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【ネタバレあり】映画いずれあなたが知る話 その後の物語(妄想です)

ぼくは普段、映画の続きを妄想するのが好きなのですが、映画『いずれあなたが知る話 』があまりに素晴らしい作品だったので、どうしても続きを妄想してしまって、どうせなら書いてしまおうと思い立ちました。
映画の結末を受けたその後の物語なので、当然ネタバレを含むことになると思われますので、これから本作をご覧になりたいと思っている方、地方上映を楽しみに待っている方はできれば本編を観てから読んでいただけるとうれしいです。
というか、ほんとにただの妄想なので、同じように妄想好きな方がいらっしゃったら暇つぶしぐらいに思ってお気軽に読んでやってください。

この画像はイメージです

以下本文に入ります






いずれあなたが知る話 ~その後~

靖子が罪に問われることはなかった。
つまり刑事事件となるまえに、明らかに正当防衛が認めれるであろうという判断により、靖子が起訴されることはなかったのである。
しかしその過程で、靖子が綾の連れ去り事案において、その発生を知りながら放置していたことが問題とされ、綾は児童福祉施設で保護されることになる。
その措置の背後にはある思惑が隠されていた。
「子供を守る・未来を守る」を旗印に国政への進出を目論んでいたある都議会議員が世間の耳目を集めるためにこの事案を利用したのである。
「誘拐された娘を取り戻そうとしなかった母親」
というスキャンダラスなニュースは各種媒体に取り上げられ、靖子は誰もが安心して責められる「世間」の「標的」となった。
そして都議会議員はマスコミやネットを通じて綾の保護を力説。
世論を味方につけた。
結果、靖子と綾は離れ離れになり、そして15年の時が流れた。

20歳になった綾はSNS上で写真を発表し続けている。
繊細で儚げな写真が話題となり、フォロワーが激増していた。
フォロワーが40万人に達した頃、出版社から持ちかけられ綾は写真集を出版することになる。
しかし綾は自分の写真に悩んでいた。
きれいなだけの、ちょっと見栄えがいいだけの自分の写真に全く満足していなかったのである。
何かが足りない。
そう感じていた綾はある決心をする。
自分と母が暮らした日々を、綾は意識的に忘れようとして生きてきた。
しかし、いまこそ、ずっと綾の心にこびりつくように残っていた疑問にまっすぐ向き合うべき時なのではないか。
靖子はなぜ自分を取り戻そうとしなかったのか
あの優しかった母が、なぜ

その答えにたどり着いた時に、自分は自分を受け入れられる。
自分が自分であることを信じられない、実体のない幽霊のような存在としか自分を感じられない。そのことが綾を悩ませていたのである。
自分が自分であることをきちんと実感できた時に、初めて自分が生きている意味もわかるし、自分らしい表現ができるようになる。
そう考えた綾は写真集の題材として、自分のルーツである場所、靖子と暮らした家を訪れる決心をする。


しかしそのアパートはすでに取り壊され駐車場になっていた。
しかたなくその駐車場の写真を撮るが、そこに自分のルーツはない。
自分の疑問に対する答えもない。
途方に暮れてうなだれる綾。
そこに自転車で通りがかった中年女性が声をかける。
「そんなの撮ってどうすんの?」
綾は慌ててカメラを隠す。
女性は自転車を降りて綾に歩み寄る。
綾の顔を覗き込む中年女性。
「あなた、綾ちゃん?」
驚く綾。
「面影あるわぁ。テレビで写真観たのよ。もうずい分前だけど」
「あ、そうなんですね。すいません、失礼します」
施設を出て一人暮らしを始めた頃にも、何度かこういうことはあった。
立ち去ろうとする綾。
「そこ、おうちだったんだよね?」
立ち止まる綾。
「わたしね、お母さん知ってるよ」
振り返る綾。
「おなじ職場で働いてたんよ」
女性は綾に歩み寄る。
「綾ちゃんはまだ小さかったから聞いてなかったかもね」
そして綾とその女性は喫茶店で互いの話をする。
綾は世間の好奇の目に晒されていた頃のことを。
そして施設を出て一人暮らしを始めてからのことなどをひとしきり語る。
そしてその女性は語り始める。
「さおり」という名で風俗店で働いていたこと。
そこで綾の母「ひかり」と出会ったこと。
事件の後、そのひかりと娘が引き離されたことを知り、ひかりの家を探し出し、訪ねたこと。
そしてふたりはそれ以来、付かず離れず、互いを見守るように過ごしてきたこと。
そしてさおりは綾にこう切り出したのだ。
「お母さんに会いたい?」

その2へ続く・・・


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