もし宝くじが当たったら？

　などという妄想にふける無益な時間が、いちばん楽しいものだ。

　私が脳内で四六時中やっている、既存作品の世界観妄想なども、いってしまえば無益なものである。
　が、その時間を自己研鑽に使ったところで、要領の悪い自分では、どうせ大した変化は起きないだろう。

　ということで（？）、今日も無益な妄想にふけるわけだが、自分はどうも、ぶっ飛びすぎた妄想ができないタチらしい。
　いや、宝くじ当ててる時点でぶっ飛んどるやろがいといわれたら、言い返せないのだが。

　都合のいい妄想をしていても、どこかで夢のない方向にシフトしてしまう。
　これはおそらく、私の好きな世界観妄想の際に、生まれた疑問点をプチプチと潰していることからくるクセであろう。

　だから、宝くじが当たった妄想をしたところで、最初に出てくる選択肢は「貯金！」なのである。夢がない。

　とはいえ、今後の人生でまったく働かなくていいと解釈すれば、なかなか夢のある話だ。

　日本人の平均生涯年収は2億ちょいだと、どこかで見た覚えがある。
　ジャンボ宝くじを当てれば、少々ぜいたくをしても働かなくて済むわけだ。最高！

　自分は金のかかる趣味もないし、一生遊んで暮らせるレベルだろう。
　だって、思い浮かぶことがせいぜい、家庭用の太鼓の達人を集めまくることくらいしかないんだから。あとサントラ。なんて夢がないんだ。

　パーッと使おうぜ、パーッと！と自分に言い聞かせてみても、なかなか思い浮かばない。
　3食ぜんぶ外食（なおすき家やマックやスシローである）にするとか。Switch2台目買うとか、ポケモンを両方買うとか。旅行はすぐ飽きそうだ。

　高い買い物でも、せいぜいiPad ProとApple Pencilとか。あとは、容量がバカデカい新作iPhoneに乗り換えるとか？
　うーん、地味。

　で、宝くじが当たる妄想といえば、ひとつ重要な点がある。
　それは、周囲の人物にカミングアウトするかどうかだ。

　私はしない。家族にもしない（鉄の意志）。
　とはいえ、ここまで育ててくれた家族に対し、なんの還元もしないのはもちろん良心が痛む。さすがにプレゼントをあげるくらいはするだろう。

　しかし、お金とはおそろしいものだ。友達関係はもちろんのこと、家族の絆まで破壊しかねない。
　相続争いで泥沼になる家庭を、私はテレビドラマやらミステリー小説やら真偽不明のゴシップやらで山のように見てきた。

　立場を変えて考えてみよう。もし、私の家族が宝くじを当てたら？
　いまはただの妄想だから、けっして悪事には手を染めないと決心できる。
　が、これが現実になったとしたら、私が正気でいられるかなんてわからないのだ。それは、私の家族も同様だろう。

　莫大な財産をもっていることは、迂闊に言いふらさないほうが身のためなのだ。それがたとえ、親族相手であっても。
「おかねはおっかねー」とは、よく言ったものである。

　結論。もし宝くじが当たったら、私は誰にも言わず、堅実に貯金をするだろう。ギャンブルの類に興味はないので、投資などもするつもりはない。

　仕事はもちろんしない。
　が、家族に不審に思われないよう、出勤を装って外出をする必要はある。
　近くのラウンドワンで太鼓の達人をやったり、ショッピングセンターを徘徊したりして時間を潰すのがよいだろう。

　で、ロクに絵を描かないクセにiPad ProとApple PencilとProcreateを書い、満足するだろう。
　あとはモニターとゲーム機とソフトをそろえ、いつでも歴代の太鼓の達人ができる設備をととのえるだろう。

　食事は基本的に、近くのチェーン店で牛丼だのハンバーガーだのを食べるだろう。
　さすがに健康と体型が気になってきて近くのジムに通いはじめるが、1ヶ月も経たないうちに飽きて無駄金になるだろう。

　ひょんなことから文学に興味を示し、近くの図書館に足を運ぶが、これも2回くらいで飽きるだろう。
　結局、おふとんでゴロゴロしてはたまにゲームをし、あとは食べて寝るだけの生活になるだろう。

　そうして、なにもなし得ないまま老人になるだろう。
　そのとき、自分はどう思うだろうか。
　もっとやりようがあったんじゃないか、もっとおもしろい人生を歩めたんじゃないか、と後悔するだろうか。
　それとも、太鼓の達人たのし～！　おふとん気持ちいい～！と気楽に過ごすのだろうか。

　なんにせよ、宝くじには夢がある。夢のある話をひとつでもしたか？
　しあわせな夢を見る権利を買えると思えば、宝くじの値段なんて、そう高くはないものだ。

　記事を書いているうちに夢を見たくなってきたので、調べてみたら、次のデカいヤツはバレンタインジャンボらしい。買おうかなあと思いつつも、たぶん忘れる。

　あーあ、宝くじ当たらないかなあ。