コーヒーと温度の微妙な関係

　私は、朝に飲む一杯のコーヒーが好きだ。コーヒーを淹れる時間も含めて、ちょっとした儀式のようなものだと思っている。お湯を沸かして、豆を挽いて、ドリップする。その一連の流れの中に、静かな楽しみがある。
　でも、最近気づいたことがある。それは、コーヒーは温度によって全然違う顔を見せるということだ。淹れたての熱々を飲むと、香りが強くてシャープな味わいになる。一方で、少し冷めた頃に飲むと、酸味が柔らかくなって甘さが際立つ。どちらが好きかは、その日の気分や体調次第だ。
　こんなことを考えながら飲んでいると、ふと思う。人とのコミュニケーションも、これに似ているのではないかと。熱く語り合うときもあれば、少し冷静になってから話すほうがうまくいくときもある。その「温度感」の調整が難しくもあり、面白くもある。
　今日もコーヒーを飲みながら、誰かとの会話の温度を思い浮かべる。ちょうどいい温度で、ちょうどいい時間を過ごせるようにと願いながら。