の補充が無く、朝にはグラスが足りなくなってしまったことだけがやや残念でした。
今回宿泊したのが週末ということもあり、客層は3世代ファミリーがとても多い印象でした。品のいい料理や質の高い温泉は、目も舌も肥えた年配の方でも充分満足できると思いますし、一方で赤ちゃん用の離乳食セットが用意されていたり、大浴場にもお風呂のおもちゃが置いてあったりと、小さな子どもにもきめ細やかなおもてなしが感じられ、乳幼児連れのパパやママも安心して泊まれる宿だと思います。3世代旅行をする際に、いかにもファミリー向けの大箱ホテルではなく、高級感のある温泉旅館でゆったり滞在したいという方におすすめです。