見出し画像

言の葉が枯れる日

「ありがとうございます」
素敵な言の葉だ。言われると優しい気持ちになれる。感謝されて嫌な人なんていないはずだ。

「気持ち悪い」
人を傷つける言の葉は、そうでない言の葉より尖っている。言われると心に棘が刺さるし、聞くだけでもかすり傷がつくこともある。

「好きです」
たった4文字なのに、人生が変わる魔法の言葉である。愛や恋を4文字で語るにはシンプルすぎるけれど、世の中には「好き」であふれている人もいる。


今まで、私はたくさんの言の葉を拾ってきました。きれいなものも、きたないものも全部落とさないように忘れないように心のメモ帳にメモしてきました。
でも、少しずつ枯れ落ちてしまいそうだから、最後にここに書き記していきたいと思います。

「君は幸せになる」

すごいシンプルな言の葉です。これは私が12歳の時の担任の先生からいただきました。
当時の私は、今よりももっと泣き虫で(今も泣き虫なのはおいといて)毎日学校で感情があふれて泣いてしまう生徒でした。
親父が倒れて、祖父がなくなって身近に頼れる男性がいなくなって、当時は叱ってくれるのは母親のみで、誰かに頼るということができずにいました。

漠然と落ち込んでいた私に、卒業と同時に担任の先生はこのような言の葉をくれました。
「君は幸せになれる。だってこんなに勉強して、悩んで泣いてきたじゃないか。人の痛みがわかる人間は素敵だよ。この先たくさんの人があなたの味方になることを忘れないでね」
当時の私はまだ幼く、「今後、誰を頼ればいいのだろう」と不安しかありませんでした。
もちろん、ただの杞憂であり、その後も多くの人に支えられてきました。
先生、幸せかどうかはわかりませんがなんとか大人になりました。
いつかお酒を交わしましょう。


「簡単に諦めないで」

これは、高校生の時に同期からもらった言の葉です。
いわゆる「強豪校」である高校になぜか入学した私は、同期のレベルについていけず、2番手以降であることに甘んじてソロのオーディションもすべて逃げてきました。
2年生の時、2曲目の冒頭でソロがあり、2.3年生は全員強制でオーディションがありました。
でも、私はやる前から「まあ、どうせあの人が候補だよな」と諦めて、練習しませんでした。
迎えた当日、練習していないので、表現はおろか正しく吹くことができず、結果は1次審査落ちでした。重圧がかからないことに安堵した矢先に、ある動機が私の目の前にきてこう言いました。

「お前、ふざけんなよ。プライドないのかよ。簡単に諦めて悔しくないのかよ、俺は悔しい。」
この言葉を突きつけられて、私は今まで諦めてきたのは自分を守るためだったと気づきました。保身を重ねてセルフハンディキャップを作って、安心していました。
結果が出る前から諦めて、その先に残るのは安心感だけ。それでいいのか。もっと本気でやれば、練習すればもしかしたら。
今思い返すと悔しいし、全力でぶつかればと思います。


その顔やめろよ

これも高校生の時に言われた言葉です。
保身のための嘘が上手くなった私は、味を占めて、今度は作り笑顔まで練習しはじめました。
「笑う門には福来る」信者になり、どんなに悔しくても悲しくてもヘラヘラ笑う癖がつきました。でもそれは結局無駄な行為でした。
現実で、ムカつくことがあっても笑って、ニコニコしていると、知らないうちに「こいつは何しても怒らない」と認定され始めます。
好かれるために始めた習慣がまさかのいじめを引き起こしたのです。

「そんな顔するのやめなよ、見ていてイライラするから」
同じクラスの女の子にある日こういわれました。彼女は部活が同じでもあまり話したことがなく、大人しい子だと思っていたけど、僕のことを見てそんな風に感じていました。
「私たち表現する部活なのに、嘘でへつらってばかりじゃだめだよ」
そうだ、表現者なのに自分の気持ちに素直になれないなんてどうかしている。
今でもその瞬間を思い出すことができそうです。


なんでこんな記事を書いているかというと、私の中にある言の葉が汚れて腐敗して枯れ落ちてしまいそうだからです。
毎日、しんどいことが重なって、愛することや思考することを放棄することを選び続けてきた私は、最近はSNSで毒を吐く毎日です。

親の教育に、家庭環境に、元恋人に、今まで傷つけてきた人たちに、恨んでも悔やんでも何も変わらないのに、私は自分の保身に走りました。
傷つけて傷ついて、「ごめんなさい」ばかりいうようになってしまいました。
最後に心の底から、純粋な気持ちで「ありがとう」や「好きだよ」のような言葉を口にしたのが思い出せなくなってしまいました。


この記事が読まれたところで私という人間は変わりません。過去の発言も消えません。今までもらった勇気の出る言葉を書き記して記録に残したいのです。
今では喋れなくなっても簡単に文字を打ち込むことで、会話もできるけれど、もしかしたら私の言の葉なんてすぐに枯れてしまうかもしれないけれど、
でもいつか、いつかもう少し私が成長して花を咲かせることができたら、その時は心の底から「ありがとう」が言えますように。

この記事を読んだあなたに、素敵な言の葉が訪れますように。





いいなと思ったら応援しよう!